日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
33 巻, 1 号
選択された号の論文の34件中1~34を表示しています
表紙・目次
発表
  • ―幼小連携における円滑な接続のために―
    伊藤 哲章
    2018 年33 巻1 号 p. 1-4
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,幼児の身体現象の理解に着目し,遺伝的特徴,身体的特徴及び心理的特徴に関する幼児の認識を明らかにすることを目的とした.その結果,次の3点が明らかとなった.第1に,4歳児は修正可能性という観点で,遺伝的特徴,身体的特徴及び心理的特徴を既に区別している.第2に,身体的特徴の修正可能性を認めた子どものほとんどが,その修正は身体的練習によってもたらされると回答した.第3に,心理的特徴の修正可能性を認めた子どものほとんどが,その修正は意思・努力によってもたらされると回答した.

  • ―教科「事実教授」のスタンダード・手引書に焦点をあてて―
    後藤 みな
    2018 年33 巻1 号 p. 5-8
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    ドイツでは学力向上をねらってスタンダードに基づく教育改革が行われている.初等教育の科目「事実教授」については,事実教授学会版の新しいスタンダードと手引書が発表されている.本稿では,そのスタンダードおよび手引書の基本的枠組みを踏まえつつ,化学学習の課題例について取り上げ,その学習内容,および指導に関する特徴を検討した.その結果,次の2点が指摘された.(1)子どもの経験領域との結びつきのある日常的に使う物質を用いて学習内容が構成されている点,(2)子どもの経験や問いに基いて探究させ,起きた現象の振り返りを通して基本的な概念の習得を促すような指導がなされている点,であった.

  • ―テスト不安,自己効力感,動機づけとの関連に着目して―
    川上 紗希, 久坂 哲也
    2018 年33 巻1 号 p. 9-12
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,学業的援助要請のうち自律的援助要請を行うことができる学習者の育成を目的として,テスト不安,自己効力感,動機づけに着目し,大学生47名を対象に理科の学習場面を想定して質問紙調査を実施した.その結果,内的動機づけである充実志向及び実用志向が自律的援助要請を促進する正の影響を与えていることが明らかになった.また,充実志向が依存的援助要請に負の影響を与えていることが示された.したがって,積極的に自律的援助要請を行うことができる学習者を育成するためには,動機づけそのものに介入し,より望ましい動機づけとされる内容関与的動機をもたせることが重要であると考えられる.また,学習者が自身の動機づけを把握して改善を図るための支援が求められる.

  • ―思考ツールを取り入れた指導方法の介入を通して―
    中嶋 彩華, 久坂 哲也
    2018 年33 巻1 号 p. 13-16
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    教育学部生が抱く理科指導に対する不安は,授業の指導方法に対する不安が最も高いことが示されている.したがって,具体的な授業の指導方法を教授することで理科指導に対する不安は軽減するのではないかと考えられる.そこで,本研究では教育学部生を対象に思考ツール等を取り入れた指導方法を教授し,その介入の効果について理科指導に対する不安の変容を分析することを目的とした.分析の結果,介入後の不安は介入前よりも全体的に有意に低くなることが示された.

  • 理科学習への利用可能性を探る
    小西 かんな, 久坂 哲也
    2018 年33 巻1 号 p. 17-20
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    理科学習における認知カウンセリングの利用可能性を探ることを目的とし,認知カウンセリングに関する先行研究の基礎的考察を行なった.オンラインデータベースを用いて先行研究を抽出した結果,計33件の文献が収集された.コーディングスキーマを生成し,対象学年や対象教科,実施期間や実施回数について分析した結果,それぞれについてある一定の傾向が見出された.理科学習において認知カウンセリングは効果的な実践となりうるが,理科学習を対象とした先行研究は4件のみであったため,今後研究の蓄積が望まれる.

  • Picture-Perfect Scienceを事例として―
    板橋 夏樹
    2018 年33 巻1 号 p. 21-24
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,幼稚園・小学校段階でエネルギー教育に関する科学絵本を活用した取り組みを行っているPicture-Perfect Scienceを事例にその特徴を調査した.その結果,以下の4点が明らかになった.

