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上元 雅晴, 渡邉 重義
2010 年25 巻2 号 p.
1-6
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
2011 度から完全実施される新学習指導要領(2008)では,小学校 6 年の理科に「電気の利用」が新単元として加わった。この単元で使用される「手回し発電機」「コンデンサ」は教師と児童にとっては新たに出会う未知の教材である。そこで,手回し発電機やコンデンサの特性を調べる基礎実験を行い,電気の性質やはたらきについて,探究的な学びができるような授業づくりを検討した。 その結果,手回し発電機で発電しているときの回路の電圧・電流と手ごたえの関係や,手回し発電機の回転速度とコンデンサの蓄電量の関係など授業で実験を行うときのポイントとなる
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高田 みゆき, 正元 和盛
2010 年25 巻2 号 p.
7-10
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
小学校における植物での輸送系理解のために,師管を通る光合成産物転流糖(ショ糖)の検出実験法の教材開発を行い,小学校での授業実践を行った。オオバコの葉柄から取り出した葉脈を試料とした。そこに含まれるショ糖を,インベルターゼで分解してブドウ糖を生成させた後,市販のブドウ糖検出試薬を用いて発色させ,光度計で測定した。オオバコ葉脈でのショ糖含量は,葉身部分のそれに比べ,高い値を示した。本実験法を用いることにより,師管を通って運ばれる転流糖(ショ糖)を検出できることがわかった。この実験を,簡略化し,小学校で授業実践を行った。児童は,実験を通して葉でできたデンプンが糖になり葉脈を通って輸送され,実や種などに貯蔵されることを推察することができた。
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土田 理, 宮﨑 幸樹, 佐伯 昭彦, 氏家 亮子, 末廣 聡
2010 年25 巻2 号 p.
11-14
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
グラフ発見学習における授業導入場面に着目した分析を行った。その結果,児童個々の目的把握,判断,児童同士の方向性確認,合意形成を短時間に繰り返していることが確認された。その中で事象を捉えるための科学的手法の一つである,観察,解釈,適応,判断,修正の過程が繰り返し行われ,「物体の運動」を考察する典型的スタイルを,小学生児童も獲得可能であることが示された。
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李 美英, 孔 泳泰
2010 年25 巻2 号 p.
15-20
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
本研究は小学校 3 年生たちの認知加速理科授業を行うための教授·学習プログラムを開発し,実践を通してその効果を調べることに主な重点を置いた。まず,イギリスで開発された LTTS(Let's Think Through Science) プログラムを分析し,韓国の理科学習指導要領との連携性を調べた。その結果,LTTS level 7&8 と 8&9 の 33 個活動の中で 17 個の活動が韓国の小学校 3 年生の理科学習指導要領の内容と密接な関連があることが分かった。しかし,LTTS プログラムはイギリスを背景に開発されたプログラムであるため,效果的な国内に適用するためには韓国の教育実情に合わせる必要があるので,小学校 3 年の理科科学習指導要領に LTTS の活動を一部活用して,認知加速理科授業用のプログラムに再構成した。そして,再構成させたプログラムを認知加速授業モデルに従って,教授·学習指導案及び学生活動用の資料を開発した。
のべ 31 時間分で開発された教授·学習プログラムを韓国慶尚南道咸陽郡所在 S 小学校 3 年生 13 人を対象で,約 8 ヶ月の間,正規の理科教科時間に実践して見た。認知加速理科授業の效果を調べるために,メタ認知,学習動機,科学的態度に対する事前および事後検査を実施し,プログラムの效果を分析した。その結果,統計的に有意味ある水準でメタ認知,学習動機,科学的態度の向上が認められた。したがって,認知加速理科授業が小学生たちのメタ認知,学習動機,科学的態度力の向上に肯定的な效果を与えると解釈することができた。
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~明治期から昭和期に注目して~
服部 直樹, 八田 明夫
2010 年25 巻2 号 p.
21-26
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
本発表では鹿児島県域で明治期から昭和初期に行われていた低学年理科に関する取り組みを明らかにすることを目的とした。そこで,以下の三つのテーマを設定し紹介を行った。
・鹿児島県域における「実科」について
・落合盛吉「自然科取扱について」を主として大正 10 年頃の鹿児島県域の低学年理科についての活動
・落合以降の鹿児島県域における低学年理科に関して
この三点から鹿児島県域における低学年理科特設運動は全国的な活動に目を向け,さらに独自なものを作り出そうとしており,先駆的な試みも行われていたことが明らかになった
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孔 泳泰
2010 年25 巻2 号 p.
