日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
19 巻, 4 号
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表紙・目次
【研究発表】
  • 久田 隆基, 萱野 貴広, 岡田 朗, 成瀬 英明, 服部 圭吾
    原稿種別: 本文
    2005 年 19 巻 4 号 p. 1-6
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では、子どもたちが自分の考えを豊かに発想し表現していく中で, 児童生徒の科学的思考力や言語能力を育成するための理科授業実施プログラムの開発をめざした。その一事例として、本報告では小学校での授業実践の結果について述べる。目に見えない空気や二酸化炭素を題材として実施した授業である。具体的には、空気のイメージについて子どもたちに想像力を発揮してもらい、児童たちによるディスカッション活動や追究活動で進める授業を実施することにより、子どもたちの科学的思考が駆使されるであろうと仮定して、授業実践を行った。実践を通して、子どもたちの経験や現有の知識に基づく予想や発想を重視すること、自分の考えを表明すること、班や学級全員でのディスカッション、実験観察による検証、子ども自らによる結果の評価などの活動が取り入れられることによって、子どもたちは授業におもしろさを感じ、科学的思考が働かせられると提言した。
  • 平田 昭雄, 上條 廣大
    原稿種別: 本文
    2005 年 19 巻 4 号 p. 7-12
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    一般にバードウォッチングといわれる野鳥の生態観察は, 近年, 自然保護や環境問題に対する市民の意識や関心の高まりと相まって, これに魅力を感じ, これを趣味にする人々, いわゆるバードウォッチャーの人口をとりわけ大都市近郊地域を中心に増加させてきた.他方で, 野鳥, 特に身近な野鳥の生態は, 現行の小学校学習指導要領によって示される今日の小学校理科教育の目標や内容他からしても, さらには社会教育や生涯学習の視点からしても, きわめて優れた教材性を備えた理科学習の題材と判断される.反面, 身近な野鳥の生態は, 児童用理科教科書という単一なメディアのみの使用による従来の大方の理科学習を想定した場合, たとえ実物の直接的な観察が十分に保障されたにせよ, その決定的に効果的な指導法を見出すことは概して困難といえる.そこで, これまでは単一, 単発的に用いられることがほとんどであった多様なメディアベースの野鳥に関する学習材を統合, 結合し, 指導に当たる教師にも, 学習者である子ども達にも使い勝手のよい統合型のデジタル学習材として再構成し提案する.
  • 稲垣 成哲, 竹中 真希子, 黒田 秀子, 出口 明子, 大久保 正彦
    原稿種別: 本文
    2005 年 19 巻 4 号 p. 13-16
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では, 小学校1年生を対象にして, ケータイを利用した2つの遠隔授業を実施したのでその概要を報告する.まず一つ目の遠隔授業では, 国際理解学習の一環として, オーストラリアのメルボルンと教室をケータイの写真メールで結んだ.二つ目の遠隔授業は, 生活科において保護者との交流を目的としたケータイによるテレビ電話機能を利用したものであった.学習者の主観的評価によれば, いずれの授業も興味・関心の高いものであった.実施上の問題点としては, テレビ電話を利用した授業において, 電波状況による画質劣化が課題となった.