    1)教育方法として,Bybeeによる5E教授法「関与Engage,探索Explore,説明Explain,精緻化Elaborate,評価Evaluate」の学習サイクルを導入している.

    2)各章では,絵本の音読だけでなく,それに関連する各種の実験活動を含む探究活動を取り入れ,内容の理解を深める構造になっている.

    3)エネルギーという用語を全面的に使用しているわけではない.事例とした2つの章では,太陽光に含まれる紫外線や風の働きの探究活動から,光エネルギーの移動や力との関係について理解させるようになっている.

    4)探究活動の場面では,内容理解のために効果的な教師の「発問」を例示し,どの教員でも容易に実践できるような工夫をしている.

  • 今村 哲史, 佐藤 晴那
    2018 年33 巻1 号 p. 25-28
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,中学校第3学年の生を対象として,理科の単元「科学技術と人間」終了時に,STEM(科学・技術・工学・数学)の各領域のイメージ及びSTEM教育に関する認識の調査を行った.その結果,生徒はSTEMの各領域に対して関心が高く,魅力的で意義のあるものであるという好意的なイメージを持っていることがわかった.また,科学・数学・工学・技術の統合が「必要」であり「良い」ことであるという考えを持っているものの,それは「複雑」で「難しい」ことであるという認識も持っていることが明らかになった。さらに,中学校におけるSTEM教育の必要性についても生徒は肯定的であった.しかしながら,生徒には,はっきりとした工学のイメージがなく,工学の意義や内容について学習する機会を設ける必要があることもわかった.

  • ―中学生の実態を基に―
    山科 勝, 佐藤 晴那, 今村 哲史
    2018 年33 巻1 号 p. 29-34
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年の科学教育においては,コンピテンシーに基づく教育が必要とされている.そこで,本研究では,義務教育終了段階における21世紀型スキルに関する生徒の認識の実態を調査・分析した.先行研究では,科学教育に取り入れる21世紀型スキルは,応用(活用)する能力,複雑なコミュニケーション・社会的能力,非日常的な問題解決,自己管理と自己啓発(能力),システム思考の5つに分類されており,それらを基に調査用紙を作成した.調査の結果,全体的傾向としては,質問項目のほとんどの平均値は高かったが,非日常的な問題解決及び自己管理と自己啓発(能力)の項目の値が低く,生徒は身に付いていないと認識していた.また,身に付いていると考える度合いには個人ごとに差があることが明らかになった.

  • 〜実験で分かったことと実際に起こったこと
    大和 健太, 伊澤 佑香, 高橋 美和, 田沼 萌, 藤崎 聡美, 星 勝徳, 水戸部 祐子, 安川 洋生
    2018 年33 巻1 号 p. 35-38
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    TetX(抗菌薬の一種であるテトラサイクリンを不活化する酵素であり,同薬に耐性を示す細菌から見つかった)の変異体を作成し,それらを導入した大腸菌のチゲサイクリン(多剤耐性菌に有効な抗菌薬)に対する感受性を調べた.その結果,TetXの266番目のグルタミン酸と359番目のメチオニンがそれぞれリジンとイソロイシンに置換した変異体はチゲサイクリンに対する感受性が低下することが分かった.ゲノムデータベースを検索したところRiemerella anatipestifer(アヒルやカモに感染する致死性の細菌)がコードする5種のTetXオーソログが見つかり,その内の4種は266番目がリジンであり,359番目はイソロイシンであった.この4種のオーソログの1つについては解析結果が報告されており,TGC耐性を示すことが分かっている.このように演者らが実験室でスクリーニングした変異体と同じ変異を有する薬剤耐性因子が環境中でも出現しており,このことは分子進化の蓋然性を論じる事例の一つとすることができるかもしれない.