27-32
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
本研究では,日·韓両国における新理科学習指導要領を対象にして,教育制度,実施時期,改訂の基本方向,授業時間数,構成体制(目標,学習内容,教授・学習活動,評価)と韓国の新理科教科書の特徴などに分けて考察してみた。両国の理科カリキュラムてを比較した結果,両国とも理科学習量を増やしたこと,実生活と関連した内容を強調したこと,生徒一人ひとりの能力に応じて指導の充実と目標と評価の一体化を図ろうとした共通点が見られる。しかし,理科学習目標や学習内容及び学習指導方法での具体的なところでは相違点も見られた。
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―「電流とその利用」を事例として―
野村 法雄, 安部 泰弘, 中山 迅, 猿田 祐嗣
2010 年25 巻2 号 p.
33-38
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
理科の教科書の記述に見られる「問題」の特徴を明らかにするために,全国的に使用されている中学校理科教科書の「電流とその利用」に関する単元にある問題の記述を分析した。「電流とその利用」に関する単元では,何を調べるかが与えてあり,「どんな」という形式で問う問題が多いという特徴が見られた。
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-TIMSS の調査枠組みから見た学力の捉え方の変遷について-
猿田 祐嗣
2010 年25 巻2 号 p.
39-42
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
本研究の目的は,わが国を含めた主要国の理科関係教科目のカリキュラムに大きな影響を与えている,国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)における学力の捉え方の変遷を分析・検討し,TIMSS における科学的思考力や論述力の位置付けを明らかにすることである。TIMSS の調査枠組みを調べた結果,1995 年の TIMSS からは,それ以前の調査における「知識,理解,応用」という認知的目標の形式から,「問題解決,分析,科学的方法の使用,自然界の探究」といった行動的目標へ,さらには最新の 2007 年の TIMSS では「知ること,応用すること,推論すること」という思考操作に基づいて,「情報を解釈する」,「科学的説明をする」,「証拠から結論を導くための推論をする」という新たな行動的目標の形式へと変化してきていることが明らかとなった。
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隈元 修一, 中山 迅, 猿田 祐嗣
2010 年25 巻2 号 p.
43-48
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
本研究は,日本の中学生の理科の論述学力を伸ばす評価法や指導法の改善のための研究である。これまで,TIMSS の理科の論述課題の誤答に注目し,その誤答の理由の分析や聞き取り調査を行い,児童生徒のもつ科学的な概念や論述の傾向について研究を行ってきた。これらの結果から小学校の授業の課題の視点を提示し,どのように授業を改善していくかという具体的な提案を行う。
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安部 泰弘, 中山 迅
2010 年25 巻2 号 p.
49-54
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
単純電気回路における中学生の考え方を面接調査によって調べた。豆電球の点灯およびモーターの回転の原因を中学生の多くが電流と見なされているものが導線内を移動するからと考えている。しかし,電流の向き・経路・大きさについては,様々な考え方があり,学年による特徴も違いがあった。また,中学生のもつ考え方とそれについての教師の予測との間には大きな差があった。中学校での電気の学習内容を理解させるためには,中学生のもつ考え方を充分に理解し,それを授業で取り上げることが重要である。
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―「水のゆくえ」の学習を通して―
佐野 工, 中山 迅, 林 敏浩
2010 年25 巻2 号 p.
55-60
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
これまでも理科学習の中で,思考を促す道具の1つとして描画法が取り組まれてきた。本実践では,理科学習用アニメーション作製支援ソフトウェア「Galop」を活用した小学生による概念学習において,児童にどのような影響を与えるのかを調べるとともに,授業での活用を図るための操作面・機能面の改善点を調べることにした。
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峰 福太朗, 佐藤 寛之
2010 年25 巻2 号 p.
