日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
37 巻, 6 号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
表紙・目次
発表
  • K. F. アルディ, 藤井 浩樹
    2023 年 37 巻 6 号 p. 1-6
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    This study investigated Japanese prospective science teachers' (PSTs) from a public University in Okayama prefecture about their ideas on how to teach plant biodiversity within Education for Sustainable Development (ESD) framework. Analysis of written lesson plans (N = 63) revealed a strong emphasis on cognitive learning and hands-on strategies, with lesser focus on socio-emotional and behavioral outcomes, and minds-on strategies. The lessons mainly highlighted the environmental contexts of ESD, with less consideration for social, economic, and global contexts. These findings underscore the need for science teacher education programs to deepen PSTs' understanding of holistic ESD pedagogies and interdisciplinary approaches.

  • 安東 あすか, 竹中 真希子
    2023 年 37 巻 6 号 p. 7-12
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    平成30年告示の高等学校学習指導要領解説理科編では,目標として実験・観察技能の育成や,実験・観察を通した科学的探究能力の育成が求められている.しかし,科学技術振興機構(2009,2011,2013)の調査から,高等学校生物における実験・観察の回数は小学校や中学校と比較しても非常に少ないことが明らかとなった.そこで本研究では現行の学習指導要領に従った生物基礎の教科書計11冊と一般社団法人日本生物教育学会が公表している約5年分の実験開発論文について,実験・観察に焦点化して分析を行なった.その結果,教科書に掲載されている実験・観察では月に1度の実践さえ難しいことが分かった.また,論文分析の結果から中学校理科や高等学校生物基礎では偏りが見られなかったが,高等学校生物では開発が行なわれている単元とそうでない単元の偏りがみられた.目標達成のためには,実験・観察頻度を増やすことが最大の近道であるが,時間数の不足や選択肢の少なさを根本的に解決できない現状では難しいと考えられる.そこで,今後は少ない実験・観察の機会をより効果的なものにしていく必要がある.

  • ―化学基礎,化学の「見方」に注目して―
    寺田 光宏
    2023 年 37 巻 6 号 p. 13-16
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,新学習指導要領(文部科学省,2018a)における各教科等の「見方・考え方」の主に「見方」について文献を整理し,高等学校化学に注目して今後の議論の深まりに資する検討を行うことである.そのため,経緯を育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会 —論点整理ー」(以下,論点整理)(文部科学省,2014)を核として,その後の答申や学術的な側面を確認した.その結果,「見方・考え方」に「知の構造」としての「概念」と「方略」が対応していることが明らかになった.また,「見方」である「概念」は先行研究にある「中等教育化学における基本概念」と類似していることも明らかになった.

  • 亀田 麻記子, 和田 重雄
    2023 年 37 巻 6 号 p. 17-22
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    令和4年度から実施された高等学校指導要領では,理科の目標として「探究するために必要な資質・能力」の育成が掲げられている.この目標は,新たな知識の習得のみならず,生徒自身が手を動かし実験を行い,自ら考えることを重視するものである.しかしながら,授業時間数は変わらず,学習すべき内容は減少していないため,「探究」に取り組む時間を新たに設けることは難しい.そこで,通常授業・実験の中に探究プロセスを組み込み,生徒達が「探究」を自然に行いながら,授業の流れを妨げないような生物基礎のカリキュラムを開発した.このカリキュラムに従い,高校1年生において生物基礎の授業を1年間行った結果,年度当初は考察することも出来なかった生徒達も,次第に実験結果などから自分で考察できるようになり,自らの考えを表現する,新たな実験を提案する,といった「探究」する力が養われた.このような生物基礎カリキュラムの実践を報告すると共に,問題点と改善策について検討する.

