化学工学論文集
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15 巻, 3 号
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  • 鈴木 康夫, 今野 政憲, 新井 邦夫, 斎藤 正三郎
    1989 年 15 巻 3 号 p. 439-445
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    塔高方向の温度分布の設定が可能なベンチスケールの超臨界流体抽出塔を用い, 魚油を構成する脂肪酸のモノエステル中のエイコサペンタエン酸 (EPA) やドコサヘキサエン酸 (DHA) の工業的な分離の可能性を半回分操作により検討した.二酸化炭素への脂肪酸モノエステルの溶解度が高温ほど減少する領域を実験範囲に選び, 温度分布は塔底35℃塔頂60℃の余弦波状に設定し, 接触方式として充填塔を用いた.その結果, 魚油の脂肪酸モノエステルの分画が可能であり, EPA, DHAについては, 天然由来の原料でも, その原料組成の選定と尿素処理等の前処理を行うことにより90%以上の濃縮が可能であった.一般に, 炭素数が同じで二重結合数の異なる脂肪酸モノエステルの分離は, 溶解度の差が小さいため, 従来困難とされていたが, 本法においてはこれら成分間の留出曲線に有意の差が認められ, その分画の可能性についても示唆された.
  • 久保田 昌良, 松崎 晴美, 高橋 燦吉, 井上 節夫
    1989 年 15 巻 3 号 p. 446-450
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    超臨界二酸化炭素を移動相に用いた工業規模の超臨界ガスクロマト装置により魚油の脂肪酸メチルエステルから高度不飽和脂肪酸 (エイコサペンタエン酸 : EPA) の高純度分離について検討した.
    充填剤細孔に含浸している水分は超臨界二酸化炭素にほとんど抽出される.クロマト分離に必要な二酸化炭素量は超臨界二酸化炭素密度および充填剤量に依存する.さらに, EPA分取率と濃縮倍率の関係を把握し, 分画特性は超臨界二酸化炭素密度と原料負荷値に依存することを明らかにした.これらの基礎的知見より純度90%, 収率60%のEPAが得られた.
  • 松葉 頼重, 高橋 照男, 北村 吉朗
    1989 年 15 巻 3 号 p. 451-457
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    多孔性チューブを用いた長さ5mの膜抽出装置を試作し, 酢酸-水-MIBK系, および長鎖脂肪酸-10wt%含水アセトニトリル-n-ヘプタン系での抽出分離実験を行った.酢酸の抽出実験から, 今回用いた多孔性チューブの膜内物質移動係数の値は, 7.58×10-7m/sであった.また長鎖脂肪酸の分別実験によって, 蒸留分離が困難なオレイン酸, リノール酸の相互分離が可能であること, さらには魚油脂肪酸中に含まれるEPAやDHAなどの高度不飽和脂肪酸の濃縮分離が可能であることが明らかになった.
  • 恵藤 良弘, 大橋 紀夫, 後藤 忠一
    1989 年 15 巻 3 号 p. 458-463
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    抽出と逆抽出が一つの装置で同時にでき, 膜機能の劣化のない隔膜型抽出装置を開発し, 流動層型晶析装置と組合せて, 硫酸銅の結晶回収を実験検討した.抽出装置は, 内径2mm, 外径2.8mm, 孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン管型膜を21本内装 (膜内面積6.59×10-2m2) したもの, および528本内装 (同2.32m2) したものを用い, 抽剤はSME-529® (シェル化学製) を用いた.また, 原液相, 抽剤相, および逆抽出相の3相の拡散モデルにより, その相内の金属濃度変化を算出する方法を提案した.この方法は, 抽出平衡関係と物質移動係数を簡単な実験で求めれば計算できるものであり, 計算値と実測値はよく一致した.さらに, 同じ拡散モデルを基に, 実装置の設計方法を提案した.
  • 竹永 勇治, 縄田 雅裕, 坂田 信行, 瀬沼 勝, 土佐 哲也
    1989 年 15 巻 3 号 p. 464-469
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    固定化ヒスチジン充填層によるパイロジェンの除去法を20ng/cm3のエンドトキシン水溶液を用いて検討した.
    パイロジェンの破過曲線は明確には得られなかったが, 実用的な破過点が得られ, 流出液のパイロジェン濃度および破過容量は原液のイオン強度に依存した.イオン強度がほぼ0.11mol/dm3以下であれば流速0.021cm/sで通液することにより, パイロジェン濃度20ng/cm3を0.1ng/cm3以下に低減できることがわかった.
    また, 吸着体を圧密充填すると流出液のパイロジェン濃度は低下し, 吸着量と充填層の圧力損失は増大した.本吸着体は圧密比0.10程度で操作するのが最も効果的であることがわかった.
  • 荒井 誠, 福田 秀樹, 野島 康弘, 奥山 勉, 谷 敍孝, 波多野 至
    1989 年 15 巻 3 号 p. 470-474
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    血漿中に含まれる低密度リポ蛋白質 (LDL) を選択的に吸着するデキストラン硫酸-セルロースゲルの吸着特性を検討した.粒内細孔拡散を考慮したモデルを使用することにより, ゲル内の物質移動は粒内拡散過程が律速であることがわかった.さらに, 吸着効率とゲル内有効空隙率 (β) との関係を求めた結果, βが0.65-0.7の範囲のゲルを用いた場合, LDLの破過時間がもっとも長く, 最も効率の良いことがわかった.
