日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
8 巻, 3 号
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表紙・目次
研究発表
  • 深見 喜弘
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 1-6
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    小学校で広くおこなわれているメダカなどの水生生物の飼育は, 身近な自然に親しみをもち, 興味をもって飼育する活動を通して, 生き物や自然を愛する心情を育てるという理科の目標に合致するだけでなく, 環境教育の目標を実現する上からも格好の教材として活用できると考える。本研究では, メダカの飼育に生態学的な原理や視点を据えることによって, 生態系への理解を深めると同時に, 飼育の考え方や技術を改善していくなかで, 楽しく上手な飼育の仕方を体験し, 環境学習への発展に資するような実践的アプローチの工夫に主眼をおいている。
  • 大塚 信幸, 高瀬 一男
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 7-12
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は, 先に開発したSTSモジュール教材「石鹸と合成洗剤」の有効性を明らかにしようとするものである。そのために, 開発した教材による授業と化学教科書中心の普通授業の学習効果を比較検討した。その結果, 開発した教材による授業の方が, 化学教科書中心の普通授業より学習意欲の面で効果が大きく, 知識理解の面では同程度の効果があることが明らかになった。したがって, 開発したSTSモジュール教材は, 学習意欲を向上させる教材として有効であり, 化学教科書の小単元「石鹸と合成洗剤」の代替えとしても適当であるといえよう。
  • 大辻 永, 赤堀 侃司
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 13-18
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は、科学教育の教授学習過程に外国語教育の枠組みを導入することを教授方法論として提案し、これに従って行った授業、及びその成果について報告するものである。外国語教育の枠組みを導入することにより、第一に、構成主義的科学教育論でいう、学習者と教師の対立する2つの概念体系を繋ぐ仕組みが成立し、第二に、相対的科学観を形成する形態が用意されると思われる。また、外国語としての英語が論理的思考に適合することもこれを支持する。導入の背景は、①構成主義的学習論における、学習者と教授者の対立する2つの概念体系、②文化相対主義に立ち、西洋・非西洋の衝突する2つの文化から科学教育を捉える主張、③異文化を教授する外国語教育、④英語が論理的思考に合うこと、⑤科学の教授学習過程を科学理論の変換過程に見立てるという主張、⑥科学理論転換の規約主義による一見解、⑦科学史における「翻訳」過程の重要性、である。実践授業では、大陸移動に関する諸理論の展開を科学史的に扱った単元を設けた。
  • 松本 勝明, 木村 捨雄
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 19-24
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は, 中学校数学教育において文字・文字式の「よさ」を新しい視点でとらえ, その「よさ」を感得させるカリキュラム開発を行うとともに, 実際の授業でその有効性を実証し, 併せて生徒の「よさ」感得の特性の解明を行った。その結果, 第1点は中1の「文字と式(数量の表し方)」において, よさ感得授業(S群)と伝統的授業(T群)を実施した結果, 両群の文字・文字式の「よさ」の感じ方に有意差が見られたこと, 第2点は課題により異なるが, 授業から3か月後においても, S群に「よさ」感得の定着が見られたこと, 第3点は能力差, 文字, 文字・数式処理の中で, 特に最後の要因が「よさ」感得を決定する特性であること, 第4点は多元的アプローチをとる「よさ」感得カリキュラム構成の重要性, 以上の4点が明らかになった。
  • 加藤 久美, 木村 捨雄
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 25-30
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は, 図形の動的な見方を子ども達に育てるために, 回転移動と変形を取り上げた。合同の判別と高さの認識場面における両者の影響を具体物と抽象図形で比較した。全体的形状をなし「頭」を持つかもや抽象図形であっても「尖り」という特徴のある二等辺三角形に比べ, あいまいな特色しか持たない三角形では, 回転移動によって合同が判別しずらくなることが明らかになった。とりわけ, 三角形の他の一辺が水平方向の安定した位置になると, 判別しずらいという結果がでた。また, 子ども達の持つ素朴な高さ概念は, 矛盾しない方法で厳密に説明される定義とは異なり, モアイの身長型に見られるようにモノ固有の長さそのものであったり, モノの最長の長さに影響されるなど, とても柔軟で状況依存的である特性が明らかになった。
  • 益田 英明, 木村 捨雄
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 31-34
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    冒険教育については, 今までの先行研究例から, 不安やストレスに直面しながら, これらを克服していくことによって, 自己概念の向上がみられることが明らかになっているが, その冒険性の役割については, 詳しく触れられていない。冒険性のもつ役割を明らかにすることは, 今後のキャンプ・プログラムの開発にとっても重要な課題と考えられる。そこで本研究では, キャンプに参加する児童が, 冒険教育における冒険性を通して情意面がどのように変化し, その変化が自己概念の変容こどう影響するのかを明らかにすることで, キャンプの冒険性の意義を検証したいと考えた。本年度, 徳島県で行われた「フロンティア・アドベンチャー」事業の参加児童を対象にアンケート調査をし, その結果に基づいて分析する。
  • 益子 典文
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 35-40
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    認知科学の貢献の一つである知識の領域固有性を数学科における教材開発に活用するための基礎的調査を中学3年生に対して行った。課題構成にあたっては, 「文字の意味を拡張する」「同型構造を抽出する」というような具体的な課題変形を行った。文字式表現する際の基本的な変換 (transformation) を題材として中学3年生に調査を行ったところ, 一般的に使用できるストラテジーを使って変換を行う生徒の割合が高く, 明確な主題化効果は見いだせなかった。
