日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
29 巻, 8 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
表紙・目次
特別講演
発表
  • -第2学年「電流と磁界」単元の実践を通して-
    園山 裕之, 御園 真史, 栢野 彰秀
    2014 年 29 巻 8 号 p. 11-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    アメリカの初等科学の教科書の一つである『Science Grade 6』に示されている4種類の学習内容の構造に基づいて日本の中学校理科の教科書における学習内容の構造を分析した。分析によって明らかになった学習内容の構造を手がかりとして授業を開発し,授業実践を行った。「電流と磁界」単元における授業実践について主に「科学的知識のつながり」と「科学的知識」の観点から評価を行った。学習後には,半数以上の学習者における「科学的知識のつながり」が,授業者の意図した学習内容の構造に基づいて構築されていた。ペーパーテストの得点の分析から,学習者は基礎・基本的な「科学的知識」と,活用を含めた「科学的知識」が獲得できていると判断できた。また,学習者が作成した「学習マップ」の評定とペーパーテストの得点率には正の相関があった。
  • 松田 雅代, 溝邊 和成
    2014 年 29 巻 8 号 p. 17-20
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    科学的概念を踏まえた授業構成ができる教師の育成を目指し,実践的試みの方策として,コンフリクトマップ(Tsai, 2000)を取り上げた。教師は,小学校理科指導のためのコンフリクトマップ作成体験をどのように受け止めていたかを調査した。調査対象は, 小学校教師4名であった。授業前にコンフリクトマップを作成し、その後授業を行った。調査の結果,コンフリクトマップの作成は,教師にとって授業構成のための教材研究が行いやすく,児童の先行概念と概念変容を把握できるツールであり,科学的概念を捉えた授業が展開しやすいと受け止められた。
  • -教育実習生を対象として-
    津村 真里菜, 藤井 浩樹
    2014 年 29 巻 8 号 p. 21-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    女子生徒に配慮した理科授業のための教師教育プログラムを開発した。その目的は,(1)女子生徒に配慮した理科授業を行うという意識を持つこと,その背景として,(2)理科授業における男女差の現状を理解すること,その発展として,(3)女子生徒に配慮した理科の指導法について理解することであった。その内容は,従来のプログラムを参考に,女子生徒に配慮した理科授業に関する講義,討論,及び授業実践のフィードバックから構成した。加えて,女子生徒に配慮するという視点からの指導案の修正,授業の観察や実践の振り返りを取り入れた。中学校の理科教師をめざす教育実習生を対象に,プログラムを実施した。そして,プログラム実施前後の質問紙調査の量的分析と,実施前後のグループ討論,実施中の振り返りの記述,及び実施後の面接調査の質的分析を総合した。その結果,目的(2)はかなり達成されたが,目的(1)はある程度の達成にとどまり,目的(3)は達成されたとはいえなかった。プログラムを通して,実習生は生徒の理科に対する理解度や興味・関心,好き嫌いの男女差に気づき,講義内容を理解できるようになった。このことが結果に関与したと考えられた。
  • 井上 璃咲, 栢野 彰秀, 中山 雅茂, 森 建一郎
    2014 年 29 巻 8 号 p. 27-32
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    4QSに記載された変数等の観点から我が国の小学校理科教科書の分析を行い、次の 3 つの特徴が抽出できた。①4QS に記載されている変数等の過程が全て見られる単元がある。②Q3 に該当する変数の変化が見られない単元がある。③どの単元も結論は従属変数に影響を与える変数を同定する。「B(3) 流水の働き」は、これに加えて、従属変数の振る舞いを同定することも含まれている。
  • 福井 広和
    2014 年 29 巻 8 号 p. 33-36
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    理科教育法での模擬授業において学生を授業者・児童役・観察者の3者に分担し,模擬授業後に各グループで授業評価および改善点について話し合い,クラス全体で発表する授業運営を行っている。グループでの話し合い結果はホワイトボードにまとめ,授業に対するフィードバック情報として活用している。年間12回分のホワイトボートへの記載事項を分析すると,学生の授業評価の視点に質的変容が起きていることが明らかになった。初期においては教師の話し方や板書などの表面的な要素に関心が集まっていたが,回数を重ねるうちに実験・観察の手法や言語活動の内容に興味が移ってきていることが分かった。
  • -持続可能な社会づくりの構成概念に基づいた教材解釈-
    岡本 弥彦
    2014 年 29 巻 8 号 p. 37-40
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    国立教育政策研究所(2012)が提案した「ESDの学習指導過程を構想し展開するために必要な枠組み」のうち,持続可能な社会づくりの構成概念について,理科指導との関連性を示した。また,その構成概念を教材解釈の視点として捉え,ESDをテーマにした教員免許状更新講習において活用し,ワークショップ形式の講習を展開した。その結果,構成概念に基づいた教材解釈の有用性などを示すことができた。
  • 旭山動物園のアザラシ展示の事例
    田中 維, 山口 悦司, 稲垣 成哲, 江草 遼平, 山橋 知香, 楠 房子, 奥山 英登, 木下 友美, 坂東 元
    2014 年 29 巻 8 号 p. 41-44
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    動物園は,子どもから大人まで幅広い年齢の人々に対する科学教育の場として期待されている.なぜなら,動物園では実際に生きている動物の行動を直接観察し,動物の生態や形態など学問領域と結びつけられた科学的な観察を行うことができるからである.しかし,動物園来園者は , 多くの場合,科学的な観察をしない.筆者らはこれまで,科学的観察の視点を提供するワークショップを実施することで,動物園での科学的観察支援を行ってきた.本研究では,科学的な観察に向けて,特にアザラシの形態とその機能という,知識を組み合わせて観察するワークショップを実施した.