  • 宮部 寛志, 川添 鉄也, 山口 正人, 北澤 厚治
    1989 年 15 巻 3 号 p. 475-480
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    逆相系クロマトグラフィーの大型化について検討を行い, マルチカラムシステムを利用して工業的規模の逆相系大型クロマト装置を開発した. “カラム分割法” を適用することにより, クロマト分離に要する溶媒使用量および操作時間を大幅に低減することができた.カラム分割操作を行わずにクロマト分離する場合に比べて, いずれも約10分の1に低減することができた.また, 溶出液中の目的成分の最高濃度も約15倍高くなった.さらに, 捕集画分中の水分量が低下するため, 溶媒除去が容易となり, 分離精製プロセス全体の効率化を図ることができた.工業的規模のクロマト分離を行う場合, 分離精製プロセス全体を効率化し, その分離性能を向上させる上で, “カラム分割法” は, 非常に有効な方法であることが確認された.また, ある抗生物質の分離において, 逆相系充填剤, octadecyl-silyl silica gel (ODS-silica gel) が500回以上の使用に耐えることを確認し, 逆相系クロマト分離が工業的に十分利用できることを確認した.さらに, クロマト分離のシミュレーション法は, クロマト分離のスケールアップやカラム分割操作の条件設定を行う場合に, 非常に有効であった.
  • 峯元 雅樹, 上島 直幸, 畑野 茂和, 栄藤 徹, 二瓶 武
    1989 年 15 巻 3 号 p. 481-488
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    有人宇宙ステーション等の閉鎖環境系では, 乗員の生命を維持するために, 人間の呼吸により排出されるCO2を除去し, O2を発生させるシステムの確立が必要である.その一環として, 固体アミンを用いた吸着-水蒸気脱着によるCO2除去・濃縮システムに関し, 基礎試験として吸着平衡, 吸着破過等の測定を行い, さらに実機を模擬した吸・脱着連続運転試験を実施した.この結果, 固体アミンによるCO2と水蒸気同時吸着時の両成分の吸着平衡は互いに影響されず, CO2はFreundlich型, 水蒸気はHenry型となることが明らかとなった.また, これらの平衡吸着量を温度, 相対湿度, CO2濃度の関数として表示できた.さらに, CO2吸着の総括物質移動係数の表示式を得た.次いで内径240mm, 層高200mmの固体アミン充填筒を2基用い, 交互にCO2を吸・脱着させることにより, 乗員2名が排出するCO2量 (2kg・d-1) を十分除去・濃縮できることがわかった.
  • 中野 義夫, 常重 保則, 清水 秀紀, 加藤 健司
    1989 年 15 巻 3 号 p. 489-496
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    分子ふるい炭素 (MSC) の前駆物質に炭化水素を含浸し窒素雰囲気中で熱処理を行う方法により, ミクロ細孔の調整を行った.本研究では, 前駆物質として, 0.5nm以下のミクロ細孔を有するヤシ殻炭化物を用いた.昇温速度は10K/min, 熱処理温度は1023~1223Kとした.含浸炭化水素として, ジフェニル・ナフタレン, コールタール・ナフタレン, フルオレン・ナフタレン溶液を用いた.処理を行ったMSCの酸素・窒素分離性能を処理条件, 吸着特性, ミクロ細孔径分布の面から検討した.
    酸素・窒素の吸着速度は含浸炭化水素の種類, 濃度, および熱処理条件の組み合わせによって調整することができた.ミクロ細孔径は0.28~0.4nmに調整され, 酸素・窒素に対して高い分離性能を示した.さらに, 酸素・窒素のミクロ細孔入口における拡散抵抗はミクロ細孔内拡散抵抗に比べて大きいことが示された.
  • 久保井 亮一, 王 衛紅, 森松 克司, 東稔 節治, 駒沢 勲
    1989 年 15 巻 3 号 p. 497-503
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    PEG (polyethylene glycol) /Dex (dextran) およびPEG/PK (リン酸カリウム) 系による水性二相抽出法をパパイヤラテックスからのパパインの分離・精製に用いた.分配係数はパパインと分配系との間に作用する静電的, 立体的, 疎水的などの各種の相互作用に依存するが, PEG/PK系では, PEGとパパインとの疎水的相互作用の寄与が大きく, 分配係数と選択性はPEG/Dex系より高い.また, パパイヤラテックス粉末を水性二相系に直接添加し, 浸出と分離を同時に行わせる方式はパパイヤラテックスの浸出液を分配させる方式よりも有効である.
    PEGのOHをパパインと特異的アフィニティを持つ各種のリガンドで置換し, それらの修飾PEGを水性二相抽出に用いた.その結果, 分配係数と選択性は大きく向上するが, その結果はPB (Procion-Blue) -PEGを用いたPEG/PK系で顕著である.