  • ―社会に開かれた教育課程をめざして―
    加藤 明良, 和田 重雄
    2023 年 37 巻 6 号 p. 23-26
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    2022年度からさいたま市全小中学校(小・中・中等教育学校計165校)で開始されたSTEM教育にアート(A)スポーツ(S)を加えたSTEMAS 教育の実践について報告する.中核となるSTEAMS TIMEは総合的な学習の時間に位置付けられ,小学3年から中学3年まで年間9時間を実施することになっている.昨年度,経済産業省未来の教室事業におけるSTEAMSライブラリーの活用をめざす実証事業に学校として参加し,シャープとエイスクール社が共同開発したコンテンツの利用とPWC Japan グループ社によるオンライン出前授業による実践を試みた.その内容は,キャリア教育も包含する内容であり,今後の科学教育の在り方にも大きく影響を与えるものと考える.社会に開かれた教育課程の実現に向けたSTEAMS教育推進について,学校経営の視点から考察する.

  • 森 健一郎, 芳賀 均
    2023 年 37 巻 6 号 p. 27-30
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,日本の教育課程におけるSTEAM教育の評価軸を明らかにすることである.先行研究から,STEM/STEAM教育の各領域の機能に関して整理しているもの,特に図式化されているものを調査し,各領域の機能や位置づけを図式化した.そして,各領域を特徴付ける性質のうち,対になるものに着目して評価軸を設定することとした.その結果,Art(Arts)とEngineeringとの対になる関係に着目した軸と,「仮説検証」と「対象物指向/目的指向」に着目して設定した軸による4つの象限が得られた.この評価軸と象限により,(1)教育課程におけるSTEAM教育のフレーム構築に活用できる視点,および,(2)STEAM教育の評価軸に活用できる視点,の2点を明らかにすることができた.しかし,(2)については,先行研究と異なる部分もあるため,今後,実践を通して検証する必要がある.

  • ―数学の探究的な学びに向けて―
    飯島 康之
    2023 年 37 巻 6 号 p. 31-36
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    WiFi接続されたタブレットが日常的な学びの道具となった環境において,数学的実験により容易に取り組むためのソフト開発のコンセプトを示した.その具現化として単機能のページを複数開発し,組み合わせて利用するときには,テキストエリアのコピー&ペーストを使うことにした.より深くより効率的な探究をしたいなら他のツールやプログラミングに移行することを想定している.それらをまとめて「ボタンを押して簡単な数学実験」というサイトとし,それらを使った数学的探究の例を示した,教材の蓄積や実践事例を蓄積しながら,より本格的なものに育てていくことが,今後の課題である.

  • 松岡 克典
    2023 年 37 巻 6 号 p. 37-42
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    算数の授業は帰納的な思考過程で問題解決を図るのが主流である.一方,数学の授業(論証など)では演繹的な思考過程で解決するのが主流である.この思考過程の違いによる乖離を埋める橋渡し(算数・数学架け橋プログラム)ができないか考えることにした.本研究では,算数科に問題解決を基盤とした「理論構成型の授業」を取り入れ,中学数学に繋がる算数授業モデルについて構想することを目的とする.

    まず,中学数学に繋がる算数科のカリキュラムを構想し,授業分析の蓄積を通して,妥当性や適応性の高いものとして洗練させる.そして,追跡調査を行うことで,カリキュラムや指導方法の有効性を明らかにする.さらに,ビジネス界のナレッジマネジメントを教育界に転用することで,指導方法や授業分析の新たな視点を見出せる可能性が期待できる.

  • ―対面での協調学習とオンラインでの協調学習の比較を中心に―
    野田 健夫, 北本 卓也, 江木 啓訓, 金子 真隆
    2023 年 37 巻 6 号 p. 43-48
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,HTMLベースのシミュレーション用コンテンツを用いて数学の協調学習を実施する際,これを対面で行った場合とオンラインで行った場合とで,学習者間の対話を中心とする学習状況に差異がないか,あるとすればどのような点か,検証することを試みる.オンラインの協調学習については,各参加者が用いるコンテンツの操作ログを逐次共有して操作画面を同期させると同時に,対話内容はZoomの録音機能を用いて記録した.また,対面での協調学習については,参加者に共通のコンテンツを操作させてそのログを記録すると同時に,専用の対話分析システムを用いて対話内容を記録した。

