日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
37 巻, 4 号
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表紙・目次
発表
  • ―振り返りカードの多面的な分析を通して―
    中尾 真也
    2022 年 37 巻 4 号 p. 1-6
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿の目的は,開発した振り返りカード「LEADカード」の項目のうち「Example」と「Learning」を合わせて多面的に読み解くことによって,中尾(2022)で取り上げた学習者の思考についてより質的に把握することである.そのために,構成主義的グラウンテッド・セオリー法を援用しながら「Example」と「Learning」を合わせて多面的に読み解き,学習者の思考の質的な把握を試みた.また,児童の記述を手掛かりに「Example」と「Learning」を合わせて多面的に読み解くことの効果について考察した.

     その結果,複合図形の立体の体積を求める際,児童は既習の図形に帰着して考えたり,複合図形を角柱とみなして考えたりすることが分かった.加えて,求積の方法は複数あるため最適な方法を選択する必要性にも気づいている姿を掴み取ることができた.また,「Example」と「Learning」を合わせて多面的に読み解くことは,学習者の思考をより質的に把握できたり,教師の指導に活用することで指導と評価の一体化の実現に繋げられたりすることができるという示唆を得た.

  • ―インフォーマルな表現を起点とした学習に焦点を当てて―
    土井 孝文
    2022 年 37 巻 4 号 p. 7-12
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,データの特徴をドットプロットを用いて考える際に,学習者なりのインフォーマルな表現が授業の中でどのように表出し,どのように変容していったかを幾つかの場面から捉える.それらの表現の変容及び,学習者間の相互行為による数学的対象への着目の様子を分析し,今後の学習活動への示唆を得ることを目的とした.そのために,第6学年「データの活用」領域,「資料の調べ方」の単元の導入である第1時,第2時における実際の授業を,清水・山田(2015)の「インフォーマルな表現を捉えるための枠組み」を用いて分析を行った.その結果,学習者によるインフォーマルな表現の表出が契機となって,新たに学ぼうとする数学的対象が顕在化する3つの特徴的な局面を同定することができた.今後の課題としては,分析の対象を単元全体に広げ,数学的対象が顕在化する局面をさらに精緻化する必要があることがわかった.

  • 新井 拓夢
    2022 年 37 巻 4 号 p. 13-18
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,小学校第2学年「乗法九九」の学習で,パターンブロックを活用した具体的な操作を伴う数学的活動を含む授業を行い,パターンブロックを活用することの数学的価値について,授業の分析・考察を通して示唆を得ることでる.具体的には,パターンブロックを活用した平面図形の敷き詰め教材(以後「タスクカード」)に敷き詰めたパターンブロックの数を数えたり,台形,ひし形,正三角形を使って六角形を作成したりすることで,乗法九九の概念形成を目指す授業を試みた.パターンブロックの操作による数学的活動は,児童の知的好奇心を高め,楽しみながら取り組むことができる.さらに,六角形の作成による2の段,3の段の構成,また,1の段,2の段,3の段の和として6の段が構成できることに気付くなど,九九の構成や九九表の仕組みについて主体的に学習に取り組む姿から,パターンブロックを活用することの価値について示唆を得ると共に,今後の課題を明らかにした.

  • ―ダイヤグラムの教材化を通して―
    安藤 優希
    2022 年 37 巻 4 号 p. 19-22
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,数学教育において日常事象の数学的モデル化を位置付けることの有効性を指摘し,学習者の数学的モデリング能力を高める授業づくりについて示唆を得ることである.本稿では,数学的モデリング能力を「数学的モデリング過程の各相で必要とされる能力」と規定した.また,数学的モデリング過程において「定式化」「解釈・評価」の相が重要であると考え,数学的モデリング能力についても事象を数学的モデルに変換したり数学的結論を現実の世界に戻して解釈したりする能力に注目して捉える.本研究における教材化は,都留文科大学の最寄り路線である富士急行線のダイヤグラムを素材として行った.問題解決過程は,実データをもとにモデルをダイヤグラムに表現し,ダイヤグラムの機能と照らし合わせながら現実的な妥当性を検証することを想定している.筆者自ら現実に即してモデルの修正を試み,より精緻な教材化を図ることを通して,本教材が算数・数学科のどの領域・単元に位置付けられるか明らかにし,授業実践に繋げることが今後の課題である.

  • 田中 達也, 内海 紗恵, 大西 鮎美, 寺田 努
    2022 年 37 巻 4 号 p. 23-28
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,小学校低学年児童を対象とした児童主体の行動選択とICT活用型事後学習を含む新たな避難訓練プログラムを開発することである。開発されたプログラムは,危険とその対処法を踏まえた事前学習,及び,児童が学んだ災害特性に応じて避難経路や避難行動を主体的に選択する避難訓練の実施,さらに避難行動時の児童の発話や行動についてICT機器を用いて記録し,それらを用いたリフレクションを行う事後学習である。国立大学附属小学校第1学年児童31名を対象に,開発されたプログラムを実施した結果,次の3点が示唆された。(1)児童が,事前学習で学んだ災害特性を,避難経路選択や,避難行動選択の判断指標として活用していること,(2)児童が,自身の避難経路選択や避難行動選択の適切性を客観的に判断することができること,(3)児童が,プログラムの実施によって学んだ災害特性への知識を,教師主導の避難訓練においても適応していること。

