日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
33 巻, 4 号
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表紙・目次
発表
  • 山田 優基, 今井 壱彦
    2019 年 33 巻 4 号 p. 1-4
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では『AI vs.教科書が読めない子どもたち』にて扱われている,リーディングスキルテストによって判定する基礎的読解力の1分野である「イメージ同定」に焦点を当てている.筆者らは「文章や図形やグラフを比べて,内容が一致しているかどうかを認識する能力」という「イメージ同定」の定義と,例題を基に,「イメージ同定」を測定する問題に必要な4つの要素を挙げている.本稿では,全国学力・学習状況調査とTIMSS調査の問題を参考にして,「リサイクル問題」と「ぬりつぶし問題」の提案をおこなう.参考にした全国学力・学習状況調査とTIMSS調査の問題の趣旨を述べた後,「リサイクル問題」と「ぬりつぶし問題」のリーディングスキルテストとして出題する趣旨,「イメージ同定」を測定する問題に必要な4つの要素を満たしていること,および選択肢を確認する.また,「リサイクル問題」と「ぬりつぶし問題」において想定される誤答を記述する.

  • ―「授業の基本形」にもとづく数学授業の比較を通して―
    竹井 丈広, 松嵜 昭雄
    2019 年 33 巻 4 号 p. 5-10
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,学習指導のシステムとしての記述である「授業の基本形」にもとづき,モンゴル国の数学授業の特徴づけをおこなう.そして,日本の基本形に照らし合わせて,比較する.比較対象は,筆者らが渡航した12月3日から9日までに,モンゴル国でおこなわれた6つの数学授業である.モンゴル国における6つの数学授業を比較した結果,「開始」は,日本の基本形に似通った授業が展開されており,「核心部分」「終末」は,日本の基本形に似通ったものと合致しないものがあった.

  • 竺沙 敏彦
    2019 年 33 巻 4 号 p. 11-16
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    平成29年3月に小・中学校,平成30年3月に高等学校の新学習指導要領が告示され,その中で,「主体的・対話的で深い学び」が重要視されている.また,中学校数学科の目標としての具体的方策の一つとして数学的活動の重要性を述べている.

    これまで,正比例の授業においては,数学的活動を実践するための様々な題材が用意されてきたが,反比例の授業においては,適切な題材が少ない.その理由として,正比例に比べて身近で具体的な題材が少ないこと,数学的に扱いづらいこと等が考えられる.そのため,反比例の指導が形式的に終始し生徒にとって興味深いものになりにくい現状がある.

    本研究においては,ICT機器を用いて,哺乳類の寿命と心拍数に反比例の関係があることを生徒が視覚的,直感的に捉えられる教材を開発し,新たな授業を提案,実践した.

    本研究における授業実践の成果として,ICT機器の導入により数学的処理に掛かる時間を短縮することにより生み出された時間を使って,「人間の寿命が延びた」社会的理由を考察することを数学の授業にて行うことができた.

  • ―授業進度の促進と演習時間の担保を目的として―
    島 智彦, 渡辺 雄貴
    2019 年 33 巻 4 号 p. 17-22
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    高校数学においては,授業で教師が例題の説明を行い,生徒が問題を演習するというユニットを繰り返すことが多い.また,自宅学習として問題集の演習を課す場合も多い.本研究では,授業進度の促進と演習時間の担保を目的として,授業中に問題集演習を中心に進めるモデルを設計した.授業の流れは次の通りである.まず,教師が授業開始時に本時のテーマや目標,学習のポイントについて伝達を行う.その後,生徒は自分のペースで問題集を進め,必要に応じて教師に質問をする.授業の終了時には教師が本日のまとめを行い,生徒はリアクションペーパーを記入する.実践の結果,授業進度の促進が行え,質問紙調査や自由記述からは問題集演習を中心に進める授業への肯定的な回答が散見された.さらに,進度の促進を行ったものの,授業内容の確認テストにおいては,一定の成果が確認された.一方,授業進度を早いと感じる生徒,教科書を使用していないため不安を感じる生徒がいるという課題も見受けられた.