  • 欅田 榮一, 金 鍾和, 駒沢 勲
    1989 年 15 巻 3 号 p. 504-510
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    β-ジケトン型の工業用抽出剤である LIX54 および LIX51 によるリチウムとナトリウムの抽出と, 中性配位子である TOPO (tri-n-octylphosphine oxide) との組合せによる協同効果について研究した.単独系では LIX51 系のみがリチウムの抽出可能であり, 抽出種は LiR (RH) および LiR 2 (RH) の混合物であり, その平均組成は LiR (RH) 1.3である.なお, ここでRHおよびRは各々抽出剤とそのアニオンを表わす.
    LIX54 あるいは LIX51 と TOPO との混合抽出剤によって生成されるリチウム抽出種の平均組成は LiR (TOPO) 1.3であった. LIX51 単独系と LIX54-TOPO の混合系におけるリチウムの抽出係数はほぼ同じであり, それより LIX51-TOPO 混合系の場合の抽出係数が4.65×104倍大きい値を示した.
    ナトリウムは LIX51-TOPO との混合系のみで抽出可能であり, 抽出種の平均組成はNaR (TOPO) 1.3であった.この系のリチウムの抽出能はきわめて大きく, またナトリウムとの分離係数も大きい.したがって, LIX51-TOPO の混合系によるリチウムとナトリウムの分離は容易である.
  • 生島 豊, 畑田 清隆, 斉藤 功夫, 伊東 祥太, 後藤 富雄
    1989 年 15 巻 3 号 p. 511-518
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    超臨界二酸化炭素を用いて, イカ内臓中からドコサヘキサエン酸 (DHA) の選択的抽出分離を試みた.
    その結果, 流通系抽出装置内に硝酸銀を担持した分離チャンバーを組み入れることにより, 昇圧過程のみで何等の後処理操作を必要とせずに, 原料中に含まれていた DHA 量の約80%を濃度90重量%以上の純度で抽出分離できた.
    さらに超臨界二酸化炭素への各種エントレーナー添加による抽出効率への影響が検討され, ヘキサン, 酢酸エチル, アセトン系エントレーナーにより抽出効果が向上することがわかった.また溶解度パラメーターを含んだパラメーターによって, グリセライドモデル混合物だけでなく, 本試料のような天然物へのエントレーナー添加効果を相関した.
  • 古田 覚士, 井川 昇, 福里 隆一, 今西 信之
    1989 年 15 巻 3 号 p. 519-525
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    二酸化炭素-エタノール-水系の高圧相平衡測定を行い, 超臨界二酸化炭素によるエタノール水溶液の高濃度濃縮の可能性について検討した.測定はエタノール高濃度域において二相分離を生じる温度, 圧力条件下 (303.2~363.2K, 5.6~13.2MPa) で行った.その結果, 液相エタノール濃度0~99.2mol% (CO2フリー) において超臨界流体相エタノール濃度 (CO2フリー) は液相エタノール濃度 (CO2フリー) を上回り, 常圧下の共沸組成以上の濃縮が可能であることが判明した.また, 抽出の温度, 圧力条件について検討し, エタノールの水に対する分離係数と超臨界流体相へのエタノール溶解度の関係より, 10.1MPaの等圧下における抽出の場合, エタノール低濃度領域では常温付近 (たとえば303.2K) での操作が適し, エタノール高濃度領域ではより高温 (たとえば333.2K) での操作が適していることを示した.
  • 庄野 厚, 秋葉 巌, 今石 宣之, 藤縄 勝彦, 宝沢 光紀
    1989 年 15 巻 3 号 p. 526-532
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    黒鉱からの亜鉛製錬残渣である石膏を原料とするGaとInの溶媒抽出法による湿式製錬プロセスに液膜法を応用することを検討した.このプロセスには3段の抽出工程が存在するが, 本研究では第1段のGa, Inの予備濃縮工程に支持液膜法および乳化液膜法の双方の応用を試みた.供給液はGaおよびInを約300ppm含む硫酸浸出液であるが, この中にはAlが16,000ppm, Znが30,000ppm共存している.抽出試薬としてVersatic-10 (V10) および2-Brolodecanoic acid (2BDA) を用いた.実験の結果, 抽出試薬としては実プロセスで使用されたV10より, 2BDAが適当であることがわかった.また, 支持液膜法では膜透過流束が小さく実用化が難しいことがわかった.一方, 乳化液膜法では, 界面活性剤であるSpan80の濃度を8vol%, 抽出試薬である2BDAの濃度を20vol%にすることにより約10分で90%のGa, Inの抽出が完了し, 従来のミキサーセトラーを用いた溶媒抽出プロセスに比較して抽出試薬量を1/50, 装置体積を1/10に軽減できることがわかった.
  • 松本 道明, 後藤 雅宏, 近藤 和生, 中塩 文行
    1989 年 15 巻 3 号 p. 533-539
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    マンガン団塊の酸性浸出を想定した疑似浸出液から抽出剤としてLIX65Nの活性成分E-2-ヒドロキシ-5-ノニルベンゾフェノンオキシム, 界面活性剤としてグルタミン酸ジオレイルエステルリビトールを含む乳化型液膜法による銅イオンの膜透過および選択的分離について検討した.
    銅イオンの膜透過速度は, 界面反応過程, 銅イオンの外部境膜拡散過程ならびに水の浸透速度を考慮することにより説明することができた.