  • 飯田 和也, 久保田 善彦
    2022 年 37 巻 4 号 p. 29-34
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    大規模な風水害の発生に伴い,都市部でも浸水被害が懸念されている.各自治体では水害ハザードマップが準備されているが,その読み取りは困難なことが示唆されている.そこで,本研究では,都市部の地形図および水害ハザードマップを3DCG化し,オフラインでもタブレット端末(Apple社製iPad)でAR表示できる手法を開発した.さらに,開発した教材を使用し,中学生を対象とした授業実践を行った.授業実践の結果から,平面の地形図に比べ,立体地形図では浸水予測地点の精度が向上することがわかった.また,避難経路を考える上で,立体水害ハザードマップを参照することにより,浸水範囲を判断材料とする生徒が増えることが確認された.さらに,生徒の教材に対する評価から,立体水害ハザードマップは,地形と浸水地点の関係を把握しやすいことが示唆された.このような特徴は,地形図を学習する前の小学生にとって特に有効な可能性がある.

  • 〜学生と教員へのニーズ分析から〜
    山下 美朋
    2022 年 37 巻 4 号 p. 35-40
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    グローバルな研究環境で活躍する人材を育てる大学や大学院において, 学生が英語で研究を発信する能力を養う教育は欠かせない. 立命館大学生命科学部では, 1回生から3回生までは, 「プロジェクト発信型英語プログラム」を受講し, 研究プロジェクトの成果を英語で発信し, 大学院では一部の学生が, 「科学技術英語表現」で研究の要旨を英語で執筆し, 口頭発表を行っている. これらの授業の最大の特徴は, 科学の専門教員と英語教員が協力して授業を運営していることだが, 受講生の研究分野が多岐に渡る大学院授業の教育内容の適切さと, 双方の教員の関わり方は, まだ明らかではなかった. そのため, 本稿の筆者はニーズ分析の手法を用い, 2022年度の大学院授業を受講した学生と担当教員に対してアンケートとインタビューを実施した. その結果, 生命科学部の学生に未だ欠けている知識や能力が浮かび上がり, 大学院授業での専門教員, 英語教員それぞれの役割が明確になった. 特に, 異分野の教員にも理解できるように平易な英語で研究を説明する訓練が必須であり, 今後の授業の課題となった.

  • ―実用性と重要性の視点から―
    西内 舞, 小路 美和, 川崎 弘作
    2022 年 37 巻 4 号 p. 41-44
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,学習者の理科を学ぶ有用性の認識としての「実用性」と「重要性」にどのような違いがあるかを明らかにすることを目的とした.そのためにまず,学習者の理科を学ぶ有用性の認識としての「実用性」と「重要性」を測定するために,学習者が理科学習の意義や有用性を実感できる指導法を整理し,12項目の質問を作成した.次に,中学生を対象に,作成した質問紙を用いて調査を行った.その結果,「日常生活と科学の知識」,「科学的能力」,「科学全般に関わる内容」の三つの内容において,「日常生活と科学の知識」が他の内容よりも,有用性としての「実用性」と「重要性」の認識に差が生じやすいことが明らかになった.このことから,「実用性」と「重要性」の認識の違いに着目することは,理科を学ぶ有用性について再考する視点を提供し得ると考えられる.

  • 平山 晃大, 宮崎 駿希, 伊藤 萌香, 澤田 龍, 佐藤 智也, 紙本 裕一
    2022 年 37 巻 4 号 p. 45-50
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    索引は何の意味を持つのだろうか.索引はあくまで教科書の重要な言葉の一覧,それともあくまで理解しやすいように補助的な意味を持って記載されているのかなど,沢山のことが考えられる.本稿では,教科書索引の相違点と類似点について算数・数学科,小・中家庭科,小・中社会科の教科書を題材に分析を行った.索引観点における分析結果から,索引というのは,学習指導要領に基づいて組み込まれており,索引自体が補助的な役割を担っているだけでなく,継次処理・同時処理の傾向を意識して取り扱われているということが明らかとなった.

  • ―第2学年「分数」の事例より―
    下村 早紀, 升谷 有里, 下村 岳人
    2022 年 37 巻 4 号 p. 51-54
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    もとにする大きさに対する見方の醸成は低学年段階から志向するものであり,本稿では,分数の導入時に着目し,もとにする大きさに分割操作を用いる第2学年の分数学習について検討した.もとの大きさを認めていくうえでは,操作を中心に進めていく第2学年の分数単元は重要となる.分割操作をもとに分数が導入される第2学年を対象として,その事例分析を通してもとにする大きさを見いだす際にみられる子どもの様相及び特徴について考察することを目的とした.その結果,折って重ね合わせたり,実際に抜いたり当てはめたりしながらその個数に着目するといったように,具体的操作を伴いながらもとにする大きさを見いだしていた.

