日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
30 巻, 1 号
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表紙・目次
発表
  • -雲のフォトコンテストを通じて-
    田口 瑞穂
    2015 年30 巻1 号 p. 1-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本 研究では,中学校や高等学校の理科教員を目指す大学生の気象現象に対する興味・関心を高める方法として,雲のフォトコンテストを行うことが有効であるかどうかを検証した。その結果,次のことが明らかになった。1.以前よりも雲を見る,という学生が増えた。2.作品を提出した学生は,全員が以前よりも雲を見るようになった。3.十種雲形について,以前よりも多く書くことができるようになった。4.第1回よりも第2回の応募作品の方が,理科的な視点から撮影されたものが多かった。
  • -高校「物理基礎」において-
    鶴岡 森昭
    2015 年30 巻1 号 p. 5-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    2015 年 3 月上旬、高校「物理基礎」最後の 2 時間を使って放射線に関する授業を実施した。この教材は 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災に伴って起った福島第一原子力発電所事故による放射線漏れの緊急事態に直面し、当時の勤務高校の物理授業で自主編成し実施したものを基にしている。放射線の単位、放射線の所在、放射線の識別、放射線の利用、放射線の被害と防護に関する理解を促すことをねらいとした。本論考ではその実施前と実施後の調査結果も紹介する。
  • エネルギー領域を中心に
    荒谷 航平, 高橋 一将
    2015 年30 巻1 号 p. 9-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
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    本研究の目的は,米国の“A Framework for K-12 Science Education”において学問上中心となる考えがどのように構造化され,それが“Next Generation Science Standards”においてどのように具体化されているのかを,エネルギー領域に着目して明らかにすることである。Frameworkでは,特定の基準に照らして,科学と工学において核となり,K-12 学年を通して高度化し,複雑化する考えが中心となる考えとして選択された。そして,それらに関連する構成要素となる考えが設定された。また,構成要素となる考えごとに,K-12 学年のラーニング・プログレッションズを考慮して,各学年帯で修得すべき理解が示された。物理科学分野の中心となる考えである「3:エネルギー」の構成要素となる考え「D:化学的プロセスと日常生活におけるエネルギー」に着目してNGSS を分析すると,Framework で示された修得すべき理解は,内容と学年帯を通した配列も同じままに Foundation Box で扱われていた。また,それらの修得すべき理解は物理科学の分野だけでなく他の分野とも関連づけて扱われていた。
  • 松本 浩幸
    2015 年30 巻1 号 p. 13-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
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    現代の様々な社会背景から,自己決定の重要性が多く問われる。心理学における自己決定研究は隆盛である。本邦の科学教育における授業の歴史の中では,優れた実践も行われたが広まるに至らなかった。心理学における調査研究において自己決定に関わると考えられる17本の論文の設問内容を,分析した。多くの動機づけの内容は調査されているが,理科授業における自己決定を詳細に調査したものはなかった。調査を参考に,理科授業における尺度作成の基礎として,設問を作成し,予備調査を行った。自己決定に関わり,有能感,自律性,関係性の3因子が抽出された。動機づけスタイルに関わり,内発的動機づけスタイルなど4因子が抽出された。また,調査項目間の相関が明らかになった。
  • 岩本 和馬, 太刀川 祥平
    2015 年30 巻1 号 p. 17-20
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
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    本研究は,数学的な見方や考え方を生徒が自ら高めるための授業について,「思いの表出」から検討するものである。筆者らはこれまでに,先行研究を踏まえて「数学的な見方や考え方が培われる過程」について検討し,その過程の中で生徒が抱く「思い」を表出させ,その「思い」と「数学的な見方や考え方が培われる過程」について考察してきた。本稿は,「思いの表出」に着目して開発したワークシートの生徒の記述(特に「つぶやき欄」)の分析を通して,「思いの表出」における生徒の変容などについて検討するものである。その結果,「思いの表出」に着目することの有効性として,生徒の内面にあるつまずき等を明確化し,生徒が自ら「つまずき」の原因などを解消しようという意欲の向上などが挙げられたが,「思いの表出」が十分にできない生徒に対しての個に応じた指導や,数学的な見方や考え方を培うための適切な評価などの検討が今後の課題として明らかになった。
  • 谷口 千佳, 太刀川 祥平, 久保 良宏
    2015 年30 巻1 号 p. 21-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿は,「批判的思考」の基礎的研究を踏まえ,これを数学指導で具体化した教材を用いた授業実践の分析から,生徒の変容について検討するものである。「批判的思考」は,問題の明確化,事実と価値の区別,正当な主張か否かの区別,一般化への注意,感情的な推論の排除,他の解釈の発見,論理的思考,先入観の排除などが特徴として考えられる。これを踏まえた授業実践から,生徒は他者の考えに目を向け,これによって考えが変容するが,一方で,その考えは,数学の成績が高い生徒の発言に影響されることなどがわかった。ここでは,対話の有効性も認められるものの,先入観が先行する傾向があるとも捉えられた。
  • 田辺 修司, 若原 慶裕, 久保 良宏
