日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
37 巻, 3 号
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表紙・目次
発表
  • 野村 祐子
    2022 年 37 巻 3 号 p. 1-6
    発行日: 2022/12/03
    公開日: 2022/12/01
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    理科で扱われている沸騰の原理は,過熱度が大きい状態を経て突然急激に気体に変化する爆発的沸騰現象を理解するには説明が不足している.本研究は,沸騰の原理に不足している沸騰開始過程の説明を補い,火災文脈の理科学習を提案することを目的とした.概念地図法は,十分に体系化されてはいないが体系化でき得る領域において学習促進的効果が生じやすいと考えられている教育実践の技法である.そこで溶液の性質の学習内容を活用し,過冷却水の凝固と対比して過熱水の沸騰の概念地図を作成した.また,学習者の既有知識に沿って,蒸発,沸騰,身近な沸騰現象,爆発的沸騰の順に,現象の説明に必要な命題群を設定し,段階的に概念地図を詳細化した.さらに,過熱水の爆発的沸騰を火災と関連付け,理科と地域の安全を扱う社会科を接続する概念地図の作成を試みた.

  • ―島根大学教育学部附属義務教育学校での実践例を中心として―
    栢野 彰秀, 野﨑 朝之, 大山 朋江, 宮下 健太, 森 健一郎
    2022 年 37 巻 3 号 p. 7-12
    発行日: 2022/12/03
    公開日: 2022/12/01
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    教科「理科」における「主体的に学習に取り組む態度」の評価の在り方に検討を加えるために、公開授業とそれに伴う授業協議会を開催した。その結果、次の諸点が導出された。1)評価規準及び評価基準を例示すると、それに基づいて評価が行われる。2)評価にあたっては行動分析と記述分析を併用して行う必要がある。しかし、極めて難しい。3)粘り強い取り組みを行おうとする側面と自らの学習を調整しようとする側面の両面から評価する必要があるが、それらをどのように組み合わせて評価するかについて今後検討を加える必要がある。4)「主体的に学習に向かう態度」を評価しようとしているのか、それとも「思考・判断・表現」を評価しようとしているのか、不明となる可能性があるため、この点に今後検討を加える必要性がある。

  • 佐藤 陽, 安藤 秀俊
    2022 年 37 巻 3 号 p. 13-16
    発行日: 2022/12/03
    公開日: 2022/12/01
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    ヒメチャマダラセセリは,鱗翅目セセリチョウ科の蝶である。日本では,北海道の特産種で日高山脈アポイ岳付近に産し,国の天然記念物(絶滅危惧ⅠA類)に指定されている。近年,生息環境の変化により個体数が急激に減少し,日本チョウ類保全協会などの調査では,調査地(計11カ所)における7月下旬の幼虫数の変化を見ると2013年には361頭であったが,2020年には70頭まで減少し絶滅の危機に瀕している。絶滅を避けるためには,生息域外保全による増殖などの対策が必要であるが,1973年の本種の発見から,2年という短い期間で天然記念物に指定されており,生息域外保全のための基礎的な飼育データがほとんどない。そこで今回,日本チョウ類保全協会から環境省と文化庁の許可を得て採集した母蝶から強制採卵した300卵の生息域外保全を委託され,温度,日長,2化の条件など,累代飼育のための基礎的データの収集を行った。

  • 松浦 俊彦, トゥパス フェアナン プニエロ
    2022 年 37 巻 3 号 p. 17-20
    発行日: 2022/12/03
    公開日: 2022/12/01
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    海に関わる環境問題はSDGsにも掲げられているグローバルな課題であるが,近年の若年層を中心とした海離れは将来の環境意識の低下につながると懸念されている.海の豊かさを守るためには,日本に限らず,多くの国々で海への関心と理解を深める環境教育が求められている.本研究では,多くの国々で海への関心と理解を深める環境教育を目指し,日本とフィリピンの教育関係者の協働による海洋環境教育教材の開発を試みた.多くの国々での活用を想定して,フィリピンの教育関係者が考案した「海の植物のつくり」「海の生き物カード」「海洋環境イメージ画」などの手作り理科教材を日本の小・中学校の現職教員が評価することで,問題点を洗い出した.本研究で得られた知見は海洋リテラシーを育む世界共通の海洋環境教育教材の開発に向けて大いに役立つことが期待される.