    また, グルタミン酸ジオレイルエステルリビトールと添加剤としてジオレイルスルホコハク酸ナトリウムを含む乳化型液膜によって銅イオンは, 迅速かつ選択的に分離されることがわかった.
  • 上岡 龍一, 松本 陽子, 長 正徳, 池田 達裕, 川田 敏博, 加藤 康夫
    1989 年 15 巻 3 号 p. 540-545
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    59mol%ベシクル (ジテトラデシルジメチルアンモニウム=ブロミド, 2C14Br) および41mol%ミセル (ヘキサデシルトリメチルアンモニウム=ブロミド, CTAB) 界面活性剤から成るハイブリッド分子集合体 (液体膜) 系での長鎖基質 (N-ドデカノイル-D (L) -フェニルアラニン=P-ニトロフェニルエステル, D (L)-S12) の不斉加水分解反応を行った.
    半径110-115nmの安定で大きな球状の形態を少なくとも1週間保つこの液体膜に, 活性トリペプチド (N-ベンジルオキシカルボニルーL-フェニルアラニル-L-ヒスチジル-L-ロイシン, Z-PheHisLeu) を組み込んだリアクターによるD (L) -S12の不斉加水分解において, 大きなエナンチオマー分離機能 (不斉選択性, kLψ/kDψ=35) が相転移温度 (15℃) で発現された.
  • 松下 琢, 小川 勝也, 古賀 憲和, 船津 和守
    1989 年 15 巻 3 号 p. 546-551
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    ニンジン培養細胞からカロチノイド系色素をアセトン抽出し, さらに活性アルミナによる吸着クロマトグラフィーを用いることによってβ-カロチンを高度に分離精製する手法を確立した.
    この手法を用いて, 細胞増殖とカロチノイド系色素の生産量の関係について, 振盪培養とドラフトチューブ付きエアーリフト槽について検討を行った結果, これらの色素は対数増殖期の初期より細胞増殖とともに生産され, 定常期には生産量の減少が起こることが明らかとなった.また定常期に培養液交換を行っても, この傾向は変わらなかった.
    また容量1lのドラフトチューブ付きエアーリフト槽を用いたニンジン細胞の高密度培養によって, 定常期の細胞から培養液1l当り, 29.4μgのβ-カロチンを得ることができた.
  • 高瀬 久男, 吉村 慶英
    1989 年 15 巻 3 号 p. 552-558
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    吸着と脱着が同時に起こる系についての解析と実験は, 海水からウランの回収に対して使用したスラリー状吸着剤からウランの分離と濃縮について行われた.吸着質の濃縮は吸着剤を含む溶離液とイオン交換樹脂との直接接触により行われた.スラリー状吸着剤とイオン交換樹脂に関する異なる平衡関係を使って, 吸着質はイオン交換樹脂中に濃縮され, 溶離剤の使用量を減らすことができた.
    撹拌槽に関しての物質収支式は直線的平衡の系に対して導かれた.計算結果は水溶液における物質移動係数の0.286倍になるようにイオン交換樹脂に関しての物質移動係数を仮定することで実線値とよく一致した.これはチタン酸吸着剤の存在によって生じる影響によるものと考えられる.
  • 武田 邦彦, 市原 格, 渡辺 利典, 小花和 平一郎
    1989 年 15 巻 3 号 p. 559-566
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    吸脱着による超多段精密分離では約1万段から数百万段の展開が必要である.このため分離に1年以上の時間を要したり, 分離物質濃度が極端に低くなる.そこで吸脱着による超多段精密分離の分離ユニットの基本要件, 座標系の問題について考察し, さらに分離システムの境界条件について検討を行った。その結果, 工業的分離を行う場合, 分離速度が速い特性を持つ仮想的な分離ユニットを用いて, 連続的に分離物質が出入りするように多段化することが有効であり, さらに分離物質濃度の点から置換型のシステムを用いる必要があることがわかった. また, 分離ユニットの定義を固定座標系で行うことによって実効分離係数が示されることを明らかにした.これらの考察をもとに実験データとの照合を行い, 過渡現象の解析とその重要性を示した.
  • 武田 邦彦, 市原 格, 渡辺 利典, 小花和 平一郎
    1989 年 15 巻 3 号 p. 567-573
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    吸脱着による超多段精密分離の分離ユニットとしては, 吸脱着反応だけではなく溶液内の化学反応を伴う分離ユニットが望ましい.また, 超多段精密分離には置換型界面の形成が必要であり, さらに工業的規模の分離を効率良く行うためには三界面を置換型に維持することが必要である.置換界面は吸着剤の吸着選択性だけでは維持し得ず, 界面での反応が必要であることを明らかにし, これらの平衡反応の定量的な検討のために付加ポテンシャル強度Δμを導入し, 炭素, ウランの同位体分離について理論計算, および実験により検討した.また付加子について考察し炭素, ホウ素の同位体分離においてはプロトン, ウラン同位体分離では電子, 希土類元素分離ではEDTA等の配位子が分離ユニット内の化学反応を行う分離付加子であること, さらにそれぞれの場合の界面形成反応での付加子を明らかにした.
