日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
36 巻, 4 号
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表紙・目次
発表
  • 千田 将貴, 小倉 康
    2022 年 36 巻 4 号 p. 1-6
    発行日: 2022/03/27
    公開日: 2022/03/24
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,ESDやSDGsと関連した実践を参考に,カリキュラムに体系的に示していくことで,学校現場における持続可能な社会の創り手の育成を目指した実践を容易にすることである.そのために,今まで行われてきた実践を調査し,それらと理科のカリキュラムとの関連を体系的に示した.さらに,実践との関連が見られなかった小学校第6学年「水溶液の性質」にて,単元の学習内容と環境問題を関連させた授業の開発を行い,実践と効果の検証を行った.分析の結果から,児童がESDやSDGsの視点にあるような環境問題を自分事として捉えることのできる授業実践として有効であることが示唆された.また,作成したカリキュラムについて学校関係者の評価や反応を調査した結果から,「持続可能な社会の創り手」の育成を容易にすることが期待できることが示唆された.

  • 渡辺 信, 青木 孝子
    2022 年 36 巻 4 号 p. 7-10
    発行日: 2022/03/27
    公開日: 2022/03/24
    研究報告書・技術報告書 フリー

    SDGsにおける第4の目標として掲げる教育問題は,学校教育だけではなく人生いつでも学び続ける重要性を問うている.この生涯学習の推進は,日本では学びが学校教育のみを対象としているために遅れている.学校教育は充実し世界における教育王国として誇ることができる.しかし,人生100年時代において学校生活以降の生涯学習では学び続ける姿はない.この素晴らしい学校教育のなかでの学習の後に続く,学校制度とは切り離された学習を推進したい.学校教育と同じ制度の下で行う学習をIn Schoolとし,学校教育の延長上にある学校制度を持たない学習をOut Schoolとして,学び続ける生涯学習を考えたい.我々の学習はOut Schoolを目指していることを確認したい.

  • 平田 昭雄
    2022 年 36 巻 4 号 p. 11-16
    発行日: 2022/03/27
    公開日: 2022/03/24
    研究報告書・技術報告書 フリー

    日本の中学校理科は2017(平成29)年の学習指導要領改訂により自然災害防災学習の点で内容の改善,充実が計られた.これを受けて2021(令和3)年から完全実施された日本の新しい中学校理科は,自然災害の防災減災学習についてどのような進捗を遂げたのかを2020(令和2)年3月検定済,2021(令和3)年発行の改定後初の中学校理科の検定教科書で確認したところ,次のことが明らかとなった.1) 全ての教科書において自然災害に関する明確な記述が存在する.2) 2017(平成29)年改訂版中学校学習指導要領解説理科編に記された自然災害防災学習に関連する13の提案に対して,内9の提案については全ての教科書でそれに準じた内容の記述が掲載されている.3) とくに,上の9の提案中の「地震によって生じた現象と被害の特徴との関係」「津波については,その発生の基になる地震の規模や,震源の位置,沿岸の地形の特徴と被害の関係を整理」「台風の進路に基づいて強風や高潮などによる災害の発生した状況を整理」の3の提案については,全ての教科書で提案に沿った理科学習の展開が強く促されている.

  • 福井 智紀, 水本 開, 小澤 彰吾
    2022 年 36 巻 4 号 p. 17-22
    発行日: 2022/03/27
    公開日: 2022/03/24
    研究報告書・技術報告書 フリー

    2015年に登場した機能性表示食品制度について,従来の特定保健用食品(トクホ)等との違いにも焦点を当てた理科教材を開発した.教材は冊子形式とし,基本的事項を理解したうえで自らの考えを深められるよう,グループディスカッションを中心に位置付けた.開発した教材では,機能性表示食品のメリットとデメリットについて,一方に偏らないようバランスに配慮して取り上げ,さらに,他者の意見にも触れさせるため,グループディスカッションの手順を明示した.開発した教材を用いて,大学生を対象に試行授業を行った結果,全般的に高い評価が得られ,理解の深化が示唆された.このことから,本教材は,一定の活用効果を有すると思われるが,理科授業において生徒を対象とした試行を行った訳ではないため,最終的な評価のためにはさらに試行を行う必要がある.また,開発・試行時から見ると,事業者による商品開発や消費者の理解も進み,状況も変化してきているため,今後も教材のバージョンアップを図っていく必要がある.