  • ~「3種の知識」に基づく指導法を適用して~
    杉原 篤典, 佐々木 弘記
    2014 年 29 巻 8 号 p. 45-48
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    情報モラルの指導には,「3種の知識」を用いた指導法がある。これを市販されている情報モラル指導用の映像教材である「事例で学ぶ Net モラル」の中の「ネットで知り合ったトモダチ」の展開に適用して,指導法を工夫した。携帯ゲーム機を題材とした教材で,小学校6年生を対象として授業を実践したところ,「合理的判断の知識」は高まり,より望ましい情報モラル判断ができるようになることが明らかになった。その反面,「道徳的知識」を弱めてしまうという逆効果があることも分かった。
  • ~「心の働きの相反性」の克服をねらいとして~
    中島 瑠美, 佐々木 弘記
    2014 年 29 巻 8 号 p. 49-52
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    情報モラル判断には,「㋐道徳的規範知識,㋑情報技術の知識,㋒合理的判断の知識」の3種の知識に加えて,「心の働きの相反性」が作用していると考えた。そこで,「心の働きの相反性」が表れる場面(やってはいけないと分かっていながら,その行動をとってしまう)を想定したアンケート調査を行ったところ該当する児童が数人いた。それらの児童に焦点を当て,「心の働きの相反性」を克服して,望ましい情報モラル判断ができるようになることを目指して,道徳の時間に活用する読み物教材を開発した。小学校6年生を対象として授業実践をしたところ,該当する児童の情報モラル判断に変容が見られ,開発した教材の有効性が明らかになった。
  • ~道徳の時間における情報モラル教育の実践~
    松尾 彩加, 佐々木 弘記
    2014 年 29 巻 8 号 p. 53-56
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    小学校の道徳の読み物教材として,コールバーグの道徳性認知発達理論を論拠としたモラルジレンマ教材を制作した。動画投稿サイトへのアップロードを題材とした教材で,小学校6年生を対象として授業実践した。授業のグループ討論では,動画をサイトにアップロードすることで注意喚起を促すという社会正義と,無断で他人の肖像を公にさらしてはいけないというプライバシー尊重との間での葛藤を起こすことができ,結果として,道徳性段階の上昇が見られた。ただし,多くのグループでは,主人公は,社会正義を優先させて「警察に言うべきだった」という意見でまとまっていたことから,教師が違法性を表す文言を使用しなくても,児童は社会規範に囚われがちになることが分かった。
  • 宮地 功, 西尾 芳樹
    2014 年 29 巻 8 号 p. 57-60
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    A大学情報系学科の「情報科学Ⅱ」の講義では 2 つ製品の紹介スライドの作成を行い, 作成された作品について相互評価し,それを参考にして作品の修正を行う. 学生に利用可能度,自己評価,他者評価,被他者評価を入力した評価シートを提出してもらう.この評価シート内の情報を用いて,W 検定,相関分析によって受講者の授業における意識を分析する.ここでは,2 作品の伸びについて比較して,その分析結果を報告する.
  • ~地球の公転軌道上の塵や氷と地球とのモデルを用いて~
    川井 健, 佐々木 弘記
    2014 年 29 巻 8 号 p. 61-64
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    小学校第6年生が持つ流星群が起こるしくみについて調査したところ,流星群は星々の集まりが自ら燃えるなどの理由から光を発し,地球に向けて自ら動き,それを地球から観察すると光りながら流れて見える,というような誤概念を多くの児童が持っていた。その素朴概念を転換するために,地球の公転軌道上の塵と地球のモデルを用いた指導法を工夫した。小学校6年生を対象として授業実践をしたところ,流星群は自ら光り,自ら動くのではなく,地球の公転軌道上に浮いている塵に地球が突っ込んでいくことで流れるように見え,塵が地球の大気圏にとても速いスピードでぶつかることで光って見えるという概念に変化させる効果が見られた。したがって,地球の公転軌道上の塵と地球とのモデルを用いた指導法は,児童の素朴概念を転換するために有効であることが明らかになった。
  • 安達 大将, 佐々木 弘記
    2014 年 29 巻 8 号 p. 65-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    小学校理科の「月と太陽」の発展的な学習として「月食の見え方」について指導する授業を設計した。児童の視点移動を支援するため,ビデオカメラの活用を工夫した。月,地球に見立てたボールの天体モデルを設置し,そこに,太陽光を想定して液晶プロジェクタから光を投射した。地球のボールの影に月のボールが入る様子を,地球の位置からビデオカメラで撮影し,その映像を大型ディスプレーで表示した。小学校6年生 34 名を対象に,授業を実践したところ,ほとんどの児童が月食が起こるしくみについて理解することができたことから,視点移動をするためのビデオカメラの活用が有効なことが明らかになった。
  • 三浦 政司, 高須 佳奈, 前波 晴彦
    2014 年 29 巻 8 号 p. 69-72
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    鳥取大学工学部ものづくり教育実践センターでは,平成25年度~26年度にかけて,宇宙教育用教材の企画・開発を題材とした課題解決型の授業を試行した.「宇宙」を対象とすることで理工系から人文系まで幅広い分野と関連付けることができ,「教材」の開発に取り組むことによって「指導者」および「学習者」というステークホルダを強く意識することができるため,「宇宙教育用教材の開発」というテーマは幅広い対象・幅広い教育目標に対して活用できる有用な教材であると考えられる.今回の発表では鳥取大学のものづくり型PBL教育における授業実践の結果について報告する.
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