  • 木村 優里, 高野 未羽
    2022 年 37 巻 4 号 p. 55-60
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,幼稚園教諭志望の大学生の文理選択から職業選択に至るプロセスを明らかにすることであり,特に保育者が持つ文系観・理系観の影響に注目する.研究方法は,幼稚園教諭志望の大学生を対象に,半構造化インタビューを実施し,M-GTAで分析した.その結果,概念38個,カテゴリー12個,コアカテゴリー2個,結果図1個が生成された.本稿では,特に文系選択に至るプロセスに注目したところ,【(1)迷いのない決断】,【(2)他者との対話】,【(22) 理系のイメージに合わない自分】の各概念を起点とする,3つの経路が確認できた.理系のイメージに合わない自分を見いだし文系選択に至るプロセスは,自身は文系であるという自己認識が,自身のもつ「文系観・理系観」と比較されることで強化され,文系選択に至ったものと解釈でき,幼稚園教諭志望の文系学生に,ある程度共通する「文系観・理系観」が存在し,それが文理選択に影響を及ぼすことが示された.

  • 俣野 源晃, 山口 悦司, 渡辺 桜, 置塩 佳奈
    2022 年 37 巻 4 号 p. 61-64
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,アーギュメントの証拠として利用すべき複数の観察・実験結果を必ずしも証拠として記述できていない「アーギュメント構成における証拠の十分性の問題」について,証拠の十分性に関する認識的理解の観点から事例的に検討することであった.俣野・山口・渡辺・置塩(2022)において報告された小学校理科の単元「太陽と地面の様子」に関する証拠の十分性の認識的理解のタイプに即して,事例となる学習者3名を抽出し,個々の学習者における証拠の十分性の認識的理解,証拠の選択,証拠の記述という3者の関係性を検討したところ,アーギュメント構成における証拠の十分性の問題には証拠の十分性に関する認識的理解が影響していることが示唆された.

  • 菅原 瑞生, 原田 勇希
    2022 年 37 巻 4 号 p. 65-70
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    理科に注目すると,近年では,共感化―システム化(Empathizing – Systemizing)の認知スタイルの個人差が,理科の動機づけの個人差を強く説明することが示されており,注目されている.現行の学習指導要領(文部科学省,2018)の「対話的な学び」では,意見交換や議論が求められているが,児童期から青年期にかかるこどもたちにとって,個人の対人関係の在り方によって,議論したくてもできない可能性が大いに考えられる.分析の結果,EQが高い生徒は,クラスや教師への心理的安全性が高い傾向が見られた.ただし,中学校3年生においてEQが高い生徒は批判的議論を行う傾向が低いことが示された.本来,EQが高いことはこうした学習に利得があると考えられるが,相互批判的な学びの実現には課題があることが示された.

  • 秋山 綱紀, 西岡 圭太, 井手 勇介, 渡辺 秀治, 堀田 英一, 伊藤 充, 高村 松三
    2022 年 37 巻 4 号 p. 71-76
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    遠隔授業において有効性が既に確かめられている即時フィードバックが得られる自動採点形式の授業演習課題を,隔週遠隔をベースとした授業にも導入したところ,引き続き学生からの高評価が得られた.自学自習において単一の解説で理解できなかった場合,学習内容の習得に支障が生じることを懸念して,オンライン教材では複数の教員による解説を運用しており,そのこと自体に否定的な学生は5%以下だった.しかし,この解説の多様性によって混乱したと認識した学生たちは,混乱しなかったという学生たちよりも,期末試験における平均点が低かった(2020年度後学期については有意差も認められた).また,混乱したと認識した学生の割合は,比較的学力が低い基礎クラスの方が比較的学力が高い標準クラスよりも多かった.したがって,対面授業が再開されるようになってから起きた基礎クラス側の成績低下の要因のひとつが,この混乱にあったことが示唆された.

  • ─教授上のねらいとストーリーの構成との対応に着目して─
    志賀 優, 山本 容子
    2022 年 37 巻 4 号 p. 77-82
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の課題は,高校生物の学習内容の説明において活用されるストーリーの構成を類型化し,各類型と生物学概念の理解を促す上でストーリーを活用するねらいとの対応を示すことである.ストーリーを構成する事象に着目して国内外の教科書や先行研究の諸事例を分析し,主要な類型として以下の4つを見出した.すなわち,第一に「概念をその成り立ちから説明する型」,第二に「概念を進化と関連付けて説明する型」,第三に「概念を実体の作用に着目して説明する型」,第四に「概念を創作的な文脈を通じて説明する型」のストーリーである.

  • ―実験キットを配布した理科教育法の実践―
    山口 勇気
    2022 年 37 巻 4 号 p. 83-86
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,キット化した実験教材を配布し,オンライン授業において学生が自宅で行う実験の有効性について検討した.実験キットを用いて自宅で実験を実施した大学生に対して,アンケート調査を行ったところ,「実験キットを用いた自宅実験は「知識」・「技能」の習得に有効だと思いますか?」という設問に対して,9割以上の学生が「とても当てはまる・だいたい当てはまる」と答えた.一方で「実験キットを用いた自宅実験は大学で行う実験と比べて良かったですか?」という設問に対して,約7割の学生が「良くなかった・やや良くなかった」と答えた.また「実験キットを用いた自宅実験は実験動画の視聴と比べて良かったですか?」という設問に対して,9割以上の学生が「良かった・やや良かった」と答えた.本研究から,学生がオンラインで授業を受けなければならないという条件の中で,「自宅実験」を実施することは一定の成果が示された.