  • 粒子領域における小学校第6学年の理科授業を題材として
    村津 啓太
    2023 年 37 巻 6 号 p. 49-52
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,Argument Driven Inquiryプロジェクトによって示されたアーギュメントの教授方略を日本の理科授業に導入するために,教授方略を実際の授業に反映させるためのガイドを意味する「デザイン要素」を開発し,小学校第6学年理科の粒子領域「燃焼の仕組み」と「水溶液の性質」を題材とした理科授業の具体例を示すことである。本研究では,中村(2021)によって整理されたArgument Driven Inquiryプロジェクトの4つの教授方略である「育成」「批評」「内省」「査読」に対応したデザイン要素を開発し,それらを反映した理科授業の具体例を示すことができた。今後の展望は,本研究で提案した理科授業の実施を通して,科学の性質(Nature of Science)に対する小学生の理解を促進する上での理科授業の有効性について検証することである。

  • 中島 康, チャトリー ファイクハムタ
    2023 年 37 巻 6 号 p. 53-58
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    タイ国小学校科学教育における『仮説設定』スキルの初学者への導入について調査したところ,次の3点が明らかとなった.1)同科学教育では『仮説設定』スキルを学ぶためのアクティビティが第4学年から導入されている.2)1)のアクティビティで取り上げられたすべての仮説例は,実験の問いについて予想した答えとなっており,その答えは独立変数と従属変数の関係として示されている.3)2)の仮説例はすべてNOST(科学と技術の本質)単元またはフィジカルサイエンス(物理・化学)単元のどちらかに記載されている.

  • 複数のステイクホルダーの意見に関する学習を支援するダイヤローグ型ビデオ教材に着目して
    口羽 駿平, 山口 悦司, 坂本 美紀, 山本 智一, 原 愛佳, 近江戸 伸子, 俣野 源晃, 澁野 哲
    2023 年 37 巻 6 号 p. 59-62
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    筆者らは,科学技術の社会問題(Socio-Scientific Issues)としてのゲノム編集を題材とした小学生向け教育プログラムを開発している.そのなかで,複数のステイクホルダーの意見を通してゲノム編集のベネフィットやリスクに関する学習を支援するためのダイヤローグ型ビデオ教材を作成している.本研究では,本プログラムを経験した小学生に対して質問紙調査を実施し,ビデオ教材の学習支援としての有効性について,学習者の主観的評価から検討した.その結果,視聴性や操作性が高い教材であることに加えて,次の4点の学習支援の効果を持つ教材としておおむね高く評価されたことが明らかになった.(1)ビデオ教材に登場する学習者が学習のモデルになる,(2)ビデオ教材の中の教授者と学習者のやり取りを通して学習することができる,(3)学習内容について深く考える,(4)ビデオ教材を一緒に視聴する他者との対話を誘発する.

  • ―第5学年「流れる水の働きと土地の変化」の単元において―
    小野寺 かれん, 藤井 浩樹
    2023 年 37 巻 6 号 p. 63-68
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    自然と人間との共生に対する考えを育成するために,日本の小学校理科第5学年の単元「流れる水の働きと土地の変化」において,民話を活用した小学校理科の授業を考案・実践し,その有効性を検討した.その結果,先人の自然観に触れ,川と自分とのつながりや関係に対する考えを広げ深めた児童がいたことが明らかになった.民話は暮らしの場の過去の自然の様子を生き生きと表現し,その中で現代とは異なる先人の自然観を描いているため,児童は時間を越えてその状況に入り,川や川とともに生きた人々に思いをはせたり共感したりできたと考えられる.そしてこのことが,上記の結果に関わっていることが示唆された.

  • ―主体的な学びを導く教育方法の検討―
    和田 重雄, 苅谷 直人, 寶田 恵美子, 小口 雅雄
    2023 年 37 巻 6 号 p. 69-74
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    令和2年度から小学校で必修となったプログラミング教育の実施にあたり,プログラミング教育のねらいを実現するためのカリキュラムマネージメントの準備やICT環境・教材の整備が不十分な公立小学校において,プログラミング教育を実践しながら学校に適したプログラミング教育カリキュラムを開発する委嘱研究を行った.今回開発したカリキュラムの特異性として,Viscuitを活用したプログラミング教材を1年生から4年生まで整備した点が挙げられる.このプログラミング言語は,直接絵や絵文字を描き込むもので,自分が行いたい作業を直感的に入力できる.そのため,ストレスなく自分のイメージを表現できる.これは無意識のうちにプログラミング的思考の基盤となるような能力を身につけられることが期待でき,その後Scratchなどで,高度なプログラムを効率的に作成することが容易になるという利点がある.また,アンプラグド教材も含め,各教科や総合的な学習の時間などに利用できる多様なプログラミング教材を作成することができた.

