フィリピンでは,科学教育における新しい教師教育の取り組みとして,2000年より日本の国際協力のもと小学校と中学校の科学と数学の教師を対象とする学校を拠点とする現職教育(SBTP)が始められた.本研究の目的は,SBTPの特色と課題を明らかにすることであり,そのためにフィリピンにおけるフィールド調査と関連文献の調査を行った.その結果SBTPは,地方の学校の教師に対する継続的な教師教育であり,その教師教育プログラムに観察実験活動が取り入れられている,日本の研究授業と類似している,地方主導の運営である,学校での授業に即した内容である,低コストの運営をしている,日本からは人的な貢献を主としている,という特色があることを明らかにした.またSBTPは,模範授業後の討論が十分に行われていないことが課題であり,その理由として模範授業に関する評価と授業内容に関する討論の観点に問題があること,参加教師には科学的知識や実験技能が不十分であるという問題点を指摘した.
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