  • 小・中学校の全教科の比較を通じて
    紙本 裕一, 福田 博人
    2022 年 37 巻 4 号 p. 87-90
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿の目的は,わが国の算数・数学科の目標についての固有語を,他教科の本文との関連から明らかにすることを本稿の目的とする.分析の結果,理解,表現,意味,計算,着目,構成,処理,測定,操作,習熟,比例,対応,変形,分布,拡張,収集,深める,用いる,伸ばす,求める,知る,重ねる,振り返る,できる,つくことが他教科との比較を通じて,算数・数学科の固有の用語であることが示された.

  • 光永 文彦, 大浦 弘樹, 吉川 遼, 伏木田 稚子
    2022 年 37 巻 4 号 p. 91-94
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,高等学校数学B「統計的な推測」の授業において,生徒が具体的事例に基づくデータをシミュレーションできる統計ゲームを,「母集団と標本」,「推定」の導入教材として設計,開発し,認識的準備活動(伏木田ほか 2020)として実施した上で授業を行い,その学習効果や達成度についての検証を行った.その結果,事前,事後に行った学習内容の理解度テストにおいて,認識的準備活動を行った群と行っていない群に有意な差がみられた.

  • 竹中 優騎, 三島 圭一朗, 御園 真史
    2022 年 37 巻 4 号 p. 95-100
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,学習への関与を捉える概念として,ラーニングエクスペリエンス(LX)が注目されている.本研究では,LX質問紙によるLXレベルの測定方法の確立に向けての示唆を得ることを目的とし,中本・御園(2020)が開発した「数学の学習に対するLXを測定するための質問紙」を使用して中学校2年生に対して質問紙調査を実施した.そして,算出されたLXレベルと「主体的に学習に取り組む態度」の関係性を調べるために,授業課題として出した数学レポートの記述量を調べた.その結果,弱い相関関係が見られ,LXレベルがあがるにつれて記述量も増加する傾向がみられた.

  • 3囚人問題を事例として
    山本 将大, 福田 博人
    2022 年 37 巻 4 号 p. 101-106
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    高度情報化社会により情報の量的側面が爆発的に増大する今日,質的側面の担保として直観力の育成が求められている.また,高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説数学編・理数編では,ベイズ的思考を学ぶ機会について言及されていない.しかし,高度情報化社会においてベイズ的思考は重要な意味を持つため,ベイズ的思考についても学習する必要がある.そこで本研究では,ベイズ思考に関連する代表的な問題である「3囚人問題」を題材に,直観力を養う教材を開発することを目的とする.その方法としてまず,本研究で育成を目指す直観を明らかにした.具体的には,「論理を使って思考の対象を絞り込み,更新された思考プロセスを瞬時に実行する能力」として特定した.その後,特定した直観の観点から,先行研究をもとに「3囚人問題」の難しさの原因を分析した.そして,その苦手な原因を解消し,直観力を養う教材として,「再編版3囚人問題」を開発した.

  • 視線計測データに基づいた分析
    江草 遼平, 向山 翔希, 楠 房子, 稲垣 成哲
    2022 年 37 巻 4 号 p. 107-112
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,科学系博物館における展示鑑賞支援としての4コママンガにおけるキャラクターの有効性について検討する.Ito et al. (2020) では,アンケート調査によって,キャラクターを導入した4コママンガが鑑賞者にとって読みやすさ,理解しやすさの面で肯定的に捉えられていることが示されている.本稿では,キャラクターが鑑賞者の4コママンガ読み取りを支援する効果について,視線計測データを用いた定量的な分析から,その要因について明らかにすることを目的とする.キャラクターによる4コママンガ読み取り支援効果として,コマ内にセリフの形で描写されるテキストへの視線的注意が増大することが想定される.大学生33名を参加者とした実験から,4コママンガ鑑賞時におけるテキストに関する視線の停留時間の側面から分析を行ったその結果,一部のコマでキャラクターのある4コママンガにおいてテキストを含む領域における固視が促されていることがわかった.

  • ~産出化石の同定を例に~
    羽村 太雅
    2022 年 37 巻 4 号 p. 113-116
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    手作り科学館 Exedraでは,栃木県那須塩原市の木の葉石を用いた化石発掘・同定体験を来館者に提供している.産出する化石種の同定と,種ごとの産出率の集計は,古環境を推定するための重要な指標だ.そこで多くの同定数を確保するため,スタッフのサポートを得た市民によって化石種の同定を行い,研究者による同定結果と比較した.その結果,同定の容易な一部の種や,類似の特徴を持つ複数の種を代表する種が多く同定される一方,それ以外の種は市民による同定でも研究者による同定と概ね似た傾向が表れることが示された.今後はこの取り組みを継続して同定個体数を増やすとともに,市民による同定が研究者による同定に近い信頼度で活用できる範囲の絞り込みをおこなう計画だ.

