本研究は,数学科教師の専門性の一端について,教科内容知(SMK)に焦点をあてて検討するものである。数学科教師の専門性をどのように捉えるかについての着眼点は多様であるが,ここでは Shulman の PCK 概念(授業を前提とした教材の知識)や,Ball らの SMK(数学指導に必要な教科内容知)に着目して検討する必要があると考えた。本研究では,文献解釈を通して,教科内容知(SMK)の下位カテゴリーに含まれる SCK(“教える”という文脈に固有の内容知)とCCK(“教える”という文脈に依存しない内容知)に着目し,その具体例として中学校の「直線のグラフ」(定数関数)について検討した。その結果,教科内容知(SMK)には,指導内容を多面的に捉える知識の重要性と,SCK と CCK かの線引きの困難性も存在していることもわかった。
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