  • 「知ること」と「感じること」
    渡辺 信
    2019 年 33 巻 4 号 p. 23-26
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    数学のおもしろさ・楽しさはどこにあるか.現在の学校教育では数学を楽しむことは出来ない.多くの計算問題を訓練として行っても,答えがすべて正解であれば楽しいと思うが,そこには数学の本質がない.数学探究活動を奨励することは,数学を楽しむことを体得することであり,積極的に行う方向は数学教育を変える可能性がある.探究活動の方法とその実践についての例を挙げる.そのときにTechnologyがいかに探求者の補助として有用であるかをも考えたい.そして学ぶことが「知ること」だけではなく「感じること」が必要であることも探求実践の中で知ることが可能になる.数学探求は誰もが行うことが可能であり,積極的にその場を設けることが必要である.

  • ~子どもに過干渉しない指導法の研修プログラム開発の試み~
    星名 由美, 峯村 恒平, 西原 舞, 野村 泰朗
    2019 年 33 巻 4 号 p. 27-32
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,子どもたちがものづくりを通して主体的な問題解決力を育むことを主な目的として活動しているプログラミング教育の現場において,教育学部を中心とした学生以外の活動に関心がある一般社会人を「シニアリーダー」として定義し,学生とシニアのリーダーモデルを提示し,主体的に考えさせる指導法に関するリーダー研修プログラムについて検討した.半年間の活動と研修,活動後のリーダーミーティングなどを分析した結果,研修としては,「指導法に関する研修」と「技術に関する研修」の2つに分類し,指導法に関する研修では,教育理念の共有,リーダーとアシスタントの役割の共有,主体的な学びのための指導法の修得について,講義形式とロールプレイ形式の研修の実施が効果的であり,技術に関する研修では,学ぶべき基本知識と技術の修得,トラブル対処法を講義と演習を交えた研修として継続して実施することが効果的であることが推察された.

  • ―深い学びの育み―
    和田 重雄
    2019 年 33 巻 4 号 p. 33-38
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    探求技能の習得に通じる思考力,問題解決能力を育むとともに,主体的な学習態度(特に深い学び)を身に付けることを目的として,小学校高学年以上の児童・生徒対象のロボットを自律的に動作させるプログラミング教材,小学校全学年の児童対象とした完全ビジュアル型プログラミング言語を利用したプログラミング教材を開発し,それらを用いた教育実践を行った.子供たちへの実践においては,ほとんどの児童において課題克服のために試行錯誤を繰り返す創意工夫を試みる主体的な活動が見られた.このことから,プログラミング教育は,効果的に探求技能を習得することにつながりやすいと考えた.また,既存の授業と異なる授業態度を示す児童も見受けられ,多様な様式の教育を施すことで,個々の児童の秘めた能力を見出すことにもつながると考えられた.また,プログラミング教育導入を見据えた教員研修も実施し,小学校教員のプログラミング教育に関する認識を改めることもできた.

  • 安影 亜紀, 新地 辰朗
    2019 年 33 巻 4 号 p. 39-42
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    小学校プログラミング教育の授業実践に向かう教師の変容を探り,教員研修プログラムの開発を目的として,質問紙調査とインタビュー調査を行った.教師は,授業実践前は,プログラミング教育について,特設の時間で実施する授業であり,各教科との関連を見いだせずにいたが,授業実践後,プログラミング体験を系統立てて導入し,学年に応じて教科の目標や学習内容とを結び付け,プログラミング的思考を育成する授業の可能性を模索するように変容したことが分かった.また,教員研修プログラム開発の視点から,協議の有効性や多様な教材提示が示唆された.

  • ―大学生の批判的思考習慣の測定を踏まえて―
    酒本 涼, 小倉 康
    2019 年 33 巻 4 号 p. 43-48
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,中学校段階の生徒に対して有効な,クリティカルシンキングの育成を図る理科指導法を開発することにある.そのためにまず,クリティカルシンキングに関するアンケートを設計し,大学生を対象に実施した.アンケートの結果から,批判的思考習慣の中でも特に「操作的定義」について習熟度が低いことが示された.これを踏まえて,クリティカルシンキングの育成を図る授業を設計し,実施した結果,一部において指導の有効性が示された.