  • ―理科教師の〈ふり〉に着目して―
    荒谷 航平
    2022 年 37 巻 4 号 p. 117-122
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,若手の中学校理科教師/科学教育研究者である筆者が,筆者自身の理科教師としての演技的振る舞いである〈ふり〉について物語ることである.本稿では,筆者の理科教師としての〈ふり〉の中から,「勿体ぶる」,「子どもぶる」,そして「アドリブる」の3つを取り上げて物語り,その後に,それらの〈ふり〉について,「教師-子ども」の権力関係や隠れたカリキュラムの観点から考察する.

  • ―科学とフィクション,学習マンガと娯楽マンガの観点から―
    下平 剛司
    2022 年 37 巻 4 号 p. 123-128
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    文化的コンテンツの1つであるマンガは,娯楽の文脈だけでなく,科学教育の文脈でも活用されている.ここで,マンガ内の描写は科学的事柄だけでなくフィクションを含むことから,マンガの科学教育の活用においては,読み手が科学的事柄とフィクションの境界を認識できる必要がある.本研究では,科学教育の観点からのマンガ研究の土台を整理するために,これらの論点に関して理論的な検討を行った.まず,マンガのストーリーの構成要素内における科学的事柄とフィクションの描写について検討し,作品によってその境界にグラデーションがあることを確認した.次に,グライスの推意の理論を援用して,「学習マンガ」と「学習マンガと見做した娯楽マンガ」に対して読み手が行う推定の相違を示した.最後に,これらの議論を踏まえた上で,”学習マンガ” としてマンガを位置づける際のステークホルダーの役割と,科学教育におけるマンガ研究の今後の展望を整理した.

  • 舟橋 友香
    2022 年 37 巻 4 号 p. 129-132
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    日本の数学授業では多様な考えを授業展開に位置付けることが,その特徴の一つとして指摘されてきた.本稿では,異なる解決過程を比較する場面に焦点を当て,これまで分析の対象とされてこなかった授業中に全体に向けた発話がない生徒や,異なる問題解決過程が比較される中で「効率的でない」と評価された生徒が,どのように比較検討の議論を受け止め,学びを形成していたのかを明らかにする.そのために,中学校第2学年の数学授業及び授業後インタビューのデータを用いた分析を展開した.

     その結果,全体に向けた発話がない生徒も意見を言い合うことが重要という信念を強めていたことや,自身の解法に対して否定的な評価をなされた生徒も他者の解法に含まれる数学的価値を見出し,知的な充足感を得てその後の問題解決に活かしていたことを見出した.これらから,教室で観察される現象が生徒各々の文脈に根ざした知的な喜びを含む経験の総体であることに,より鋭敏になることの重要性を指摘した.

  • ―分数の除法単元に焦点を当てて―
    中野 ひかる
    2022 年 37 巻 4 号 p. 133-136
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    他者に援助を求めたり,提供したりといった力は今後の社会において重要なものであると考える.そこで本稿では,算数科の内容理解に特徴づく援助要請・援助提供の構造について事例的に考察した.そこで,小学6年生の分数の除法単元における授業を計画,実施し,算数科の内容理解に特徴づく援助要請・援助提供の場面を抽出するとともに,援助要請・援助提供の種類をラベリングすることからその構造について分析及び考察を行った.そして,選定したグループ活動で援助要請者と特定された児童の内容理解に影響を与えた《適応的授与》の表出に至る構造として,①援助要請者の【間違い】の自認及び表出を経ての【道具的内容】の提示,②援助要請者による【間違い】の具体的な説明を経ての援助提供者の【間違い】の解釈及び体験の2つの構造を指摘した.

  • ―複数の図形を比較する活動を取り入れた図形領域の実践を通して―
    内藤 真人
    2022 年 37 巻 4 号 p. 137-142
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    学習指導要領解説算数編では,「算数で学んだことは活用できるように学習されなければならないし,活用を重視した創造的な学習展開を用意する必要がある」と示されている. それを踏まえ,筆者は子どもたちが社会的価値観を持ちながら考察する授業を行った.本稿では,先行研究のように問題を価値負荷的ではなく,社会的な場面を想起させて問いかけ,複数の図形を比較する活動を取り入れることでどのような社会的価値観が表出したのか,見方・考え方を働かせていたかについて分析・考察した.子どもたちの記述から,4年生では,図形の構成要素や位置関係に着目しながら安全,安定,とびやすさ,2年生では,図形の構成要素に着目しながら使用者への配慮・使いやすさ,作りやすさなどの社会的価値観を表出していた.また,社会的な場面を想起させて問いかけ,複数の図形を比較させることで,着目すべき図形の構成要素が焦点化され,子どもたちは見方・考え方を働かせたり,日常生活や社会的価値観,数学的な内容を結び付けたりできることがわかった.

