日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
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35 巻, 7 号
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表紙・目次
発表
  • 佐々木 弘記
    2021 年 35 巻 7 号 p. 1-4
    発行日: 2021/06/12
    公開日: 2021/06/09
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    これまで小学校教職科目「理科教育法」では,「反省的実践家としての教師」の力量形成を目指して,小グループで模擬授業を行ってきた.ところが新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴い,グループ活動による模擬授業の準備が憚られることから,「一人1模擬授業」として,学生個々で学習指導案の作成から教材研究,模擬授業まで行うこととした.一人10分間で小単元の導入部分を必ず示範観察実験を伴って行うという条件で履修者28名が模擬授業を行い,20項目からなる授業診断票を用いて他者評価と自己評価を行った.各項目の平均値を比較すると,いずれの項目においても自己評価の方が他者評価よりも低く,18の項目について有意差が見られた.「一人1模擬授業」にすることで,グループのメンバー間での協働的な活動ができず,学生が一人で準備・実践した模擬授業に自信が持てなかったことが示唆された.

  • 野村 祐子
    2021 年 35 巻 7 号 p. 5-10
    発行日: 2021/06/12
    公開日: 2021/06/09
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    消火活動に伴う二次災害の危険性を理解し火災安全の向上を図るため,水の爆発的沸騰の仕組みを学習する消防研修用副教材「水の状態変化と水蒸気爆発」を試作し,消防大学校の学生を対象としてアンケート調査を行った.災害事例と関連づけた全4章からなる冊子と3つの観察実験を含む映像を組み合わせた教材の,全体および各部分に対する重要度の評点は,一貫して高かった.理解度と満足度の評点はほぼ同じ傾向を示し,観察実験に対する評価が最も高かった.観察実験以外の部分については,観察実験の内容との関連性が低下する程,評点も低下する傾向が見られた.最も有望な教材改善方略は,評点が低かった内容に直接関わる観察実験の追加であることが示唆された.真正性のある文脈である災害事例と関連づけた消防の科学実験は,多様な学習者の資質・能力育成に有効な教材となる可能性をもつことが分かった.

  • 渡辺 信, 青木 孝子
    2021 年 35 巻 7 号 p. 11-14
    発行日: 2021/06/12
    公開日: 2021/06/09
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    学校を卒業すると数学教育は何も行われていない。社会生活に数学教育は役立つのであろうか。この問題をグローバル的な視点として数学文化から眺める。コロナ禍における報道はデータのグラフが示されるが、このグラフを読むことは、現在の数学教育からは不可能であった。将来の社会を担う人々に対する学校教育と社会人が数学へどのように関心を持つことが必要かを、コロナ禍の現在の状況を踏まえ将来の数学文化を考える。数学の必要性は学校教育のときだけではなく、生涯にわたって必要であり、その必要性が数学文化を構築する。これからの社会は数学的思考が重要になる。

  • 白山 由希子, 栢野 彰秀
    2021 年 35 巻 7 号 p. 15-18
    発行日: 2021/06/12
    公開日: 2021/06/09
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    2017年に告示された『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説理科編』(2018)には,「探究の過程」が示されるとともに,小・中・高等学校でも同様の学習過程が重要であることが強調された。しかし,小学校理科では「問題解決」という言葉が用いられ,中学校理科では「探究」という言葉が用いられている.

    そこで本稿では,①現在小学校では「問題解決」,中学校では「探究」として用いられている言葉が,1969年改訂以降の小・中学校学習指導要領にどのように記載されていたか.②2008年改訂以降の小・中学校学習指導要領のもとで編纂された理科教科書に「問題解決」と「探究」に関する学習の流れがどのように記載されていたか.検討を加えた.

    その結果,次のことが明らかになった.①中学校理科では,「探究」の趣旨は1969年以降脈々と受けつがれている.②2008年改訂以降の学習指導要領(理科)では「探究」と「問題解決」は同等の意味内容を表す.③2008年に改訂された学習指導要領公表後すぐに発行された教科書から既に「探究の過程」及び「問題解決」の過程を意識した構成になっている.

  • 小野 亘, 中山 迅, 清水 欽也
    2021 年 35 巻 7 号 p. 19-24
    発行日: 2021/06/12
    公開日: 2021/06/09
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    2017年に告示された小学校学習指導要領により,各教科の「見方・考え方」が新たに設けられた。理科では,「理科の見方・考え方」が「物事を捉える視点や考え方」として表現されており,従来は育成すべき目標であったのに対し,問題解決の中で児童が用いるべきものとなった。本研究では,学習指導要領の改訂に伴う教科書の記述の変化に着目し,日本の小学校理科の教科書が想定している理科の問題解決における問いの特徴を明らかにすることを目的とした。特に今回は,実験の方法を児童に考えるように促すことにつながる問いを「方法に関する問い」とし,これらに注目する。分析対象を2017(平成29)年告示の小学校学習指導要領に準拠し,2019年に検定を受けて2020年の4月から使用されている5社の出版社の教科書として,記述から「問い」を抽出した。クロス集計を行ったところ,「方法に関する問い」は第5学年に集中しており,「どのように」や「どうしたら」といった疑問詞を持つ「問い」が多く用いられていることがわかった。第3学年や,第6学年ではこれらの学年特有の「理科の見方・考え方」に関する問いがあまり現れていないことが確認された。