  • 山本 輝太郎, 久保田 善彦
    2022 年 36 巻 4 号 p. 23-26
    発行日: 2022/03/27
    公開日: 2022/03/24
    研究報告書・技術報告書 フリー

    新型コロナウイルスの世界的な流行によるいわゆる「コロナ禍」において,科学的根拠に乏しいとみなしうるさまざまな説(疑似科学的言説)も登場し,問題となっている.なかには「新型コロナワクチンを接種すると不妊になる」といった,それが蔓延することでより深刻な問題を引き起こしかねない説もあり,そうした説に傾倒する背景要因の究明は社会的な喫緊の課題であるといえる.本研究では,こうした新型コロナに関連する疑似科学的言説への態度に関わる背景要因の分析を行った.具体的には,新型コロナに関して科学的根拠に乏しいと思われる個別の説を収集,質問項目を作成したうえで,「科学に対する認識」や「新型コロナ以外の疑似科学的言説への態度」「科学知識」などとの関連性を検討した.クラウドソーシングを用いた調査を行った結果,新型コロナに関する疑似科学的言説への態度に対して,従来の疑似科学への態度や科学に対する認識,科学知識との一定の関連性が示された.これらの結果に基づき,科学に対する認識の次元にまで踏み込んだ教材開発およびその教育実践の重要性について提案したい.

  • 教科による違いはあるのか?
    吉岡 亮衛
    2022 年 36 巻 4 号 p. 27-32
    発行日: 2022/03/27
    公開日: 2022/03/24
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,教科を担当する教員の自身の担当教科に対する意識について問うWEBアンケート調査の結果報告である.調査の目的は,教科の教育が学校教育が目指す人格の完成と教育目標の達成にどの程度貢献しているのかを明らかにすることであり,教員は自らが担当する教科の貢献の程度を評価することが求められた.調査は大きくは5問あり,本報告では,母集団の属性情報と人間の特性に対する教科の貢献度,および教育目標の達成に対する理想と実際の2つの面からの貢献度について報告する.

    今回の調査で50人以上の回答があった国語,社会,数学,理科,英語,保健体育の6教科の担当教員の回答から,学校教育が育むことを目的とする「完全で調和のある人格」としての人間の28の特性および22の教育目標の達成は,個々の教科がそれぞれ強みと弱みを有し,全体として実現の方向を目指していると言える.

  • 竹中 真希子, 辻 宏子
    2022 年 36 巻 4 号 p. 33-36
    発行日: 2022/03/27
    公開日: 2022/03/24
    研究報告書・技術報告書 フリー

    生活科の学習における,思考力,判断力,表現力等の育成にあたっては,幼児期の教育,低学年の各教科等,中学年以降の学習とのつながりを踏まえた学びの展開が想定されている.本研究では,これらのつながりについて,科学の視点から生活科の教科書の内容を含むいわゆる朱書書を対象として調査・整理した.その結果,幼児期の領域「環境」の数量・図形および低学年の教科算数とのつながりでは,「数と計算」「測定」を中心に,観察の観点として取り上げられる傾向が確認され,数学的な見方へとつながることが示された.領域「環境」の科学につながる内容および中学年以降の学習である理科とのつながりでは,生活科の学習を通して幼児期から児童前期の素朴な気付きが,思考された気付きや認識的な気付きへと高まり,ものの「理」を紐解いて視る力である理科の見方・考え方へとつながっていくことが示された.

  • 中村 大輝, 松浦 拓也
    2022 年 36 巻 4 号 p. 37-40
    発行日: 2022/03/27
    公開日: 2022/03/24
    研究報告書・技術報告書 フリー

    幼保一元化に関する議論の中では,幼稚園と保育所のどちらを中心とした統合を行うべきかが問題となっている.先行研究では,幼稚園出身の子供の方が保育所出身者よりも将来的な学力が高いという結果が示されているものの,幼児教育の形態が将来の学力に及ぼす因果効果については明らかになっていない.このような因果効果を検討する上で最も望ましい研究デザインはランダム化比較試験だが,幼稚園と保育所のどちらに通うかをランダムに割り付ける研究は実施困難である.このような状況における次善策として,本研究では傾向スコアを用いた因果推論によって,幼児教育の形態が将来的な理数学力に及ぼす因果効果を明らかにすることを目指した.東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が実施している縦断調査である「子どもの生活と学びに関する親子調査」の公開データを用いて,幼稚園と保育所のどちらに通ったかが小学校4年時点の理数学力に及ぼす因果効果を検討した.傾向スコアを用いた分析の結果,幼稚園での教育は保育所における保育と比べて将来的な理数学力に対して相対的に高い効果を発揮するものの,その差は決して大きくはないことが示された.

