筆者自身の体験をもとに, 物理教育とパソコンの関係を考察する。電卓時代・ミニコン時代・パソコン時代と機器は急速な進歩をつづけてきたけれど, 物理教育との関わりは, 電卓時代の域を出ていない。「単振動」・「惑星の運動」の計算にとどまってしまう。現行の物理教科書は数式の展開を中心に話を進めているからである。プログラムを中心に展開する物理を創作することは容易ではない。そこに, 物理教育へのパソコン利用の問題点がある。パソコンそのものの実習は, 初期には学生の強い関心を集め得た。現在では, めまぐるしい機種の交代や, 既修者と未習者の対立等, さまざまなかげりが現れている。その一方では, 辞書・教科書・参考書・公式集・ノート・電卓等, 身近な情報源の活用が十分には教えられていない。情報学教育を考えるのならば, まずそうした素朴な情報源の活用をはかる必要があるのではないであろうか。
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