  • 口羽 駿平, 山口 悦司, 俣野 源晃, 坂本 美紀
    2022 年 37 巻 4 号 p. 143-146
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,アーギュメント構成能力を育成する理科授業を経験した児童を対象に,学習した時期から期間が経過してもその能力が持続するのかという,アーギュメント構成能力の持続性に関する検討を行った.理科授業の前後に実施した既習内容のアーギュメント課題(事前課題,事後課題)と,理科授業の翌年度に2度実施したアーギュメント課題(遅延課題1,遅延課題2)の各回答について,アーギュメントの各構成要素を得点化して比較・検討を行った.その結果,「証拠の適切性」において,事後課題-各遅延課題において得点に有意な差は見られなかった.また,「証拠の十分性」において,事後課題から各遅延課題にかけて得点低下が有意傾向であった.以上の結果は,小学校理科で育成されるアーギュメント構成能力において,「証拠の適切性」に関する構成能力は持続するが,「証拠の十分性」に関する構成能力は容易に持続しないことを示唆していると考えられる.

  • ―文脈による子どもの認識論の違いに着目して―
    峯田 一平, 山本 容子
    2022 年 37 巻 4 号 p. 147-150
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,アメリカを中心として多様な捉え方がなされている,学校の科学の主要な特徴を明確化することである.そのため,学校の科学についての科学教育研究者の捉え方,および,学校の科学と専門の科学の文脈による子どもの考え方の実態に関する,アメリカを中心とした先行研究の動向を調査し,整理することとした.学校の科学の主要な特徴として,子どもたちは,科学の目的を実験や調査を行うことだと信じていること,実験から得られた結果を正しいものとして捉えていること,結果が正確であると捉えるためにデータの誤りへの考慮が不足していること,科学的方法は変化せず1つしかないと捉えていること,が明らかになった.そして,科学教育研究者の想定する学校の科学と,子どもたちの実態調査の先行研究で示された学校の科学とでほぼ一致していることが明らかになった.

  • 杉山 雅俊, 廣田 真暖
    2022 年 37 巻 4 号 p. 151-154
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,5つの教科書会社が発行する文部科学省検定済の中学校理科教科書を対象として,科学的な探究の過程の視点から吹き出しの件数と特徴を明らかにすることであった.分析の対象とした教科書中の記述から,吹き出しの内容を抽出し,科学的な探究の過程を視点として件数を集計した.分析の結果,どの学年でも,教科書本文の内容を解説する吹き出しが最も多かった.また,探究の過程では,どの学年でも仮説設定に関する内容と観察や実験の方法に関する内容が多い傾向にあった.さらに,課題が設定されるための前提や文脈づくりに関する内容も多い傾向にあった.

  • ―オンラインの海外向けUNESCO-SEAMEO-STEM Ed. Center“パワーアップ”プロジェクト事例から―
    大隅 紀和, 山岡 武邦
    2022 年 37 巻 4 号 p. 155-160
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    基礎レベルの電気と磁気の題材は、これまで多くの学校が板書と説明だけによっていた。その理由は、①実験機材の不足、②実験の経験不足、③適切な指導者の不足、に加え④板書と口頭での説明がテスト結果に効果的だと経験的に知っていることが挙げられる。

    そのため厄介な実験観察は教師たちに回避される傾向が続いてきた。理科の題材を扱いながら、まるで言語の学習活動のようだが、それでも看過されてきた。しかし、近年はSTEM教育の思潮が広がってきて、この状況に真剣に対応する必要がある。その思いから筆者らは教師が困難を克服する実験観察を開発してきた。

    先に研究会報告(注1, 2)したように、大隅はタイ国の教師向けワークショップを実施している。そこで題材にした基礎レベルの電気・磁気実験のうち、最も厄介扱いされる電磁誘導の実験の取り組みを報告する。実験機材は現地バンコクで調達して、タイ国全土に散在する34か校に供給する点で、従来にない取り組みとなった。山岡は、主としてこの事例を対象にSTEM教育に対応する教師のための効果的な実験観察の開発を検討している。

  • 浅川 大生, 池田 浩輔, 河村 祐太郎, 山本 将大, 福田 博人
    2022 年 37 巻 4 号 p. 161-164
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    「文字式」は,中学校数学科の全領域の内容と深い関りをもつとともに,それらの基礎をなすものとして重要な位置を占めている.しかし,全国学力・学習状況調査の報告書(文部科学省)によると,文字で表された式が何を表しているのか読み取り説明する問題の正答率が低い傾向にある.この課題を解決するために,式を用いて数量の関係や法則などを表したり,その意味を読み取ったりするとともに,文字の良さを実感させる授業改善が必要であると考える.したがって,本研究は,先行研究に基づき,「文字式を読む」活動の充実を図る教材を提案することを目的する.

  • 中村 大輝
    2022 年 37 巻 4 号 p. 165-170
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,機械学習(Machine Learning)の技術を教育評価に応用する動きが加速している.しかしながら,科学教育における機械学習を用いた評価方法は研究蓄積が不十分であることに加えて,今後の研究へ向けた成果と課題が十分に整理されていない.そこで本研究では,科学教育における機械学習を用いた評価方法の先行研究をレビューし,研究の現状と課題を検討した.Zhai et al.(2020a)の先行レビューに新たな論文を加えた60件の論文を対象にレビューを実施した結果,次の3点が明らかになった.1.機械学習の導入によって自由記述などのより多様なデータを使用して妥当性を担保しつつ,採点の自動化によって評価の負担を減らし,大規模な評価の実施を目指す研究が多くみられる.2.評価内容や領域には偏りが見られる.3.多くの研究が転移可能性の課題を抱えている.