  • 中込 泰規, 加藤 圭司
    2019 年 33 巻 4 号 p. 49-54
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    学習指導要領(平成29年告示)において,知識を相互に関連付けてより深い理解を促す学習が求められている.しかし,平成30年度全国学力・学習状況調査の報告書によれば,特に領域を超えた知識の活用に課題があるとされている.本研究では,知識統合(Linn, M: 2000)の理論を援用し,授業実践を通して,学習者が知識を関連付けるプロセスとメカニズムを明らかにすることで,関連付ける能力の育成及び,統合へと結びつく授業デザインの検討を行った.成果として,「対話ベースで知識を関連づけていく際に,学習者レベルでの検討だけでなく,科学的な要素を含ませること」,「観察・実験といった事象レベルのものや,他者の考えを自分の考えに取り入れる際に,その基準を意識化させ,効果的な関連付けにつながること」,を意識した授業デザインを行うことが,学習者が知識を関連付け,統合を実現することへと繋がっていくという示唆を得た.

  • ―生徒の発話とインタビューを取り入れて―
    河原井 俊丞, 宮本 直樹
    2019 年 33 巻 4 号 p. 55-60
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,「問い」の生成プロセスに関する実証的研究において授業中の発話と授業後の「問い」の生成に関するインタビューの内容をワークシートとアンケート調査の記述内容に併せ,それらをもとに「問い」の生成プロセスの検討を行うことで,生徒の実態に即した「問い」の生成プロセスを示し,どのようなプロセスが存在しているのかを明らかにすることができた.

  • 平田 昭雄, 十文字 秀行
    2019 年 33 巻 4 号 p. 61-66
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    平成30(2018)年改訂版高等学校学習指導要領の完全実施に向け,平成31(2019)年2月現在に至る平成20(2018)年度改訂版高等学校学習指導要領下のSSH指定校における探究的な学習活動の指導の取り組みを振り返り,整理しながら,とくに「理数探究」および「総合的な探究の時間」における効果的な探究的学習活動の指導法について模索した.この取り組みは具体的には,発見,検証,開発,他といった探究過程の節目々々にまで生徒達を成功裏に至らしめようとするとき,教員達のいったいどのような指導や支援が効果的なのか,学校は組織としていったいどのような指導体制を整えればよいのか,といった問いに対する答えの模索といえる.本研究は,未だ確固たる結論を導くには至っていない.従って,ここではこれまでの取り組みの現時点での中間報告とした.

  • ―小学校第5学年「台風と天気の変化」において―
    岡本 弥彦, 河本 章宏, 五島 政一, 佐藤 真久
    2019 年 33 巻 4 号 p. 67-70
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    小学校第5学年の「台風と天気の変化」の指導において,ESDの学習指導過程を構想し展開するための枠組み(国立教育政策研究所,2012)の考え方を取り入れるとともに,総合的な学習の時間との連携も図りながら,科学的な探究の過程を重視した指導を展開した.その結果,児童は,自然事象に対して批判的に考える力や,他者と協力して学習や活動に進んで参加する態度などを身に付けることができた.

  • 下吉 美香
    2019 年 33 巻 4 号 p. 71-74
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,次期学習指導要領において示された小学校理科教育の方向性を踏まえ,その実現に向けて如何に取り組むべきかについて,具体的指針を明らかにしようと考えた.各教科の特性に応じた「資質・能力」の育成,「見方・考え方」を働かせた主体的・対話的で深い学びの実現に向かうためには,教師の子どもの学びを見取る目と,深い学びを創り出す単元デザイン力,カリキュラム・マネジメント力が必要となってくる.特に,理科の学習においては,問題解決の過程を丁寧に展開していく中で,科学的な深い学びを実現していくことが求められている.本報告においては,第5学年単元「もののとけ方を科学しよう」における子どもたちの学びをもとに,現時点での知見を示す.