  • 小林 和裕
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 41-46
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    小学校の理科学習では、問題解決の能力を育てること、自然を愛する心情を育てること、自然の事物・現象についての理解を図ること、科学的な見方や考え方を養うことをねらいとし、子どもの人間形成に深くかかわっている。学校での学習において、これらのねらいに迫るためには、子どもの主体性を大切にした学習活動を考えていくことが必要となる。そこで、本研究では、子ども自身の力で解決すぺき課題を見つけ、調べ方を工夫しながら解決できる学習を行えることが、子どもの主体的な学習に結びつくと考え、実践してみた。研究の視点として「教材」「課題をつかむ場」の二つをとりあげた。教材では、『発展性が期待できるかどうか』、つまり、「学習内容の全体性が含まれているかどうか」「多様な取り組みが保障できるかどうか」という面から、課題をつかむ場では、「比較対照」という面から、テーマとのかかわりを考察した。
  • 古谷田 明良
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 47-52
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は、「生徒にあらかじめ単元全体を見通して毎時間の課題を設定しておく学習 (「課題設定学習」)」の教育的効果を、理科において検討したものである。単元「電流と磁界」の学習を例にして授業の前後での生徒の知識の変化と、毎時間ごとの生徒の意欲度の変化を調査したところ次のような結果を得た。①「電流と磁界」の単元においては、課題設定学習を行うことによる生徒の知識獲得効果は、見られなかった。②「電流と磁界」の単元においては、課題設定学習は、課題を決めた直後の学習には意欲を高めるのに効果はあるが、時間の経過とともに、学習意欲は普段の授業と同じ程度もどる。③ 課題設定学習を行ったクラスで、授業のはじめに、課題を設定した理由と、自分達がはじめの疑問に対してどれくらい追求できたかを知らせることは、学習意欲を高めるのに効果がある。④ 学習内容そのものが生徒にとって、興味深いものであれば、学習意欲は高くなり、課題設定学習を行っても、行わなくとも意欲の度合いには差がない。
  • 海老澤 誠
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 53-56
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は, 植物の外呼吸について, 中学1年生の植物の外呼吸に関する認識の実態に基づいて, その指導方法の研究をねらいとしたものである。研究の結果, 次のことが明らかになったので報告する。(1) 学習前にある1年生に, 植物の外呼吸と光合成で出入りする気体を混同して認識している生徒がみられる。この認識は学習後の3年生にも多くみられた。(2) もやしの外呼吸で出入りする酸素と二酸化炭素の濃度を気体検知管で測定できる。(3) もやしの外呼吸における酸素と二酸化炭素の濃度の測定結果の解釈は, 植物の外 呼吸についての実態調査に見られた生徒の認織を修正する手がかりになる。
  • 宮地 功, 岸 誠一
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 57-62
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    AHPを用いて1時間の道徳授業による目標としている指導内容の変容を定量的に評価する方法を提案する。道徳教育における授業の視点に含まれる指導内容それぞれについて一対比較をして、授業によって目標にしている指導内容の重要度 (大切さ) を調べるアンケートを実施する。そのアンケートを授業の前と後に行い、重要度の差をとる。この値によって、どの指導内容がどの程度変化したかを知り、その授業によって生じた児童の道徳性の変容を定量的に知ることができる。小学校の道徳の授業において、提案した方法によってアンケートを実施し、授業展開にほぼ対応した変容がみられた。提案した方法による定量的な変容から授業効果を知り、授業方法を改善できるようになった。
  • 森 清子
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 63-66
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    教科としての理科は、実験や観察といった操作的活動が多く、他と比べて児童の知的好奇心を刺激し、学習意欲 (内発的動機づけ) を喚起しやすい教科である。そこで、本研究では、実験群・統制群の2クラスにおいて、児童の学習意欲が単元を通して授業時間を経るに従ってどのように変化していくかを小学校6学年『電流のはたらき』の単元を通して調査した。結果は、"自分で目標を決めて実験しようと思うか" "実験を人にやらされていると思うか" という項目について、授業時間を経るに従って変化が見られた。
  • 長岡 勝典, 高瀬 一男
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 67-72
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本報では, 児童にいくつかの異なる状況を図で提示し, それらによる「鏡が光を反射する」, 「鏡が光を出す」という考えの用いられ方の違い, 及び光の存在と明るいということが同じ意味で使われるのかどうかについて調査した。その結果次のようなことが分かった。(1) 光源がある状況では光が存在し,ない状況では光は存在しないと考える児童が多い。(2) 強い光源が存在すると, 「鏡は光を反射する」と考え, 弱い光源のときや, さらに光源がない状況では「鏡は光を反射しない」と考える児童か多い。(3)「鏡が光を出す」という考えの使用頻度は学年により差があり, 強い光源がある状況では他の状況にくらべ「鏡は光を出す」と考える児童が多い。
  • 荒川 博利, 下條 隆嗣
    原稿種別: 本文
    1993 年 8 巻 3 号 p. 73-76
    発行日: 1993/11/06
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    概念に関する研究は、人間の知的活動に関するさまざまな分野で研究がなされているが、それらにおける概念の捉え方に新しい動きがでてきている。そこで、それらの動向を見ながら、これからの理科教育における概念形成研究における課題を考察した。その結果、最近の認知心理学における概念の研究が理科教育に大きく関与しており、また、今後もこれら二つの領域の相互関係が増大することが予想される。また、より日常的で具体的な概念についての研究が進むにつれて、「概念」についての従来の捉え方とは異なった捉え方をすることにより、これまで説明しにくかった現象の説明や、概念形成のモデルが見い出されるようになった。
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