  • ―生物基礎での探究学習の試み―
    別納 彩子, 和田 重雄
    2023 年 37 巻 6 号 p. 75-78
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,実験授業の結果分析に必要な情報収集や考察にジグソー学習を取り入れた「ジグソー型実験学習法」を開発した.ジグソー型実験学習法は,①実験・データ収集(ホーム活動)②考察に必要な知識の収集(エキスパート活動)③知識の集約・実験考察(ジグソー活動)④各グループの考察を共有(クロストーク)の4段階で構成されており,グループによる実験考察で一部の学生が主導して十分な知識交換がないままに終了する危険性を減らせると考えられる.今回,高等学校3年生の環境水の水質評価に関する測定・考察の実験において実践を行ったところ,授業で学習したばかりの「有機物」という用語をキーワードとして,複数の単元の繋がりの理解が深まったと答える生徒が見られた.知識の収集にあたる「エキスパート活動」の難易度設定や人数調整に改良が必要ではあるが,教科書で学習した知識の理解度や科学リテラシーの向上に有効な学習法となる可能性が見いだされた.

  • ―「生涯学び続ける教員」育成システムの構築―
    笠井 香代子, 窪田 篤人, 猿渡 英之, 渡辺 尚
    2023 年 37 巻 6 号 p. 79-82
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    我々が構築を目指している「生涯学び続ける教員」育成システムのうち,教員養成課程の学生を対象とした「理科教員志望学生育成プログラム」において,実験技術の向上と継承を目的とした教員研修ワークショップ「SCN宮城」への学生の参加とアンケート調査によりプログラムの検証を行った.2022年5月から2023年5月までにSCN宮城例会等が10回実施され,計40名の学生が参加した.理解度・今後の期待度・満足度などの項目を段階で評価するアンケートにより,いずれも90%以上の肯定的回答が得られた.参加学生が実験技術の習得の重要性を認識でき,理科教員志望学生育成プログラムが順調に定着してきていることが伺えた.本プログラム体験者が卒業後に現職教員として参加している例があり,学生と現職教員が交流している様子も見受けられた.

  • 川田 博基, 秦 浩之, 平賀 伸夫
    2023 年 37 巻 6 号 p. 83-88
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    2008年度に改定された中学校理科学習指導要領で復活した「直流と交流の違い」に対応するために,本校では2014年度より5年間にわたって中学3年生に対して,外部連携を用いた送電と交流の特別授業を行ってきた。当時の中学の理科教育の教科書では,発電や電気の利用について多く扱われているが,送電についてはほとんど扱われておらず,教科書の中でも知識の暗記で留まっていた。そこで変電所を活用し,交流について理解しながら送電を学ぶプログラムを作成し実施するに至った。2019年度以降は新型コロナウィルスの影響により実施することができていなかったが,今年度より高校生に対して実施するプログラムを考えている。本発表では,これまで本校で実施してきたプログラムとその成果を紹介し,高校生に対する外部連携を用いた送電と交流の学習の取り組みについて,今後の展望を発表する。

  • 青木 慎恵, 古宇田 大介, 芝辻 正, 金森 千春, 高村 真彦, 牧下 英世
    2023 年 37 巻 6 号 p. 89-94
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    学習指導要領が改訂されて数学Cが復活した.さらに数学活用の内容が,科目としてではなく,数学A,数学B,数学Cに引き継がれた.また,課題学習が,数学Ⅰ,数学Ⅱ,数学Ⅲで扱われることとなり,その単元の内容の他,単元間の相互に関連付けた内容を生活と関連付けたり発展させたりするなど,生徒の主体的な学習を促し,数学のよさを認識させ,学習意欲を含めた数学的に考える資質・能力を高めるような課題が求められている.本研究は,高等学校数学科検定教科書「数学Ⅰ」全17冊(5社)の課題学習がどのように記載されているかを調査するものである.