  • 餘目 清夏, 青野 大悟, 永須 千尋, 小方 友貴, 工藤 みなみ, 角田 耕志, 中川 拓海, 福士 祥代, 安川 洋生
    2018 年33 巻1 号 p. 39-42
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    今日,抗菌薬に対して耐性を持つ薬剤耐性菌が世界規模で拡大しており,先進国を中心に薬剤耐性菌対策を進めている.演者らは指導による薬剤耐性菌対策の実践意識への効果を調べるために岩手大学の学生を対象に,薬剤耐性菌の脅威と抗菌薬の適切な使用法についての講義を受ける前後で抗菌薬の使用についてのアンケートを実施した.また,生活環境中に薬剤耐性菌がどの程度存在しているのかを明らかにするために,岩手大学生が所有するスマートフォンと大学構内に設置されているハンドドライヤーについて予備調査を行った.その結果,臨床等で長く使用されてきた抗菌薬であるアンピシリン,ストレプトマイシン,リファンピシン,テトラサイクリンに耐性を持つ細菌が調査した多くの試料から検出され,薬剤耐性菌は私たちの生活環境中に存在していることが分かった.これらの予備調査の結果を踏まえて教育現場で適切に指導することが薬剤耐性菌対策には必要であると考えられる.

  • 竹下 陽子, 貞光 千春, 大﨑 章弘, 里 浩彰, 榎戸 三智子, 露久保 美夏, 千葉 和義
    2018 年33 巻1 号 p. 43-46
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    災害復旧時の間借り教室などにおいても実施可能な実験パッケージを小学校3年生から小学校6年生まで開発した.連携地域において,各実験教材を用いて教員研修を行ったところ,「教材に満足した」「授業で活用したい」など,高い評価が得られた.地震被災地では「ガラスを使わずに実施できる実験教材だったので,助かった」などの肯定的な評価が得られた.

  • 渡邉 志保, 郡司 賀透
    2018 年33 巻1 号 p. 47-50
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,日本人の自然観に着目したSTEMカリキュラム構成の視点を提示し,今後の問題解決型学習に活かそうと試みたものである.日本人の自然観を検討するため,宮沢賢治の文学作品等に焦点を当てた.その文学作品等には,自然との調和を重視する自然観と科学的な自然観が共存するからである.検討の結果,自然観に着目した日本型STEMカリキュラム構成の視点として,①「共同体のために」という文脈を用いる視点,②自然のスケールの大きさ,繋がりについての視点,③流れ,連続性(時間,生物間)についての視点,④地域性を活かして自然観を表現するデザインの視点,⑤生態系を多面的に捉える視点を見いだした.さらに,アメリカのSTEM教科書を事例として,前述の5つの視点を反映させた単元構成の提示を試みた.

  • ゆざわジオパークにおいて
    田口 瑞穂
    2018 年33 巻1 号 p. 51-54
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    ジオパークにおける理科学習の提案や実践は数多く報告されているが,地熱の広がりに着目したものはない.そこで,秋田県ゆざわジオパークにおいて教員研修と教員免許状更新講習を行い,地熱の広がりを理科学習に導入できるのかを検討した.その結果,1地熱の広がりを実感させるには,フィールドワークで実際に調査・観察させることが有効であること,2児童生徒に地熱の広がりを実感させるには,地図へのプロットが有効であると指導者は考えていること,3児童生徒に地熱の空間的な広がりを実感させるには,立体模型が有効である可能性が示唆されたこと,が明らかになった.

  • 清野 樹恵, 及川 宏輝, 古本 温久, 久坂 哲也
    2018 年33 巻1 号 p. 55-60
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,学習者のメタ認知をオンラインで捉える方法の1つとしてふきだし法を用い,理科の問題解答におけるメタ認知の測定方法について検討を行うことを目的とした.物理・化学分野からそれぞれ1題ずつ,ふきだし法を用いて解答する理科の問題を作成し,公立小学校1校の第6学年の児童(計49名)を対象に調査を行った.また,ふきだし法で捉えたメタ認知の妥当性を検討するため,問題解答後に自身の解答に対する確信度評定を求めた.併せてオフラインで捉えたメタ認知との比較を行うため質問紙調査を実施した.