  • 武田 邦彦, 市原 格, 川上 文明, 河野 恵治
    1989 年 15 巻 3 号 p. 574-580
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    分離プロセスにおいて, 分離操作に伴って消費するエネルギー (分離エネルギー) は, そのプロセスの可逆性によって異なる.吸脱着反応を用いた超多段精密分離プロセスは部分可逆過程のため, 本来は分離エネルギーを多く消費する.これに対して, 著者らは超多段精密分離プロセスの代表例である吸脱着を用いるウラン濃縮において, 分離エネルギーの大部分を回収するシステムの開発を試みた.この分離エネルギーの回収システムは, 系の付加ポテンシャル強度, 分配関数を導入し, 一元的な理論的取り扱いを行うことで予測が可能である.また, 分離実験では消費した分離エネルギーの90%以上を回収できた.この結果により吸脱着を用いた超多段精密分離をエネルギー的に可逆化できる見通しを得た.
  • 原納 淑郎, 大嶋 寛, 朝比奈 稔, 嶋田 太郎, 山田 秀夫
    1989 年 15 巻 3 号 p. 581-586
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    タンパク質の分離・精製法の1手段である塩析法における結晶析出現象を解明するため, その初期過程である核化現象を, タンパク質として酵素 (サーモライシン) を, 塩析剤として硫安を用いて, 303K, pH8.0, 撹拌速度600min-1で, 定量的に検討した.核 (微結晶子) 発生の検出には光透過法を, また操作法として溶液のイオン強度Γを一定速度bで増大する方法を用い, 動的解析法で核化因子を求めた.
    最大許容過イオン強度, すなわち準安定域幅ΔΓmbとの間に半経験的理論式が成立した.この結果より, Γm=6~7のとき表面エネルギーとして0.22erg・cm-2, さらに飽和度2.7のとき臨界核の半径・構成分子数・生成自由エネルギー変化として4.5nm・8.9・11.2kJ/g-mol-nucleiを得た.また, 硫安の塩析係数として1.11を得た.
  • 長浜 邦雄, 星野 大輔, 前田 光治, 伊藤 雅代
    1989 年 15 巻 3 号 p. 587-596
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    共晶点を有する2成分系固液平衡に対する液化ガスの溶剤効果を調べる目的で, 原系に液化ガスを加えた3成分系気液固平衡の測定を行った.測定はセル中の混合物を冷却し, 温度および圧力と時間の関係から, 気液固平衡を決定した.
    共晶2成分系にはベンゼン-シクロヘキサン系を選び, 溶剤にはプロパンとクロロジフルオロメタン (フロン22) を用いた.すなわち, プロパン-ベンゼン-シクロヘキサン系とフロン22-ベンゼン-シクロヘキサン系の気液固平衡を求めた.その結果, プロパンは原系の共晶組成をシクロヘキサン側に, フロン22はベンゼン側に移動させることがわかった.また, 活量係数式を用いて実験データを満足に相関することができた.
    最後に, 本研究で明らかとなった液化ガスの共晶点の移動効果を利用した新しい連続晶析プロセスを提案した.そして, 2つの晶析槽と1つの気液分離槽からなるプロセスのシミュレーションによって, その実現の可能性が明らかになった.
  • 粂田 和弘, 山本 正秀, 増岡 登志夫, 溝口 健作
    1989 年 15 巻 3 号 p. 597-603
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    気体分離用中空糸膜を得るために, ポリエーテルスルホンのN-メチルピロリドン溶液を紡糸原液, 水を凝固液とし, 中空糸の紡糸を試みた.
    いくつかの紡糸条件の中で, ドラフトと芯液温度の影響の大きいことがわかったので, この要因について詳細に検討した.ドラフト倍率1, 室温芯液からの中空糸は, 酸素富化性能を示さない.しかし, 低温芯液を使用しながらドラフト倍率を上昇させると, 酸素窒素透過速度比は上昇した.これらはドラフトによる分子配向と, 低温芯液による強い凝固作用とで説明できることを示した.
    また, 紡糸原液に硝酸リチウムを添加することにより, 紡糸原液の著しい粘度増加が認められた.この原液を使用すると, 得られた中空糸は室温芯液でも適度なドラフトを与えることで酸素富化性能を示した.
  • 喜多 英敏, 佐々木 茂明, 田中 一宏, 岡本 健一, 山本 益司
    1989 年 15 巻 3 号 p. 604-610
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    相転換法により非対称ポリイミド膜を製膜し, 水-エタノール混合液のパーベーパレーション分離実験を行った.非対称膜は75℃でのエタノール90wt%水溶液に対するパーベーパレーション分離において, 透過流束1.29kg・m-2・h-1, 分離係数57の値を示した.この非対称膜によるパーベーパレーション分離を, オレイン酸または酢酸とエタノールとのエステル化反応に適用した結果, 酸とエタノールとのモル比が1 : 3および1 : 2の場合には, 生成水を除去したことによるエステル化反応の平衡のシフトにより, パーベーパレーション分離を伴わないエステル化反応の平衡転化率を大巾に上回り, ほぼ100%の転化率となることが明らかとなった.さらに, 膜分離を伴うエステル化反応プロセスのシミュレーションを行い, 膜透過流束および膜の選択性のエステル化反応に及ぼす効果について検討した.