  • ―数学教育を話題として―
    渡辺 信, 青木 孝子
    2022 年 37 巻 4 号 p. 171-174
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    情報社会へと社会の変化がはっきりと見えてきた.この変化に対して教育の遅れは社会変化に追いつかない.『未来の教育』として情報社会にふさわしい教育とは何かを追い求めたい.コンピュータ技術の発展がもたらした,工業社会からの社会構造の変化は教育にも変化が表れる.教育が情報社会に適応することが必要であるということを前提として『未来の教育』を考えたい.1945年代にコンピュータが出現した後,データに対する扱いが変わった.『データが真理を語る』時代を迎え,数学教育はデータ分析を導入したが,教育界の保守的抵抗は強い.このような状況の中で日本科学教育学会の在り方を問うとともに,創造性の養成と同時に,が以外への発信ができる教育・研究の在り方を低減したい.

  • 山本 輝太郎, 久保田 善彦
    2022 年 37 巻 4 号 p. 175-178
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,科学に対する認識論的信念と科学的根拠に乏しい「疑似科学」的言説に対する態度との関係について比較検討している.先行研究に基づき日本語版科学に対する認識論的信念尺度を作成し,疑似科学信奉および基礎的な科学知識との関係性について分析した.データはクラウドソーシングを利用したオンライン,および中学生から収集され,それぞれ比較検討した.研究の結果,日本語版科学認識尺度は先行研究結果と一定の適合性を示し,各調査変数には一定の相関がみられた.また,中学生データはオンラインデータと比較して,科学認識尺度のうちの「出典」の因子の平均値が有意に高かった.

  • 楊 瑞卿, 山本 輝太郎, 石川 幹人
    2022 年 37 巻 4 号 p. 179-182
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,ビッグデータやIoT(Internet of Things),人工知能等のような先端的な技術が注目され,先端IT人材が今後IT関連市場の拡大を実現するための重要な鍵と考えられる. しかし,IT人材の不足の拡大が続けていくのなか,適性があるIT人材の採用は困難になっている. 技術進化が急速回転のIT業界では,知識やスキルを活かせる期間が短く,新たな技術を素早く学び続ける特性が要求される. そのため,適性人材を見分けるにはその人の学習力に着目すべきである. そこで本研究では,コンピュテーショナルシンキング(CT)の測定手段の一方策として場依存・場独(Field-Dependence/Independence 以下略してFDI)に着目し,「CT スキルの評価手法の確立」を中長期的な研究目的として, IT人材の適性(学習力を持つ人材)とFDI認知スタイルとの関連性について探究した. FDI認知スタイルを測定するために,EFT(Embedded Figure Test)を採用した. 参加者のストレスを軽減するために,対話型のチャット環境で実施した. その結果,FDI及びCTは職業(IT系職と非 IT系職)によって, 有意差が確認され,さらにIT系職の勤務年数とFDIの間に一定な相関も確認されため, I T職の特性を認知的な側面から,CT スキルの評価手法の一環として一定の実用性を示すことができた.

  • 福岡 直樹, 永田 悠人, 森田 裕介
    2022 年 37 巻 4 号 p. 183-188
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,松本ら(2022)の実践デザインを改善し,学童保育において,音を探究し創造する効果的なSTEAMワークショップを実践した.探究活動と創造活動の観点に着目し,グループごとに児童の発話分析を行った.そして,アイデアの発散がより創造的な活動につながることを示した.一方で,アイデアの発散は活動の収束を困難にする可能性があり,児童たちの活動を収束させるために,ファシリテータおよび学生スタッフが適切なタイミングで活動の収束を促すことの重要となることが示唆された.

  • 長沼 祥太郎
    2022 年 37 巻 4 号 p. 189-192
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では今後の「理科離れ」研究の基礎資料とするために,近年注目されている「興味の複数性」の視点に立ち,高校3年生がどのような興味プロフィールを持っているのかを明らかにすることを目的とする.この目的のため,本研究では3つの興味(STEMへの興味,人文・社会科学(HSS)への興味,非学術的な興味)を測定する質問30項目を開発し,調査を行った.2022年7月に,高校3年生1,200名からオンラインで回答を集め,潜在プロフィール分析を用いて分析した.その結果,12種類の興味プロフィールが確認され,STEMに興味を持ちながらHSSには興味がない(プロフィール10),STEMに興味を持たずにHSSに興味を持つ(プロフィール11)など多様なプロフィールが見られた.また,プロフィール内の性別やコース所属にも差が見られた.STEMへの興味が低い生徒の興味を向上させるために,HSSへの興味や非学術的な興味は,①利用可能な資源であり,競合しない,②利用可能な資源であるが,競合して低下する,という2つの可能性が考えられる.そのため,仮にSTEMへの興味を高める介入を実施した場合には,女性や文系コース所属者の興味の構造を大きく変えてしまう可能性があることに留意すべきかもしれない.

