本稿において, 教師の意思決定研究がわが国の教師教育 (教員養成と現職研修) にどのような意味をもっているのかを検討した。まず, 教師の意思決定研究の背後にある教師観が検討された。そこには,「たんなる技術者としての教師」から「熟慮を必要とする職業としての教師」へという教師観の転換が認められた。さらにいえば,「学校や教室といった複雑で不確定的な環境の中で, 合理的な判断と決定をする職業」という教師の見方が確固たるものとして存在していた。これらの教師観は, わが国の教師教育の目標を検討する際に重要な視点を提供することが考察された。次に, 教師の意思決定研究から教師教育への示唆として8つが得られた。例えば, 再生刺激法, VTR中断法, ポリシー把握法といった意思決定研究法は, 教師や学生の授業力量を育成するための方法として教師教育プログラムの中に取り入れられる必要がある, といった示唆が得られた。
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