  • 岩田 実, 藤本 輝雄
    1989 年 15 巻 3 号 p. 611-616
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    著者らの合成したポリイソプレン (I), ポリスチレン (S), ポリブタジエン (B), ポリ (4ビニルベンジルジメチルアミン) (A) の4成分からなるISBAI型の5元ブロック共重合体を出発原料として, 内径2mmの管状に織ったポリエチレンメッシュをパッキング材とした管状モザイク荷電膜を, ディッピング法により作製した.本膜1本からなる有効長さ13cmのモジュールを作製し, 食塩-サッカロース系, 酢酸-サッカロース系の透析実験を行った.電解質である食塩, 酢酸の溶質流はいずれも2.3×10-4~5.2×10-4mol/m2・sであるのにたいし, サッカロースのそれは1.0×10-5~4.1×10-5mol/m2・sと1桁小さい値を示し, 極めて分離特性のよい管状モザイク荷電膜を作製することができた.また, 食塩の溶質流に及ぼす原液のモジュール内管内流速の影響を調べた.内管内径基準のレイノルズ数が2000以下では溶質流は流速に影響されることが分かった.
  • 菊池 裕嗣, 服部 準, 森 雄一郎, 梶山 千里
    1989 年 15 巻 3 号 p. 617-622
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    光学活性クラウンエーテルを含む高分子/液晶複合超薄膜を水面展開法により調製した。複合超薄膜中で液晶は薄膜内を貫通する連続相ドメインを形成しており, その液晶中に光学活性クラウンエーテルを良好に分散することができた.この複合超薄膜を数十枚積層することにより厚さ1μm程度の薄膜を調製しアミノ酸塩の透過性を検討した。その結果, 高い光学異性体の選択輸送能と薄膜化による大きな流束が観測された.さらに, 液晶相に誘起されたらせん構造の光学分割に与える影響を検討した.
  • 村上 勝志, 佐伯 敬道, 道木 泰徳, 糸嶺 篤人, 布施 達雄
    1989 年 15 巻 3 号 p. 623-629
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    高分子膜を用いて酵母培養廃液の脱色を行った.NTR-7410膜が検討した膜のうち最も大きな透過流束を示した.透過流束および阻止率に対する操作条件の影響を検討した.脱色率は操作圧力および循環流速に依存しなかった.透過流束は循環流速を上げると上昇し, 高流速で一定になった.透過流束は膜の許容範囲では操作圧力に比例した.
    操作圧力1.9MPa, 循環流速0.21m・s-1, 液温度30℃の条件で, NTR-7410スパイラルモジュールを用いて酵母培養廃液を容量減少率10まで回分濃縮した.この時の透過流束と脱色率はそれぞれ6.9×10-6m3・m-2・s-1と98%であった.
    回分濃縮を繰り返した後の膜面を走査型電子顕微鏡で観察した.また, 酸あるいはアルカリによる洗浄実験も行い, 透過流束の減少した原因が膜自身の劣化ではなく主に膜細孔の目づまりであることが明らかとなった.
    蒸発法と比較した経済性の評価によれば, 膜の交換費用がさらに下がれば, NTR-7410膜を用いて酵母培養廃液の脱色は実用可能である.
  • 村瀬 敏朗, 入谷 英司, P. Chidphong, 加納 勝博, 渥美 邦夫, 白戸 紋平
    1989 年 15 巻 3 号 p. 630-637
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    微細な懸濁固体からなる希薄スラリーを高分離速度で精密分離するため, セラミック膜を使用した回転円筒型フィルターにおける薄ケーク層濾過特性を検討した.本法では, ローターの高速度回転によりケークがセラミック膜から連続的に掃流されるため, 従来のケーク濾過と比較してかなり高い濾過速度が得られる.ケーク濾過とダイナミック濾過におけるケーク抵抗の比を回転濾過速度係数jr轟と定義すると, ダイナミック濾過速度はRuthの濾過速度式を用いて与えることができる.他の操作変数が一定の場合, jr値はローターのレイノルズ数および濾室の間隙とローターの半径の比によって定まり, 従来のケーク濾過特性値を用いてダイナミック濾過速度の経時変化が精度よく推定できる.さらに, スラリー濃度が大きく濾過圧力が小さいほど, ダイナミック効果が顕著となること, またセラミック膜の平均細孔径が異なってもほぼ同程度の最終平衡速度が得られることを示した.
  • 今坂 卓男, 兼国 伸彦, 宗 浩之, 吉野 成
    1989 年 15 巻 3 号 p. 638-644
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    エアリフトによる自然循環を利用した気液二相流動系のクロスフロー濾過の適用可能性を実用規模に相当する膜モジュール単位で検討した.実験には200本の細管状セラミック膜を並列に集束した膜モジュ-ル (膜面積1m2) を垂直に5段直結した装置を用いた.循環ポンプを用いた従来方式である液単相流動系のクロスフロー濾過との比較も行い, 次の知見を得た. : 1) 目視観察によれば, 膜モジュールの取付段数位置によって気液二相流の流れがわずかに異なっていたが, 透過流束に顕著な差異はなかった.2) 気液二相流動系のクロスフロー濾過においても液単相流動系と同じように, 透過流束は代表膜面流速に依存した.3) 単位透過水量当たりの所要動力を計算した結果, 気液二相流動系の運転方式は従来方式である液単相流動系のクロスフロー濾過と比較して省エネルギー的なプロセスであることが示された.