  • 渡邊 雅也, 安川 洋生
    2018 年33 巻1 号 p. 61-64
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    高等学校の生物では,ゲノムに突然変異が起きた結果塩基配列に永続的な変化が生じ,生物の形質が変わることを学習する.しかし,多くの細菌がファージからの感染に対し自己を防御するための機構であるCRISPR/Casシステムにより,ゲノムを能動的に変化させ生存してきたことについては学習しない.そこで本研究では,Flavobacterium psychrophilum(アユ冷水病菌)がCRISPR/Casシステムを有しているか,CRISPRのスペーサー配列(ファージ由来の配列)と一致するファージがヒットするかを,ゲノムデータベースを用いて解析した.また,ゲノムの能動的変化を学習する教材としてゲノムデータベースが適しているか検討した.

  • 山下 清次, 川村 教一, 鈴木 創
    2018 年33 巻1 号 p. 65-68
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    メラミン粒子を用いた卓上型川の地形モデル実験装置は,河川の蛇行を再現することができる.筆者らはこの実験装置とメラミン粒子や砂を使用することで河岸段丘の形成を再現することが可能なのではないかと考え,メラミン粒子と砂を使用した比較実験を行った.実験の結果,メラミン粒子を使用した方が河岸段丘の形成を再現できる可能性が高いことが明らかとなった.

  • 長南 幸安, 日景 桃夏
    2018 年33 巻1 号 p. 69-72
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    平成29年3月31日に文部科学省では中学校学習指導要領の改訂を行った.この中学校学習指導要領は,平成33年度から全面実施することとなっているが,平成30年度から一部移行措置として先行実施することとしている.特に中学校理科においては平成20年度改訂の現行の学習指導要領と比較すると,いわゆる「ゆとり教育」からの脱却を目指した大幅な変更が行われた現行の改訂時とは異なり,現行版を引き継ぎながら改訂が加えられている.その変更が加えられた学習項目に第3学年第1分野の「化学変化とイオン」が挙げられる.特に「化学変化と電池」では,従来のボルタ電池型ではなく,ダニエル電池型を実験として取り上げることが明記された.この研究では,この新たに中学校理科の実験で取り上げられることになったダニエル電池を中学校でどのように取り扱うべきかを考案し,実際の中学校で授業を行ったのでその詳細を紹介する.

  • 下吉 美香
    2018 年33 巻1 号 p. 73-76
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,次期学習指導要領において示された小学校理科教育の方向性を踏まえ,その実現に向けて如何に取り組むべきかについて,具体的指針を明らかにしようと考えた.各教科の特性に応じた「資質・能力」の育成,「見方・考え方」を働かせた主体的・対話的で深い学びの実現に向かうためには,教師の子どもの学びを見取る目と,深い学びを創り出す単元デザイン力,カリキュラム・マネジメント力が必要となってくる.特に,理科の学習においては,問題解決の過程を丁寧に展開していく中で,科学的な深い学びを実現していくことが求められている.本報告においては,第5学年単元「明日の天気を予報して生活にいかそう」における子どもたちの学びをもとに,現時点での知見を示す.

  • 小学校教員養成課程大学生を対象として
    小林 拡, 川村 教一
    2018 年33 巻1 号 p. 77-80
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    小学校4年「水の温まり方」について教師が指導するためには,加熱過程の水の動きを対流の視点から理解している必要がある.「水の温まり方」を理解するには,対流現象の観察結果の考察を,学習グループでの話し合いを通じて改善することが有効であると考える.そこで,本研究では,小学校教員養成課程大学生を対象に,考察の場面において話し合い活動を設定した実験群と,個人でのみ考察する統制群に分けて理科教育指導法の授業を実践し,実践前の認識と授業でのワークシートの記入状況を比較した.その結果,実験群は正答者数の割合が増えたが,統制群は変化が見られなかった.したがって,「水の温まり方」について話し合い活動を取り入れた授業は,取り入れていない授業よりも有効であることが分かった.