  • ―海外向けに実施したオンライン・ワークショップ、UNESCO-SEAMEO-STEM Ed. Center“パワーアップ”プロジェクトの事例から―
    大隅 紀和, 山岡 武邦
    2022 年 37 巻 3 号 p. 21-24
    発行日: 2022/12/03
    公開日: 2022/12/01
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    本報告は、2022年3月の一か月間にわたる5日のワークショップを実施した事例をベースにしている。このワークショップは大阪の大隅、バンコクSTEM Ed-Centerのプロジェクト・チーム、そしてタイ国内小中学校34か校をむすぶオンラインで実施した。

    このプロジェクトの特色は、①主要テーマは、受講対象者の現地の教師が厄介扱いしてきた基礎レベルの電気・磁気の実験・観察である。②加えて、それらの実験・観察を手作りの制作道具、手作りの実験器具で取り組んだ。③制作作業、実験活動を中心のプログラムで、しかも現地調達の機材を使っている。④コロナ禍の状況のもとリモートで実施した。そのため遠隔地にある学校の参加が可能になった。コロナ禍の海外向け実験型ワークショップの事例である。共著の山岡は主に教師の「モノづくり活動」の観点から検討し、この具体例から一般論としての教師のモノづくり活動を検討することを目指している。

  • ―NHK Eテレ「ツクランカー」の活用―
    森 健一郎, 芳賀 均, 青木 隆
    2022 年 37 巻 3 号 p. 25-28
    発行日: 2022/12/03
    公開日: 2022/12/01
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    本研究は,教育番組の視聴と並行して「ものづくり」を通した問題解決の活動をおこなうことで,「学校で学んだ知識・技能」を活用しながらTinkering(意味のある試行錯誤)につながることを示すものである.通常の教育活動では「専門家からのヒント」を得ることは難しい場合が多いが,教育番組の活用によって「専門家からのヒント」を活用しながらTinkeringにつなげることが期待できる.そこで,番組の視聴に実践を伴わせた場合の効果を調べるために,実際に4つの小学校(東京都内2校および北海道内2校)に2回の番組を視聴してもらい,各回の前後にアンケートを実施した.テキストマイニングによる対応分析の出力を分析したところ,理論と実践の組合わせにより,番組が意図したねらい(音の仕組みの理解)につながったと推察された.

  • 森岡 真弥, 山本 朋弘
    2022 年 37 巻 3 号 p. 29-32
    発行日: 2022/12/03
    公開日: 2022/12/01
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    本研究は,STEM/STEAM教育に関連したweb上の実践事例を分析することで,今後のSTEM/STEAM教育の学校現場での推進について検討した.その結果,STEM/STEAM教育に関連した事例の実施校種,実施年,分類について,それぞれ中学校が一番多く32件(61.5%),2021年度が一番多く33件(63.5%),2つ以上の教科等が一番多く33件(63.5%)で過半数を占めていた.これは,小学校や高等学校での更なる実践が重要であること,中学校の教員が,教科等横断的な教育の実践に取り組む際に,STEM/STEAM教育をより強く認識し実践事例や指導案上に明記していたことが示唆された.また,STEM/STEAM教育に関連した事例の実践が年々増加していることから2022年度は,2021年度を上回るSTEM/STEAM教育に関連した事例の実践が見込まれることも推察できた.今後は,STEM教育が生まれた米国を始め,諸外国の先進的な実践を整理・分析し,日本との比較・分析を行い,日本におけるSTEM/STEAM教育の推進について更なる検討をしていきたい.

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