  • 猪股 義信
    2019 年 33 巻 4 号 p. 75-78
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    中学校理科の学習は,観察・実験を行い自然現象を理解することにある.しかし天体学習においては,観察・実験が非常に少ない.また,空間概念の形成は学習内容を理解する上で自然現象のイメージ化・モデル化に必要である.学習内容を理解するには、観察・実験が少ない状況を考えると,多用されている図を活用することが有効である.図を利用するに当たり「観察者の視点」を意識するように指導すること.そのためには,方位感覚や天体運動の見方(いつ、どこで,どの方向)を指導すること.また,天体の運動をイメージ化・モデル化するための教材開発(地球儀台の製作・フィギアの利用・フーコーの振り子のモデル・南中高度のイメージ化のモデル)を行った.

  • 松田 直也
    2019 年 33 巻 4 号 p. 79-84
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    京都盆地は,東西圧縮応力による逆断層並びに横ずれ断層によりつくられていることが知られている.そのような断層を授業の中でどのように受講者へ伝えるかを本研究では考察した.京都盆地にも発達する断層で,特に逆断層は断層面の上盤側がのし上がり表面で隆起する特徴を示す.このことを授業で取り扱う上で,「組立て式地層変形モデル実験装置」を用いて発生過程で現われる地下での様子や表層地形を観察させることに加えて,「標高陰影地形図」を用いて活断層の位置を特定させることで盆地形成と活断層の関係を学習する内容の授業行程を構想した.そこでは,活断層の動きで地表面に変位が生じることを理解した上で,京都盆地に隣接する山科盆地を対象として活断層の位置の特定を行った.このことを学習することで,京都-山科盆地の形成を考察する授業展開とした.本研究では,高校生及び大学生に対してこの学習行程をもとにした授業実践を行い,活断層の正しい知識を獲得することができるかを考察した.

  • ―ソーシャル・サポートに着目して―
    峯村 恒平, 藤谷 哲
    2019 年 33 巻 4 号 p. 85-90
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本論は,SSHの教員組織において「SSHを特に担当する教員」がどのような役割を果たしているのかを明らかにするため,教員組織におけるソーシャル・サポートを一つの視点に調査分析したものである.その結果,SSH特有の教育活動について困難や課題が生じたとき,SSHを特に担当する教員からのサポートを期待できていることがわかった.またこの結果の効果として,バーンアウト尺度を従属変数とした重回帰分析をしたところ,「個人的達成感」の高まりが,SSHを特に担当する教員からの「道具的サポート」への期待と関係性があった.

  • 藤谷 哲, 峯村 恒平
    2019 年 33 巻 4 号 p. 91-96
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    スーパーサイエンスハイスクール(SSH)にみられるような特筆すべき中等教育のためには,人材育成や教員養成においてどのような専門性や教員意識が重要かを考察するため,全国のSSHに指定されている高等学校で働く先生方を対象として,どのような専門性を持った教員が,どのような役割意識をいだいて勤務されているのかを探ることを目的とした調査を行った.

  • 野村 祐子
    2019 年 33 巻 4 号 p. 97-100
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    消防の立場から見た現在の小学校理科教育には,防火教育の枠組みの未整備と,エネルギー概念の統合的な理解の欠如という,2つの大きな問題がある.統合的・継続的な防災教育を初等教育現場に実装するための端緒として先に提示した防火教育の枠組みの試案を精緻化し,エネルギー概念の理解を深めるとともに火災に関する基礎的な理解が図られるようにする必要がある.本研究では,小学校理科第3学年の「光と音の性質」における虫眼鏡による日光の集光を活用することにより,身近な可燃物が持っている化学エネルギーと熱源の相互作用による火災危険を直感的に認識できるようになることを目的とした.セルロースの着火過程に関する基礎知識の整理を行い,2種類の紙の熱分解の様子と火炎拡大へ遷移する様子を比較観察できる実験教材を開発した.開発した実験教材を用いて,赤外線による紙の着火過程を観察できる映像教材を作成した.

