近年,アンテナや展開膜などの宇宙構造物においては,宇宙ミッションの高度化に伴い,更なる長大化と仕様に関する選択肢の幅を広げることが要求されている.宇宙用伸展ブームは地上で小さく収納することができるので,ロケット打上げ時の負担やリソースを大幅に軽減することが可能となる.一方,宇宙空間で大きく展開することができるので,宇宙ミッションの性能や精度を飛躍的に高めることが見込まれる.そのため,宇宙用伸展ブームの技術開発は,今後の宇宙開発における重要な開発要素として,その成果が期待されている.本稿では,筆者がこれまでに携わった宇宙用伸展ブームの技術開発について紹介する.
MCH-101はAgusta Westland社(以降AW社と呼ぶ)のEH101(現AW101)を川崎重工業株式会社が海上自衛隊向けに改修した機体であり,平成18年に海上自衛隊に初号機が納入されてから輸送用ヘリコプタとして運用されている.米国製の機雷捜索・掃海システムをMCH-101に適合させ,近代化したシステムによる機雷捜索・掃海を可能とするために,平成18年度から社内及び官側研究による調査及び研究作業を実施し,平成23年度から製造契約による掃海仕様の設計,製造,試験を開始,平成27年2月に会社で実施する飛行試験による技術確認をすべて完了しMCH-101掃海仕様初号機を納入した.会社で実施した技術確認試験では,システム統合試験で複数装備品を連接した状態で正常に機能することを確認した後,電磁干渉確認,振動確認,飛行性確認等を飛行状態で実施した.本稿では最も近代化された掃海用ヘリコプタであるMCH-101掃海仕様の開発の経緯及び掃海用装備品の概要を紹介する.
人工衛星による観測性能を向上させるためには,観測センサ自体の性能を向上させると同時に観測性能を劣化させる様々な誤差要因を低減させることが重要である.誤差要因は人工衛星そのものに起因するものが多い.その誤差要因低減のために必要な技術は指向制御・熱・構造など多くの分野にまたがり,課題解決には分野横断的な研究開発が求められる.誤差要因を構造技術の観点で分類すると,その時間スケールによって準静的な問題と動的な問題に大別される.前者は軌道周回の熱環境の変動に起因する微小な熱変形(熱ひずみ)や高真空の宇宙空間に曝されることにより物質内部に吸着された水分などが抜けることによる収縮変形などである.後者は姿勢制御用のホイールやセンサ冷却用の冷凍機などの搭載機器が発生する微小振動(擾乱)が挙げられる.本稿では,微小熱変形を抑制する高安定構造技術とそれに必要な試験環境の整備について,宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究開発部門で取り組んでいる研究内容を紹介する.