  • 赤間 祐也
    2023 年 37 巻 6 号 p. 95-100
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    中学校数学科図形領域において学習者に対して証明することの意義を理解させることは古くからの課題である.杉山(1986)は証明の意義理解のために公理的方法による「証明の要素分析」が有効であると提案している.本研究では中高一貫教育校の中学3年生の学習者を対象として面積と三平方の定理の単元において杉山(1986)のいう「証明の要素分析」の考えに基づいて2種類の活動を設計し,4回の授業において実施した.また,それぞれの授業において授業後活動に対する興味や意義について質問紙調査を行い分析を行った.分析の結果活動に対する興味や意義について一定の効果が見られたこと,一方で活動に習熟した後は時間をかけて活動に終始するのではなく,要素分析の考え方は適宜授業の中に埋め込まれるべきであることが結論として示唆された.

  • ~地層の傾きに着目して~
    石井 俊行, 柴田 真弓, 髙松 千恵実, 荒川 友希, 田中 智貴, 石井 佑典
    2023 年 37 巻 6 号 p. 101-106
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,中学生の地層学習におけるつまずきを習熟度別に明らかにし,中学生に「地層の重なり」の学習に必要な知識,技能を身に付けさせるための指導法を検討することを目的に行った.その結果,それぞれのグループ間においてどの知識・技能が不足していてつまずいているのかの要因が特定された.それらを総合的に検討した結果,「傾き無し問題」は「傾き有り問題」に比べて取り組み易いため,まずは「傾き無し問題」から「地層累重の法則」「地形図の読図法」「総合柱状図の作成」「火山灰層(鍵層)の利用方法」「柱状図と標高との関係」の知識・技能等を十分に生徒に習得させ,その後に「傾き有り問題」に指導を移行させていくべきである.

  • 竹中 真希子, 辻 宏子
    2023 年 37 巻 6 号 p. 107-110
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,STEAMの視座から生活科での具体的な体験や活動を通した学びの根底にある科学・数理の世界について検討するため,小学校教員免許を取得する教員養成学部の学生が,生活科の「うごくおもちゃづくり」の単元において,特に「理」を見る力,「理」を解く力の育成につながる科学・数理のどのような要素を見出しているかについて調査した.結果からは,「S(Science・科学)」では,単元の特徴から「エネルギー」と「粒子」領域の要素が見出されていた.また「科学的思考」,「科学的探究」についても言及されていた.さらに「好奇心」,「興味関心」,「不思議さ・面白さ」なども挙げられていた.「M(Mathematics・算数/数学)」では「数と計算」,「図形」,「変化と関係」,「測定」の要素,「論理的思考」,「数学的思考」,「数学的探究」の要素が見出されていた.

  • 中村 琢
    2023 年 37 巻 6 号 p. 111-114
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    物体が水中で浮くか沈むかは,物体と水の密度の大小によって決まる.物体の密度の概念は中学校3年で定量的に扱うが,その基になる知識は,小学校3年の理科から段階的に扱う.水中での物体の浮き沈みを考えるための基本的な事象は,幼少期に生活経験から修得すると考える.そこで本研究では,水中での物体の浮き沈みについて幼児がどのように思考し,概念として定着させるかを実験的に明らかにした.密度の異なる具体的な物を水中に入れて観察する実験と,その思考を対話的に行い,遅延ポストテストにより概念の定着を測定した.物を使って探究的に思考させ,実験したあと,1か月半の期間をあけて概念を調査した結果,一つの物体をそのまま水中に入れたときの浮き沈みの結果は,正確に記憶する幼児が多いのに対し,一つの物体を加工したり状態を変化させたりするときの結果は定着が悪いことが明らかとなった.また,2種類以上の物体の結果を比較したり,多面的に思考したりすることに課題があることが示唆された.