  • ―小学校第4学年 単元「ものの温まり方」の実践を通して―
    小牧 啓介, 中山 迅
    2018 年33 巻1 号 p. 81-84
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    日常の文脈で見つけた疑問をもとに科学的な「問い」を立て,科学的問題解決によって得られた結論を用いてもとの日常の文脈での疑問を説明するという「文脈的な疑問と科学的な問題解決の入れ子構造の理科授業」の実践を試みた.特に授業デザインとして5つのポイントを設定し,実践・評価した結果,子供は理科の見方・考え方を働かせながら自ら問題を見つけ,自然のきまりを使って日常の現象を科学的に説明するという姿が見られ,一つの授業モデルとして機能することを実証できた.

  • 伊藤 昭人, 田口 瑞穂, 川村 教一
    2018 年33 巻1 号 p. 85-88
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,古生物に対する児童の関心を高めるために実物の化石を用いた授業実践を行い,その効果を検証した.授業実践は,児童が古生物に対して抱いた疑問を解決するという形で行った.検証方法は,授業の前後における児童が古生物に対して抱いた疑問の数の変化と,その内容の変容である.疑問の数については,授業の前後において,増えた児童よりも減った児童の方が多かった.疑問の内容については変容が見られ,古生物の生活の様子や体のつくりについて,具体的な疑問が授業後に増えたことが認められた.これらにより,この授業実践には一定の効果が見られたということが分かった.

  • 鈴木 創, 田口 瑞穂, 川村 教一
    2018 年33 巻1 号 p. 89-92
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    平成29年3月に告示された新学習指導要領において,小学校理科や社会に自然災害に関する学習内容が追加された.そこで筆者らは新学習指導要領に基づいた学習の展開に先立ち,小学校5年生が持つ自然災害の認識について調査した.学習前であるにも関わらず,多くの児童が自然災害について認識していたが,対象児童の通う学校が立地している県において発生件数の多い風水害や雪害に関する認識は十分であるとは言えなかった.

  • ―2010年11月25日の事例解析―
    菱 満貴, 名越 利幸
    2018 年33 巻1 号 p. 93-96
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    岩手県雫石町は晩春と晩秋に濃霧に覆われる.その構造や発生原因を解明するために,本研究室,石森・名越(2016)により霧の観測が行われ,霧層内の温度変化と逆転層高度が明らかになった.小川・名越(2017)により,その観測に基づいた数値シミュレーションが行われ,雫石と盛岡に霧が存在する場合における霧の構造や発生原因が明らかにされた.本研究では,雫石盆地にのみ霧が存在する場合について数値シミュレーションを行い,より雫石の霧の構造や発生原因の解明に迫ることとした.様々の計算設定により,霧を再現することはできなかったが,風の様子や気温変化,逆転層についての再現性を確認することができた.今後,計算設定をより工夫し霧の再現,その構造と発生原因の解明を目指したい.

  • 田中 博教, 名越 利幸
    2018 年33 巻1 号 p. 97-100
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    岩手県の薮川は1945年に氷点下35℃,1940年には氷点下31.4℃を記録した本州最寒の地域である.2018年2月に氷点下25.4℃を記録している.薮川における低温発生のメカニズムはまだ解明されていない.本研究では,薮川を含む東西に120km,南北に90kmの領域について,鉛直下層の格子間隔を変更し,気温や風速の日変化について再現を行った.薮川のような山に囲まれた地形では,標高1000mくらいまで,鉛直層の格子間隔を細かく設定しなければならないことが確認できた.また,近隣の盛岡において現実と近い再現を行うことができた.

  • ~岩手種市の沿岸部の事例~
    上野 美咲, 名越 利幸
    2018 年33 巻1 号 p. 101-104
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,岩手種市におけるヤマセを,ライブカメラと自動気象観測装置を使用して実際に撮影し,映像と気象データを比較しながら,ヤマセの発生頻度やヤマセが発生したと判断できる条件について考察していく.2018年6月の観測の結果,ヤマセが発生していると判断できる条件は「気温が平均気温より低く,風向が南南東~南南西,湿度が80%以上」であると推測される.