  • ―基本概念に注目して―
    寺田 光宏
    2021 年 35 巻 7 号 p. 25-30
    発行日: 2021/06/12
    公開日: 2021/06/09
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    本研究はドイツにおける2000年前後のPIASショック後の科学教育分野における教育改革を推進したChemie im Kontext(以下:CHiK)プロジェクトの中でも,後期中等教育用テキストCHiK IIを詳細に整理分析することを目的とした。CHiK IIは,前期中等教育用テキストCHiK Iの作成の基本原理,科学3教科の教育スタンダードの策定や大学入学資格のための化学教育スタンダードなどに大きく寄与した。その中で,基本概念は今日のドイツの各シラバスなど様々なドイツ科学教育の分野で見ることができ,文脈と同様に大きな変革となった。基本概念はそれぞれの目的により変化しているが基本的な構造は変化がないことが明らかになった。

  • 高原 周一, 坂本 南美
    2021 年 35 巻 7 号 p. 31-34
    発行日: 2021/06/12
    公開日: 2021/06/09
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    モンゴル国では学習者主体の理科教育の普及が望まれている.そこで,現地の高校生を対象として,イオンおよび電磁波に関する英語のCLIL(Contend and Language Integrated Leaning)授業を実践し,その効果を検証した.CLILは言語教育と教科内容を統合する指導法である.理科の内容としては,仮説実験授業の授業書《イオンと食べもの》および《電子レンジと電磁波》をベースにモンゴル国で実施可能な授業プランを作成し,これを使用した.受講した生徒を対象としたアンケートおよび参観した現地の学校教員等への聞き取り調査の結果より,今回のCLIL授業がモンゴル国の生徒と教員に歓迎され,理科教育および英語教育の両面で有効であったことが示された.

  • 竹野 英敏
    2021 年 35 巻 7 号 p. 35-38
    発行日: 2021/06/12
    公開日: 2021/06/09
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    本研究では,大学生を対象にNIRSを用いて,大日本印刷(株)の「プログラミング的思考」を育む小学生向けのプログラミング教材ソフト「SWITCHED ON Computing日本版」に収録されている「足し算レース」が脳にどのような影響を及ぼすかをプログラムのバグを修正するデバッグ学習に焦点を当てて評価を行い,その効果と有用性を検証した.その結果,抽象的思考や論理的思考を育む右前額部,左前額部の脳血流量の増加が見られ,その効果が示唆され,主観的な評価においても同様の評価を得ることができた.今後は,調査協力者の人数を増やし,追試験を実施する所存である.

  • 山中 真悟
    2021 年 35 巻 7 号 p. 39-42
    発行日: 2021/06/12
    公開日: 2021/06/09
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    本研究では,地域小学校への理科プログラミング教育支援の在り方について考えるため,その基礎となる知見を収集することを目的とした.この目的を達成するため,選定した教材を用いた支援内容を考案するとともに,7校の市内小学校に案内を行った.その結果,5校より支援の要請が得られたため,考案した方法により支援を行うとともに,児童ならびに当該小学校の担当教員に対してアンケート調査を行った.最後にアンケート調査の結果を分析し,地域小学校への理科プログラミング教育支援の在り方についての知見を導出した.分析の結果,今後の支援の方向性として,『教材の数量の確保』『教材の拡張例の提案』『教員研修の提供』が明らかとなった.

  • ―手まきコイルの代表的な実験とICカードの模擬モデル実験―
    大隅 紀和, 梅本 仁夫
    2021 年 35 巻 7 号 p. 43-46
    発行日: 2021/06/12
    公開日: 2021/06/09
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    筆者らが開発した手まきコイルを作る巻線機は、軽快に巻き数の自由なコイルが作れる。本稿ではそれらのコイルを使った電磁誘導の実験を紹介する。あわせて2個のコイルと低電圧交流を使って、急速に普及しているICカードの動作原理、無接触給電のしくみのモデル実験を報告する。いずれも従来の電磁誘導の実験を鮮やかにアトラクティブに楽しむことができる。

  • ―中学校の第2学年「D データの活用」において―
    松村 悠, 平塚 旭, 佐伯 英人
    2021 年 35 巻 7 号 p. 47-50
    発行日: 2021/06/12
    公開日: 2021/06/09
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    本研究では,中学校の数学の第2学年「D データの活用」において,電子黒板とタブレットを使って授業を実践した.研究の目的は,授業を受けた生徒の意識をもとに,ICT活用に関する知見を得ることであった.調査・分析の結果,電子黒板の使用,タブレットの使用に対して,生徒の意識が良好であったことが示された.また,電子黒板の使用,タブレットの使用に対する生徒の意識の要因(背景)のいくつかが明らかになった.

  • ―研修に参加した小学校教員の意識の調査より―
    森戸 幹, 鷹岡 亮, 佐伯 英人
    2021 年 35 巻 7 号 p. 51-54
    発行日: 2021/06/12
    公開日: 2021/06/09
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    周南市立富田西小学校は,2020年度に「プログラミング教育実践研究」の周南地域の研究協力校の指定を受け,プログラミング教育の教員研修を実施した.本研究の目的は,参加した教員の意識をもとに,教員研修について知見を得ることであった.本研究を通して,良好な方向に変容した意識と変容がみられなかった意識があったことが明らかになった.また,意識の要因についても,そのいくつかが明らかになった.

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