  • 花木 良, 奥村 早希, 髙田 昇研, 西村 春希, 林 穂乃香, 松井 嘉大
    2023 年 37 巻 6 号 p. 115-118
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    「科学の祭典」をはじめとし,全国各地で科学イベントが開催され,来場者は,幼児や小学生とその保護者が主である.企業・大学・高校などによる出展が見られる.研究の目的は,先行研究で挙げられた工夫「ア.参加したいと感じる,イ.幅広い年齢層が体験でき,知識を得られる,ウ.オリジナルな作品を制作できる」を満たす新たな展示物を作製・実践し,科学イベント出展に関する知見を文書化し,展示法を確立することである.研究方法は,書籍等で題材を探し,展示物を作製し,実際に科学館で実践し,来場者にアンケート調査を行うことである.具体的には,箱ギターを作製する展示を行った.長さが音に影響を与えるという算数と音楽を繋ぐ鍵内容を伝えるために,導入でドレミパイプを用いて視覚的に伝達したり,来場者に対応するために3つのコースを用意したり,大人向けの解説資料を配布したりした.アンケート調査の結果,工夫の効果を確かめられた.

  • ―児童・生徒,保護者,教員の意識の相違―
    青山 和裕, 折田 明子, 村上 祐子, 吉川 厚
    2023 年 37 巻 6 号 p. 119-122
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,学習状態をモニタリングすることに対して児童・生徒や保護者,教員がどのように感じるのか,どういった計測方法や利用のされ方であれば許容できるのかなど社会的受容性に関して意識調査を実施した結果についてまとめる.特に調査結果の中の計測結果の開示・共有相手や計測機器の種類について接触型/非接触型に関する意識の相違についてまとめる.児童・生徒,保護者,教員それぞれが自分たちを最も積極的に知らせたい相手としていることや,児童・生徒が保護者に対してやや共有したがらない傾向にあること,接触型の計測機器に対して全体的に否定的な回答が多く,特に保護者が否定的であることなどが窺えた.

  • 小坂 那緒子, 松原 憲治
    2023 年 37 巻 6 号 p. 123-126
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    世界各国で探究的に学ぶ理科授業を重視した動きが見られる一方,探究的な学習の導入に関する課題の報告がある.探究の過程として想定される複数のフェーズは,フェーズによる実施状況の違いが報告されている.本研究では,高等学校普通科の理科授業における探究活動の導入に関して,その課題や,探究の過程の各フェーズの実施状況の解明を目指した質問紙調査を計画している.本研究報告では,予備的調査として実施した,高等学校普通科における理科基礎科目を指導する教師20名への質問紙調査の結果を報告しつつ,質問項目の見直し等に向けての視点を得ることを目的とした.その結果では,探究の過程のフェーズの中で,考察,振り返り,表現・伝達といったフェーズの実施頻度の低さが示された.また,探究活動を導入する上で,時間や学習内容の理解についての懸念が,最も大きな課題となっていた.

  • 山本 雄大
    2023 年 37 巻 6 号 p. 127-130
    発行日: 2023/06/24
    公開日: 2023/06/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    現代の急速な技術発展により,公的統計情報の収集などデータ分析の基盤の整備やAI技術でデータ分析の準備ができるケースが見られるようになったが,データ分析で重要な統計分野は数学教育の一部として扱われている.現状の統計教育における統計的探究プロセスを基盤とした教材で企業でのデータ分析と同じ流れを体感できるが,教育現場で使用できるソフト開発の他に生徒自身の統計的リテラシーの不足が課題として挙げられる.さらに,日常生活での統計情報の読み取りから研究領域における統計分析までの幅広い分野での統計情報の誤解例から文脈の中にある統計情報を正しく読み取り処理する統計的リテラシー教育の重要性が示唆された.今後の課題として,ビッグデータ社会における統計的リテラシーの明確化と批判的解釈に基づく統計的リテラシー教育での教師用教材の作成と多様な解が想定される生徒の評価方法作成の両面で支援の必要性が挙げられる.

奥付
feedback
Top