  • ―SOLO Taxonomyに着目して―
    塩澤 友樹
    2022 年 36 巻 4 号 p. 41-46
    発行日: 2022/03/27
    公開日: 2022/03/24
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    本研究の目的は,SOLO Taxonomyに着目し,標本データに基づく統計的推論力を捉える分析枠組みを構築することである.この目的に対して,本研究では,SOLO Taxonomyを提案したBiggs & Collis (1982) の研究を手がかりに,SOLO提案の背景と5つのレベルの特徴について整理した.そして,この5つのレベルのうち,単構造的レベル,複構造的レベル,関係的レベルが中核であり,特に,具体的号的機能様式及び形式的機能様式において,2つの学習のサイクルがあることを明確にした.また,国際統計教育研究ハンドブックを手掛かりに,統計教育研究におけるSOLOの枠組みの位置づけについて整理するとともに,2つの学習のサイクルを反映したSOLOの枠組み例とその限界について確認した.その結果,新たな分析枠組みを構築する視点として3つの視点が導出でき,それらの視点に基づき,理論的に分析枠組みを構築できた.

  • 山野井 貴浩, 郡司 百佳, 森長 真一
    2022 年 36 巻 4 号 p. 47-50
    発行日: 2022/03/27
    公開日: 2022/03/24
    研究報告書・技術報告書 フリー

    高校生物における進化の授業の充実度に与える要因を探るために,高校生物教員64名を対象に質問紙調査を行った.進化の授業の充実度は,進化の各単元における観察・実験の回数,探究活動や標本を用いた説明の頻度などを5件法で尋ね,得点化することで算出した.授業の充実度に影響を与えうる要因として,進化の受容,進化の理解,教員歴を想定した.進化の受容と理解については海外で開発された尺度を翻訳して利用した.回帰分析の結果,進化の授業の充実度に影響する要因を見出すことはできなかった.進化の授業では観察・実験や探究活動がほとんど行われていないことが示唆され,また95%以上の教員は教材不足を感じていたことから,進化の授業を充実させるためには,教育現場で利用しやすい教材を普及させることが必要と考えられる.

  • 桝渕 幸人, 澤田 大明, 和田 一郎
    2022 年 36 巻 4 号 p. 51-56
    発行日: 2022/03/27
    公開日: 2022/03/24
    研究報告書・技術報告書 フリー

    平成29年告示の学習指導要領から,持続可能な社会の実現に向けた人材育成を目指し,これまでも育成が求められてきた資質・能力に加えて,新たに生徒の自己調整に関わる「学びに向かう力・人間性等」が示された。学校教育において,生徒が学習において自己調整するための自己調整学習の能力育成が求められていると捉えられる。そこで本研究では,自己調整学習研究の第一人者であるジマーマンらの指摘するSRL(Self-Regulated Learning)サイクルモデルを通じた生徒の自己調整学習の能力育成の実態について,中学校理科授業の事例的分析を通じて明らかにすることを目的とした。調査に際し,Boekaerts(1999)が指摘する自己調整学習の能力の3層構造モデルを援用した。以上を踏まえて,生徒の自己調整学習の能力を分析したところ,2回のサイクルを通じて生徒の自己調整学習の能力が育成される実態が明らかとなった。

  • 野村 祐子, 大豆生田 顕, 寺田 光宏
    2022 年 36 巻 4 号 p. 57-62
    発行日: 2022/03/27
    公開日: 2022/03/24
    研究報告書・技術報告書 フリー

    状態変化と熱の伝わり方の学習の中で沸騰現象を日常生活に関連付け,消防を文脈とした理科授業をデザインすることによって消火活動に伴う二次災害の危険性を理解し火災安全の向上を図るため,過熱状態の水が沸騰する仕組みを理解するための教材の作成を試みた.水より比重が大きい油に浮かべて加熱した水滴の挙動と,水より比重が大きい油と小さい油の界面で加熱した水滴の挙動を撮影し,突沸の起こりやすさと激しさを比較して現象の違いを捉える観察実験映像を作成した.

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