将来の火星着陸探査への適用を想定した超音速パラシュートのサブスケール模型の特性を,遷音速および超音速風洞実験で評価した.本稿では,風洞実験の方法と結果について紹介する.また,パラシュートの設計や検証における風洞実験の重要性についての,著者らの見解を述べる.風洞実験,数値解析と自由飛行実験を有機的に結合した,パラシュートの特性評価方法の必要性について議論する.
JAXAでは独自開発した航空機用電動推進システム技術を飛行実証する研究事業“FEATHER”を2012年~2015年にかけて実施し,多重化モータシステム,回生エアブレーキシステム,電池システム等を開発し,実証試験機に搭載して有人飛行実証を達成した.多重化モータシステムは,離陸上昇中に一部が故障しても残存したモータの出力で上昇を継続できる「推力全喪失回避機能」を備えており,単発プロペラ機のエンジン故障事故回避に有用である.回生エアブレーキシステムは,降下時にプロペラを風車のように作動させて位置エネルギを電力として回生・充電する「エネルギ回生機能」を有し,エネルギ消費を節減できると同時に,回生時プロペラに発生する空力抵抗をパイロットが調整することも可能で,従来のエアブレーキ板の代替機能も有する.これらの新しいシステム及びその機能を世界に先駆けて有人飛行実証した.その成果について概説する.
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では,独自に開発した航空機用電動推進システム技術を飛行実証するため,FEATHER(Flight demonstration of Electric Aircraft Technology for Harmonized Ecological Revolution)と呼称する研究事業を2012年~2015年にかけて実施した.当研究事業を実施するにあたり,国土交通省航空局から電動航空機の試験飛行許可取得が必須であるが,電動航空機の耐空性基準が存在しなかった.そこで航空局との調整の下,電動推進システムを動力滑空機に搭載するためのJAR(Joint Aviation Requirement)-22のガイドライン・CS(Certification Specification)-22の特別要件と現行の耐空性審査項目から,本件が準拠すべき安全性基準の選定と修正を行い,基準への適合性を保証するための推進システム設計及び試験等による各種証明に取り組んだ.本稿では実証試験機や飛行場の選定も含め,各種システムの適合性証明に至るまでの電動航空機の試験飛行許可取得プロセスについて,ノウハウを国内で共有する観点で概説した.
ソーラーセイルや大型アンテナなど,大面積宇宙構造物においては,軽量で小さく収納して打上げることが可能な展開型薄膜構造の利用が期待されている.しかし,スピンによる遠心力を利用して大型薄膜セイルを展開する技術は,世界でもほとんど実証されていなかった.JAXAでは,遠心力展開技術について長年研究を積み重ねてきた.その成果として,世界初のソーラーセイルである実証機IKAROSにおいて,最重要ミッションの1つである200 m2級のセイルの遠心力展開・展張に成功し,その有効性を実証した.現在,JAXAでは獲得した技術・知見を洗練させ,次世代機として2000 m2級の大型ソーラー電力セイルの軌道上遠心力展開について検討している.本稿では,特にIKAROSの軌道上実証で確認された当初想定していなかった事象と,その解析結果も踏まえてIKAROSセイル展開機構の課題について紹介し,その改良と次世代機に向けた反映状況について報告する.