  • 教員養成課程大学生の調査結果から
    中田 咲紀, 川村 教一
    2018 年33 巻1 号 p. 105-108
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,月の位相変化の認識について,性別によって違いは生じているのかを調査することを目的とした.教員養成課程大学生を対象に,月の位相変化の認識に関するアンケート調査(A:月の満ち欠けを問うもの,B:月食について問うもの,C:宇宙から見たときの月の陰やD:地球から見たときの月の陰を問うもの,E:月の観察やモデル実験の経験の有無を問うもの)を行った.正答者数の割合の差異を男女間で分析した結果,いずれの調査項目においても男女間に有意差は見られなかった.

  • ―仮説設定を中心とした調査結果をもとに―
    仁藤 和弘, 今村 哲史
    2018 年33 巻1 号 p. 109-114
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,理科における中学生の科学的探究に関する実態を明らかにするために,意識調査を行った.その結果,生徒は問題を解決する過程の中で「予想や仮説を立てる」や「実験を行う」段階と比べて,「結果を見通して,実験方法を立案する」段階をそれほど重要視していないことが分かった.また,理科授業において予想や仮説を立てることを「意識したことがない」と回答した生徒が3分の1程度おり,科学的探究の過程を意識した授業づくりを行う上での課題であることが明らかになった.

  • 教職専門科目「ICTを活用した理数教育」の実践を通して
    中村 好則
    2018 年33 巻1 号 p. 115-120
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    新しい学習指導要領が告示され,そこでは算数・数学の指導においてもICTの効果的な活用の必要性が述べられ,これからの教員にはICTを活用して効果的に指導できる能力が求められる.しかし,算数・数学科の教員にとって,ICTを活用して指導できる能力は,必ずしも十分ではなく,その育成は喫緊の課題である.教員養成においては,各教科の指導法(情報機器及び教材の活用を含む)で,ICT活用についても扱うことになってはいるものの,授業時数を考えると,ICT活用について十分に扱うことは難しいのが現状である.岩手大学教育学部では,2017年度より理数教育コースを新設し,教職専門科目として「ICTを活用した理数教育」を必履修とした.そこで,本研究では「ICTを活用した理数教育(数学サブコース)」の授業内容と質問紙調査を分析し,ICTを活用して算数・数学を指導できる能力を育成するためのカリキュラムを開発するための基礎的な資料を得る.

  • ―「総合的な学習の時間」「キャリア教育」の登場との関わり―
    岡田 努
    2018 年33 巻1 号 p. 121-124
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    福島県の某市(以降a市)の中学校教育研究会特別活動部会と市教委が主催する生徒研究発表会(1960(昭和35)年~2018年度の59回)の発表件数と内容を調査したところ,近年,理科の研究内容が激減している実態が明らかとなった。当地域だけの特徴と言えなくもないが,その原因を学習指導要領の変遷や教育施策とりわけ「総合的な学習の時間」や「キャリア教育」の登場の影響があったこと,さらに福島県の原発事故後の放射線教育の実施による教員の多忙化などにあることを考察した.

  • ~寒冷前線・海陸風について~
    大町 慎, 名越 利幸
    2018 年33 巻1 号 p. 125-128
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,気象数値実験ソフト「Web-CReSS for Education」の完成を目指す.本ソフトで計算可能な5つの気象現象のうち,「寒冷前線」と「海陸風」について調査する.「寒冷前線」は計算時間が短く,1単位時間の授業で計算設定から結果の考察までを実施できる.「海陸風」は,計算時間が長いため,2単位時間を必要とするが,計算設定を変えることで感度実験が可能である.

  • 佐々木 恒, 名越 利幸
    2018 年33 巻1 号 p. 129-132
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2018/11/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究ではVR(Virtual Reality)を用いて,通常の教育現場では実施が困難である夜間の観察や,学校から遠い場所で行う観察等を疑似的に体験することができる教材の開発を行う。今回は特に「夜間の雲」について全天球カメラ「THETA」を用いて観測・撮影を行い,授業でどのように用いることが可能であるのかを検討した。

feedback
Top