  • 加治屋 智弥, 中山 迅, 猿田 祐嗣
    2022 年 37 巻 4 号 p. 193-198
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,2017年に告示された中学校学習指導要領において一層重視されるようになった探究活動で,探究活動の振り返りが,教科書において特に重要視されていることを明らかにした.2021年度から使用されている中学校理科教科書において大きな変化が見られた.中山ら(2014)による 2008年告示の中学校学習指導要領に基づく5社の中学校理科教科書の問いの分析基準には「振り返り」場面が含まれていないが,新学習指導要領に基づく教科書の分析において「振り返り」場面の問いを抽出すると,全体の約1割の問いの件数が振り返り場面であることが明らかになった.さらに,「振り返り」場面の問いの内容について分析したところ,単なる学習の振り返りに留まらない,深い学びを促すものが含まれていた.今後,中学校理科の授業の在り方を検討するうえでの資料とすることが期待される.

  • 井上 将人, 御園 真史
    2022 年 37 巻 4 号 p. 199-202
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,学校現場におけるSTEAM教育が重要視されている.しかし,わが国の学校教育におけるSTEAM教育は,中央教育審議会答申によれば,STEAM教育は,教科等横断的に学ぶとされていることから,総合的な学習の時間等で行うことが想起されやすい.しかし,より充実したSTEAM教育を実現するためには,各教科でもSTEAM教育を意識して指導を行うことが重要である.その実現を視野に,本研究では,数学を中心に据えた意識調査を行った.その結果,生徒は,数学を数学以外の教科で活用した経験では,理科という回答が多かった.また,将来の仕事への有用性を高く意識しているが,生徒の具体的な関係する職業として挙がったものは限定的であった.さらに,重回帰分析の結果,「数学を学ぶことの重要性」へは,「将来の仕事への有用性」および「他教科で活用した経験」の両方が影響するが,その度合いは,「将来の仕事への有用性」の方が高いことがわかった.

  • ―項目反応理論を用いて―
    雲財 寛, 川崎 弘作
    2022 年 37 巻 4 号 p. 203-206
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は理科における知的謙虚さ尺度を再構成し,項目の特徴を明らかにすることである.雲財・川崎(2021)では,「開放性」「一般化への慎重さ」「知性と自我の独立」という3因子構造を提案したものの,「知性と自我の独立」因子において収束的妥当性が認められなかった.この課題を解決するために,尺度を再構成するとともに,項目反応理論を用いて各項目の特徴について検討した.その結果,「誤謬の自覚」「知識の限界の認識」という2因子構造を提案することができた.また,項目反応理論を用いた分析から,誤謬を意識することよりも知識の限界を意識することの方が困難であることなどを明らかにした.

  • 山田 明日可
    2022 年 37 巻 4 号 p. 207-210
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿の目的は,第4学年を対象に第3学年までの分数学習において,もとにする量や数に係る理解状況を詳細に捉えることから,第3学年と第4学年の架橋教材を開発することである.そこで分数の学習に入る前の第4学年の児童の理解状況を捉えることを目的としたプレテストを実施した.調査結果の分析からは,対象児童のほとんどが,基準となる量を見いだすことができない,もしくは,基準となる量を見いだすことはできても,単位分数を見いだすことができないことが示唆された.そこでプレテストの結果を踏まえ,もとにする大きさや単位分数への注意を向けることを意図した架橋教材の提案を試みた.

  • ―素数判定のアルゴリズムに着目して―
    鈴木 良幸, 森田 大輔
    2022 年 37 巻 4 号 p. 211-216
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    学習指導要領の改訂に伴い,小中高等学校段階を通じたプログラミング教育の充実がより一層図られることとなったことを受け,本稿では中学校数学科に焦点を絞り,Computational Thinking(CT)の育成を意図した教材の開発を行い,その教材を用いることで期待される生徒の活動について考察を行うことを目的とする.CTの育成を志向した教材として,本稿では与えられた自然数が素数か合成数かを判定する「素数判定」に着目した.そして,ビジュアルプログラミング言語であるScratchを用いること,一人一台端末という環境を前提にした上で,Study and Research Paths(SRP)に基づいた探究活動を促す最初の問いQ0として,「入力した数が『素数』か『合成数』かを判定するプログラムをつくろう」を設定した.そして,第一著者がこの問いに基づいた探究活動の過程を考察することで,上記で設定した最初の問いQ0が各種CT実践を生起させうることを明らかにした.

  • 藤田 冬弥, 出口 明子
    2022 年 37 巻 4 号 p. 217-220
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2022/12/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,小学校及び中学校理科理科における電気分野の学習内容を対象とした教授・学習についての研究動向の基礎的検討として,国内の学術論文誌を対象にした文献調査及び調査を通して抽出した論文の分析を行った.調査の結果,小学校及び中学校理科理科における電気分野の学習内容を扱った研究論文は計25編抽出された.そのうちもっとも多い電流の内容に関する計10編の論文を分析したところ,うち7編において水流モデルまたはそれを発展させたモデル教材・指導法が導入されていることが示唆された.さらに,各研究論文で採用されている評価方法やそれに基づいた成果と課題についても整理された.

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