  • 長濱 元
    原稿種別: 本文
    2005 年 19 巻 4 号 p. 17-22
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    21世紀の国際社会が直面している大きな課題として、「環境問題」と「開発問題」がある。これらの問題はいずれも産業革命以来の科学技術と産業の発達がもたらした問題であり、その意味で「科学教育」のあり方はそれらの問題の解決のために重要な意味を持っている。なぜなら、未来を担う子どもたちが科学をどのように理解し、それをどのように利用していくかは、人類の未来を左右するからである。本論は、筆者の研究分野のひとつである「科学技術と社会(STS)」を下敷きにして、「科学教育」、「環境教育」および「開発教育」の3つの教育分野をどのように連結していくかということに関するひとつの試論である。「開発教育」は日本ではまだ「環境教育」ほどには普及していないが、今後のグローバルな世界の動向の中に占める日本の国際的役割を考えていくときに配慮していくべき教育分野として、重要な内容を持っていると考えられる。
  • 中山 迅, 古家 明子, 飯干 さや香, 山田 美由紀, 及川 朋実
    原稿種別: 本文
    2005 年 19 巻 4 号 p. 23-28
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    学習者が, 人の体のつくりやしくみに関する知識を生命に関する意識に結びつけることができるように支援するために, 理科の授業に心肺蘇生実習を導入することが有効ではないかと考えた。そこで, 小学校教員免許向けの理科の教職科目の授業で心肺蘇生実習を実施した。実施と平行して単語連想調査を行ったところ, 「呼吸」「鼓動」などといった心臓や肺のはたらきに関する言葉を「生命」と結びつける傾向が生じることが分かった。
  • 下出 祥子, 小川 正賢
    原稿種別: 本文
    2005 年 19 巻 4 号 p. 29-34
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    ROSE(The Relevance of Science Education)とはオスロ大学を中心とした国際比較調査プロジェクトであり、各国で実施されている科学学習と子どもたちの実生活との関連性に関する情報を収集して比較することを目的としている。本研究では、その日本データを用いて、生徒を理科好嫌度に関して三つの群([理科好き]群、[理科嫌い]群、[隠れ理科好き]群)に分類し、環境問題に対する意識と科学技術に対する意識に関して、3群の回答にどのような違いがあるのか分析を行った。その結果、環境問題に対する意識には3群間に大きな差はみられず、理科の好嫌度とは関係が少ないということがわかった。科学技術に対しては、[理科嫌い]群の生徒は否定的・批判的意見を持つことが多く、[理科好き]群の生徒は賛成的・肯定的意見を持つことが多かった。
  • 郡司 賀透
    原稿種別: 本文
    2005 年 19 巻 4 号 p. 35-38
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    科学カリキュラムの政治性を分析する基礎的研究の一つとして, 1980年代以降の欧米における科学カリキュラムの分析の枠組みにみられる権力観を分類して, 科学カリキュラム変化の要因の捉えかたを探った。その結果, 欧米における科学カリキュラム論者が, 行動主義的, 構造主義的, ポスト構造主義的な権力観に基づいて, 科学カリキュラムを分析していることが明らかになった。また, 科学カリキュラム変化の要因として行為主体の利害や意図のみならずディスコースにも焦点化しつつあることが明らかになった。
  • 出口 明子, 稲垣 成哲, 山口 悦司, 舟生 日出男, 竹下 裕子
    原稿種別: 本文
    2005 年 19 巻 4 号 p. 39-44
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    筆者らは, 再構成型コンセプトマップ作成ソフトウェアの開発と機能拡張に取り組んできている.本研究では, 再生プロセスのブックマーク機能について, その学習支援に関する有効性を実践的に検証するため, 本ソフトウェアを導入した授業をデザインし, ブックマーク機能利用場面の相互行為分析を行った.分析結果を考察することで, ブックマーク機能は, 授業の中で子どもたちが自らの思考過程のうち焦点をあてたいポイントにアクセスすること, 自らの思考過程を自覚しつつ, それを他者に説明すること, 他者の思考過程を理解することを支援するのに有効な機能であると示唆された.
  • 久保田 英慈
    原稿種別: 本文
    2005 年 19 巻 4 号 p. 45-50
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    理科授業において、生徒は個々の経験、知識に応じ、同じ授業を共有しながらも学びのスタイルが多様である。われわれ教師は授業実践経験を積み上げることにより授業が何となくうまくなると考えるるのではなく、生徒の実態に合わせ、教材や議論をその場に応じた形で取り入れ、生徒の科学概念形成を計っていく必要がある。こういった授業をめざす場合、生徒がいったいどのような概念を構成しているのか、教師はできるだけ個々のデータを毎日の授業に支障がない形で把握していく必要がある。この問題点解決する方法として「概念地図法(コンセプトマップ)」と「運勢ライン法」を用いることを提案する。
  • 熊野 善介
    原稿種別: 本文
    2005 年 19 巻 4 号 p. 51-54
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    「理科教師が継続して主体的に授業を検討・改善するための国際連携研究-e-learningを基盤とした日本・カナダ・アメリカ・インドネシアの共同研究-」(基盤研究B(1)課題番号16300251、研究代表者、熊野善介)の研究の一貫として、熊野らがアメリカ、カナダを訪れ、理数科教師教育のためにe-learningシステムがどのように利用されているかについて現状をまとめ、インタビューや文献研究から得られた課題について明らかにした。基本的に巨大なe-learningシステムはかなりの大学で導入されているが、本研究のような理数科現職教育のための、小規模なe-learningシステムの構築に関する実践研究は稀であることが分かった。その一方で、大変完成されたe-learningと講義を混合させた教師教育の存在も理解できた。また、教師用の授業支援のためのギガデータバンクの存在も発見できたことは大きな成果である。
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