    2015 年30 巻1 号 p. 25-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は,数学と現実世界との関係に着目した「社会的文脈」に焦点をあてた数学指導について検討するものである。これは「数学的モデル化」に関係しており,数学教育研究の重要な着眼点であるが,筆者らは,「算数・数学と社会・文化のつながり」研究(長崎,2001)から多くの示唆が得られるのではないかと考えた。この研究で開発された教材を「算数・数学と社会をつなげる力」や「教材の問題場面」から検討したところ,このような教材は生徒の身のまわりの事象から開発できる一方で,自然現象やスポーツといった科学や社会に目を向けることも重要であることがわかった。また,このような題材は,新聞記事などを参考につくられているものも多くあり,教材開発では,幅広い視点から検討することが大切であると考えられる。
  • ―直線のグラフに焦点をあてて―
    太刀川 祥平
    2015 年30 巻1 号 p. 31-34
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は,数学科教師の専門性の一端について,教科内容知(SMK)に焦点をあてて検討するものである。数学科教師の専門性をどのように捉えるかについての着眼点は多様であるが,ここでは Shulman の PCK 概念(授業を前提とした教材の知識)や,Ball らの SMK(数学指導に必要な教科内容知)に着目して検討する必要があると考えた。本研究では,文献解釈を通して,教科内容知(SMK)の下位カテゴリーに含まれる SCK(“教える”という文脈に固有の内容知)とCCK(“教える”という文脈に依存しない内容知)に着目し,その具体例として中学校の「直線のグラフ」(定数関数)について検討した。その結果,教科内容知(SMK)には,指導内容を多面的に捉える知識の重要性と,SCK と CCK かの線引きの困難性も存在していることもわかった。
  • 彼らのストーリーの分析を通して
    ラッシラ エルッキ, 池田 文人
    2015 年30 巻1 号 p. 35-40
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    人間関係やそれにまつわる感情が教員の仕事で重要な役割を果たしていることを前提にし、本研究では日本の若手の理科教員の仕事における感情的な側面に焦点を当てる。二人の若手教員の半構造的なインタビューデータを用いたナラティブ分析(Spector-Mersel,2010)を行った結果として教員の仕事での感情的な側面が 本人の教員としての自己理解および学校の働く環境としての状態に強く関係があることを明らかにした。「なぜ(理科)の教員として勤めているか」という問いにどこまで答えを出せるかによって教員の感情的な経験が異なっていた。感情的な側面と働く環境の関係は、協力関係のあり方による感情的な反応、またその環境でどれほど感情的な支援を得られるかという二点に関係した。
  • ~対戦型カードバトルを基に~
    山田 貴人, 安藤 秀俊
    2015 年30 巻1 号 p. 41-44
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    理科と数学を関連付ける代表的な例として「単位」をあげ,「単位」に着目した理科と数学に関する意識について調査したところ,多くの生徒が問題文から式を作る 立式 ことに苦手意識をもっており,その着眼点に単位を意識できていないことがわかった。同時に,単位の意味を学ぶことに興味を示し,その活用性に期待感を持っている生徒が多かった。このことから,単位の組み立て方を短時間に反復して思考することができる教材(単位カード) を開発し教育的効果を検証している。中学生に実践したところ,活動中の生徒達からは思考を重ね新たな単位の組み立て方に気付く様子が多く見られた。
  • 算数・数学の実態
    石川 真尚
    2015 年30 巻1 号 p. 45-48
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    いわゆる学力底辺校と位置づけられる高校の生徒は,小学校の学習内容の習得が十分でない場合が多い。このことは,上位概念の学習に大きな障害となり,中学校や高校での学習内容の理解の妨げになっている。このような困難を抱える北海道の公立高校1年生を対象に,小学校の算数について理解度を測り,算数数学への自己の学力についての認識を調査したところ,小学校の計算のできない生徒ほど,算数数学ができないことの自己認識は遅い傾向があった。このことから学力低位の生徒に対して「できないこと」の自己認識を促して学習動機につなげることが必要であることがわかった。
  • 汪 宇懐, 池田 文人
    2015 年30 巻1 号 p. 49-52
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は日本と中国の小学校算数の教科書における除法概念の捉え方の相違を、乗法との挿絵の使われ方を比較することにより明らかした.数学概念は抽象的であり,小学校低学年であればあるほど,他の身近で具体的な概念を使って教える必要があり、挿絵はこうした身近で具体的な概念を表したものである.挿絵の使われ方の違いは数学概念の捉え方の違いであり,日中双方の欠けている数学概念の捉え方が明らかになる.挿絵に描かれている事物の種類と出現回数を調べた結果,中国では数学的な応用や活用を重視し、数学的能力を求め,現実生活と関連が強い .日本では除法における基本的な数学的概念を重視し、数学的活動が多く、子ども数学について学習意欲を引き出すという点は日本の良いところといえよう.
  • —児童のワーキングメモリに着目したエラー特性と自己効力の関係性の検討—
    原田 勇希, 鈴木 誠
    2015 年30 巻1 号 p. 53-56
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    理科の学習では言語的な処理だけではなく,児童に視覚的イメージを要求する。そのため,子どもの認知特性によって異なるつまずき(エラー)が生じうると考えられる。本研究では近年注目を集めるワーキングメモリに着目して,児童の言語性—視覚性のワーキングメモリが理科授業で生じうる各種エラーに影響を与えているという仮説のもと,共分散構造分析によってその因果関係を確認した。その結果,モデルは高い適合度を示し,また相対的に,言語性ワーキングメモリは「言語的処理」のエラー特性を,視覚性ワーキングメモリは「視覚的イメージ」,「注意の制御」のエラー特性により強く影響を与えていることが示された。また,WM は理科の自己効力の値と有意な相関が認められ,WM 容量と学ぶ意欲の間に関連があることが示された。
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