  • 中島 忠夫, 清水 正高
    1989 年 15 巻 3 号 p. 645-651
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    細孔の大きさをサブミクロンからミクロンの範囲で精密にコントロールてきる多孔質ガラス管膜を用いてO/Wエマルションのクロスフロー精密濾過を行い, 透過流束と濾過圧力, エマルションの管内線速度, 阻止率などの濾過条件および細孔径の関係を検討した.その結果, 透過流束には濾過圧力に対して分散粒子径Dpと膜の細孔径Dmの相対的関係すなわち, Dp>Dm, DpDmおよひDp<Dmにしたがって, 典型的な3つの異なるタイプか存在し, これらにゲル層の形成とその構造変化およびレイノルズ数が影響した.また50kPa前後の比較的低圧では膜による粒子分画が認められ濾液に漏洩する油分粒子の最大粒子径は使用した膜の平均細孔径を越えなかった.圧力が増加するとゲル層を形成する粒子に再配列ないしは部分的な変形圧密が生じ限界流束に移行した.しかし実験を通じて油滴粒子のコアレッセンスは観察されなかった.
  • 高橋 武士, 久保 広, 金川 昭
    1989 年 15 巻 3 号 p. 652-657
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    ニュクリポァ・フィルタの捕集性能に対する粒子堆積の影響を, 慣性およびさえぎり捕集機構について, 理論的, 実験的に考察した.粒子の沈着過程を, Pichによって提案された毛細管フィルタモデルに基づき, モンテ・カルロ法を使用して個々の粒子運動のシミュレーションにより求めた.
    シミュレ-ションの結果より求められた捕集効率および粒子の沈着形態を, ニュクリポァ・フィルタの実験結果と比較検討した.
    理論捕集効率は, 慣性捕集機構が支配的になる場合に, 実験値と一致した.
  • 木村 弘, 長谷川 進
    1989 年 15 巻 3 号 p. 658-662
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    フィルタープレスの炉過速度を増加させるため, 従来のフィルタープレスの濾室の中央部に濾布を追加して配置した装置について検討した.そして中央濾布の枚数を1枚から4枚まで変化させて濾過速度を測定した.結果は次のようである.
    1) 中央の濾布を1枚取り付けた時の濾過速度は従来型のフィルタープレスのそれとほとんど同じであった.
    2) 中央の濾布を2枚取り付けると濾過速度は著しく増加した.
    3) 濾布数を2枚より多くしても2枚の場合に比べて, 濾過速度はわずかしか増えなかった.
  • 田門 肇, 矢野 斉, 岡崎 守男
    1989 年 15 巻 3 号 p. 663-668
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    きわめて選択性の高い電子付着現象を利用して気体中の極微量特定成分の負イオンを生成させ, 電場内で分離・除去する全く新規な気体の分離手法を提案した.電子発生法として光電子法とグロー放電法を利用した2種類の分離装置を試作した.窒素 (N2) 中に微量含まれる六フッ化イオウ (SF6) の分離を例にとって本研究で提案した分離手法の妥当性を実験的に検証し, SF6の分離成績の濃度, 圧力, 印加電圧依存性に定性的検討を加えた.光電子法分離装置では発生電子数が少ないために高い分離成績は得られなかったが, 対象気体の分子数に対して十分な電子を発生できれば分離成績を向上できることがわかった.グロー放電法においては, 発生電子数が十分多く, 光電子法と比較して格段に良好な分離成績が得られた.以上の実験結果より分離対象気体が低濃度であればあるほど本分離手法が有効であるという興味深い知見が得られた.
  • 久保井 亮一, 森 義昭, 駒沢 勲
    1989 年 15 巻 3 号 p. 669-673
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    逆相ミセルは, 無極性有機溶媒中で自発的に形成されるナノメータースケールの界面活性剤会合コロイドである.逆相ミセル内に可溶化された水は, 界面活性剤分子によって外部の有機溶媒からはシールドされているために, 蛋白質, 酵素等の生体高分子の変性・失活を抑えて抽出させることができる.逆相ミセル内への蛋白質の溶解法としては, あらかじめ水相に溶解した蛋白質をミセル相に分配させる従来よりの二相分配抽出法および粉末蛋白質を直接ミセル相に溶解させる粉末直接抽出法などがある.本研究では新規な分離法であると同時に濃縮法としても有望な後者の方法を用いて, 逆相ミセルの含水率および粒径分布と粉末蛋白質のミセルへの溶解度の関係を検討し, さらにこれを利用した蛋白質混合物の分離の可能性について実験的に検討した.
  • 山本 浩司, 中江 貢
    1989 年 15 巻 3 号 p. 673-675
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    近年, 超臨界流体を利用した分離技術に関する研究開発が活発に行われてきており, 工業的に応用されている例は少なくない.しかしながら, ポリマーの脱揮工程において, 超臨界流体を乾燥媒体として利用した報告例は少ないようである.