  • ―日本科学未来館オープンコンテンツ事業の取り組みを通して―
    宗像 恵太, 谷 明洋, 毛利 亮子, 酒井 尚子, 池辺 靖
    2019 年 33 巻 4 号 p. 101-106
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    科学を社会課題や実生活と関連付けて学び,活用することの重要性が指摘されており,そのために,学校のみならず他のコミュニティも連携した科学コミュニケーションが求められている.日本科学未来館は,来館者向けに開発・実施している科学コミュニケーションコンテンツを,教育に従事する人らをはじめとする第三者が素材・教材として利用できるよう,公開する取り組みを行っている.本研究は,当コンテンツの素材・教材としての価値や可能性を,館外での利用状況や利用者へのアンケート,ヒアリングなどで調査した.その結果,科学コミュニケーションを実践しようとする教育活動実施者への支援ツールとして機能するとともに,科学コミュニケーションが多能な場で創出され,生徒や実施者に新たな学びが提供されたことが示唆された.

  • 福井 智紀, 大木 茂
    2019 年 33 巻 4 号 p. 107-112
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    動物共生科学に関する科学コミュニケーション活動として,サイエンスカフェ,オープンラボ,パネル展示などの様々なイベントを展開した.異なるタイプの事業を実施したことで,多面的な科学コミュニケーション活動を構築することを目指した.また,それぞれの活動において参加者・来場者からアンケートを回収することで,研究事業や「動物共生科学」に対する認知度や期待などの一端を知ることができた.本稿では,アンケートの詳細な結果には立ち入らず,科学コミュニケーション活動として展開してきた,様々なイベント等の概要について報告した.

  • ―現代社会の課題解決を探究する「総合的な学習・探究の時間」での活用に向けて―
    内田 隆
    2019 年 33 巻 4 号 p. 113-118
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,コンセンサス会議を簡略化した方法で,体外授精における遺伝的なつながりの有無と親子関係等を検討し,生徒主体の議論を通して代理出産の是非等について意思決定や合意形成を図る授業を,多くの教員が実践できるよう教材開発及び教材冊子の作成を行った.作成した教材冊子の解説のわかりやすさ,学習内容・作業の量,説明や授業展開等の構成,作業カード・シートの使いやすさ等について,また,生徒の意思決定・合意形成に向けた議論の態度や取り組み姿勢等について,いずれも試行した教員から肯定的な評価が得られた.授業を受けた生徒への質問紙調査の結果からも,授業の評価等について肯定的な評価が得られた.したがって,作成した教材冊子は教員にとって活用しやすく,科学技術に関する生徒主体の議論を中心とした授業を行うための支援策として有効であることが示唆された.

  • 加茂川 恵司, 菊地 洋一
    2019 年 33 巻 4 号 p. 119-122
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    小学校理科における観察実験の特徴の一つとして,様々な事例体験の中で法則や概念を学んでゆく側面がある.目標とする知識が明瞭に設定されることもあるが,場面に固有な知識は活用を難しくする場合がある.時には詳細な正確性ではなく全体像を粗く捉える粗視化の技能が有用と考えられる.本研究では4年の「水の温まり方」学習を主題として,教材研究の立場からどのように粗視化へ進み得るか検討を行った.

  • 山根 悠平, 雲財 寛, 稲田 結美, 角屋 重樹
    2019 年 33 巻 4 号 p. 123-128
    発行日: 2019/03/16
    公開日: 2019/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,国内における今後の研究倫理教育実践への示唆を導出するために,国内の研究倫理教育の実践に関する先行研究を整理し,研究の動向や課題を明らかにすることである.そこで,研究倫理教育に関する論文を収集し,教育の対象者・目的・内容・方法・評価に着目して分析した.

    その結果,研究倫理教育では,大学生を対象とした研究が多く,教育対象者が倫理的知識を得たり理解したりすることを目的とし,特定不正行為やデータの収集・管理・処理を内容として扱うことが重視されていること,一斉指導及び個別指導による教育方法が多いことや教育の評価を行っている研究が少ないことなどが明らかとなった.これらのことから,初等中等教育における研究倫理教育の実践の必要性や倫理的に判断したり行動したりする能力の育成を目的とすること,及び研究倫理教育における評価などに課題があることなどが示された.

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