    高分子産業において, 近年ますます高付加価値化が望まれている今日では, 今後超臨界流体を利用した脱揮技術が, 有用な単位操作の一つになると考えられる.本研究では, 超臨界流体のポリマーの脱揮操作 (超臨界乾燥) への適用の試みとして, 超臨界二酸化炭素によるポリカーボネート (PC) からの塩化メチレン (MC) の脱揮実験を行った.
  • 混合則の検討
    岩井 芳夫, Benjamin C.-Y. Lu, 山本 寛, 荒井 康彦
    1989 年 15 巻 3 号 p. 676-681
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    化学工業, 食品工業あるいは最近注目されているバイオテクノロジー等において, その工業化およびコスト削減には分離技術が大きく寄与しており, 効率的な分離技術すなわち高度分離技術への要求が強くなっている.現在いくつかの有望な分離技術の提案がなされているが, その一つに超臨界流体抽出がある.臨界温度をわずかに超えた高圧流体を用いる抽出法は, 広い分野への応用が期待されているが, その基礎となるのは被抽出物 (一般に高沸点化合物) の溶解度である.そのため溶解度の実測が試みられ, データも蓄積されつつあるのが現状である.一方, プロセスの開発や設計にあたっては, それらの相関法も重要になっている.溶解度の相関法としては, これまでに密度や溶解度パラメータを用いたいくつかの経験的な方法なども提案されているが, より一般的な手法としては状態方程式の応用が考えられる.そこで本研究では, 最近Yuらによって報告された三次状態方程式を用い, 溶解度を相関する際の問題点, とくに定数の混合則に関して考察を加えた.また, 溶解度を増加させるために第三成分としてエントレーナーの添加が最近注目されているが, このエントレーナー効果の相関も試みた.
  • 今坂 卓男, 兼国 伸彦, 宗 浩之, 吉野 成
    1989 年 15 巻 3 号 p. 681-683
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    著者らは既報において, エアリフトによる自然循環を利用した気液二相流動系のクロスフロー濾過特性を実用規模相当のセラミック膜モジュールを用いて評価した.操作条件に対する基本的な透過性能を把握するとともに, 従来の液単相流動系のクロスフロー濾過と比較して省エネルギ的な膜処理プロセスであることを報告している.本報では, さらに透過性能を向上させる目的で, 膜面の擦過用に微小固体粒子を添加した気液固三相流動系のクロスフロー濾過を新たに提案する.
    気液二相流では, 気相や液相の流量割合によってさまざまな流動様式があらわれるが, スラグ流, フロス流, 環状流においては液相は主に液膜あるいは液体塊として管壁近傍を流れ, 気相は管中心部を流動しやすいことが知られている.このような相分布の特徴を利用して, 液膜中に存在しやすい微小固体粒子をわずかに添加することによって, 膜表面の擦過効果と液膜の乱流促進効果を与えて高い透過流束が得られる可能性がある.そこで, 既報の実験装置を用いて気液固三相流動系のクロスフロー濾過性能を追加実験し, 興味ある知見が得られたので報告する.
  • 三分一 政男, 中倉 英雄, 大佐々 邦久, 藤田 克明
    1989 年 15 巻 3 号 p. 684-687
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    工場や船舶から排出される含油廃水のうち, 油滴径が数ミクロン以下の安定なエマルジョン系の場合には, 比重差を利用した従来の処理方法ではその高度分離が困難とされている.これらの系に対しては, 充填層の適用が有効とされ, 繊維状マットや粒子充填層など種々の充填物によるエマルジョンの分離が既に報告されている.しかし, 油滴の分離過程における充填層内部の捕集・分離機構についての検討はほとんど見られないようである.本報では, A重油-水エマルジョンを粒子充填層に通過させた場合の油滴の捕捉・合一機構に及ぼす流速, 充填粒子径等の影響について実験を行った.さらに.清澄濾過理論に基づいた分離・合一の数式モデルを提案し, 油滴の分離機構について検討した.
  • 白神 直弘, 梶内 俊夫, 細 幸彦
    1989 年 15 巻 3 号 p. 687-690
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    Separation of particles by capillary hydrodynamic chromatography was studied experimentally. Measuring the retention time of a mono-particle system, it was shown that the ratio of retention time to mean residence time depended not only on the particle diameter but also on the flow rate of solvent. Resolution of peak was calculated from the chromatogram of a binary-particle system. The resolution of peak also depended on the flow rate of solvent.
  • 伊藤 龍象, 平田 雄志, 桂田 州啓, 重定 宏明
    1989 年 15 巻 3 号 p. 690-694
    発行日: 1989/05/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    錯体を利用した希土類金属イオンの等電点電気泳動分離原理をイオンの輸送方程式に基づいて記述し, 泳動分離帯の濃度分布を解析的に表現した.通常の印加電圧では, 濃度分布はガウス分布で良好に近似できる.これに基づき, 希土類イオン高純度化の達成に必要な電位勾配, 錯化剤濃度勾配ならびに分取出口幅に関する解析的関係式を導出した.EDTAの錯安定度定数を用いて本等電点電気泳動法が希土類元素の高度分離法として有望であることを明らかにした、得られた諸関係式は, 電気泳動分離装置の設計・操作指針として工学的に重要である.
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