61-64
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
平成 20 年改訂の学習指導要領では,小学校第 6 学年の目標として,推論する能力の育成が,新たに掲げられている。本研究では,「推論する能力」を育成するために類推的思考に着目し,これを活用した小学校第 6 学年における科学概念の形成過程について知見を得ることを目的とした。本発表では,学習単元に入る前(学習前)の段階で,子どもが自然事象の理解に際して,類推的思考をどの程度活用するのかについての質問紙調査を実施し,その分析を試みた。質問紙調査から,喩えやアナロジーを用いて説明することの意味づけができるように,支援を行うことが必要であることが明らかとなった。
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-アフォーダンスの観点から-
都甲 歩未, 森藤 義孝
2010 年25 巻2 号 p.
65-70
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
環境に存在するあらゆるものはアフォーダンスを持っている。アフォーフダンスは我々の行為の資源となり,アフォーダンスを拾いあげるだけで適応行動をとることができる。理科学習において児童は,実験道具のアフォーダンスを利用し,科学概念を形成することとなる。本研究では,アフォーダンスという観点から,小学校第4学年「空気の圧縮」の単元で取り扱う実験道具が児童の概念形成に及ぼす影響を捉え,それらの道具の適切性を明らかにするように試みた。その結果,授業の中での概念形成が,取り上げる実験道具の相違によって影響を受けることが明らかにされた。
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山崎 充裕
2010 年25 巻2 号 p.
71-74
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
熊本高等専門学校熊本キャンパスでは,休日や長期休暇を利用して,近隣の小学校や公民館からの依頼を受け,出前授業等の科学教育支援活動を実施している。その中で,指導補助として参加する高専生の学習意欲,コミュニケーション能力の向上を期待している。特に,電子情報系の技術者育成の観点で,電子工作を取り入れた授業テーマの開発,実践に取り組んでいる。本稿では,これまでの実践について報告する。
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軸丸 勇士, 武井 雅宏, 大月 恒, 島田 達生, 木村 健, 堀 政博, 鶴岡 一廣, 松田 世梨菜
2010 年25 巻2 号 p.
75-80
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
大分県予算を用いた理科好きを増やし,将来のものづくりを支える人材を育てることなどを目的に子ども科学実験教室が大分市中心街の空店舗を借用して始まった。その実施期間は平成 22(2010)年 7 月~来年 2 月末まで。実験内容は殆どが日替わりであるが,工業や環境分野を含んでいる。その実験指導を担当するのは土日は現職が主で,それ以外を大学や高校の退職者が担った。
この期間を限定した常設施設での実験の他に,要望のあった県内市町村に出向いての出前実験教室もある。これらの実験に参加した児童生徒,保護者,一般参加者のアンケートから判った科学への興味や関心,実験教室のあり方について述べる
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三次 徳二
2010 年25 巻2 号 p.
81-84
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
大分大学の公開講座として行われている親子化石掘り教室は,大分市周辺の小学生と親を対象として,化石について学習する講座である。本来は子ども向けの講座ではあるが,子どもと一緒に参加する親も積極的に学習に取り組んでいる。多くの親子にとって経験したことにない化石採集の場面を中心に,標本整理や自宅におけるに学習についても焦点を当て,親と子どもが化石についてどのように学習しているか,当日の親子観察,聞き取り,アンケート調査から分析を行った。化石採集の場面では親と子どもの関わり方は多様であったが,多くの親はティーチング・アシスタント的な役割があることを自認していたようである。また,地学的な内容に触れる機会のなかった親にとって,講座は生涯学習の機会ともなっていた。
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̶第 6 回無垢島自然体験学習会の実践から̶
牧野 治敏, 高濱 秀樹, 三次 徳二, 田中 均, 島田 秀昭, 土田 理, 中西 史, 原尻 育史郎
2010 年25 巻2 号 p.
85-88
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
豊かな自然を題材とした自然体験学習会を,平成 17 年度より 6 年間に渡って実施している。この学習会は,複数大学の理科教育に関わる教員が指導,運営に携わり,子どもたちに自然体験を提供するユニークなものであるが,同時に,教員養成系の学生にとっては子どもたちへの実践的な訓練の場としても機能するよう設定している。大分県津久見市無垢島の特徴を最大限に活用するこの学習会は,理科の学習内容にとどまらず,離島という厳しい環境を,衣食住を通じて学ぶことができ,自然体験を総合的に体得する活動となっている。さらに,地域の住民や自治体との密接な協働が突発的な天候の変動等にも対応できるプログラムのためには重要であることが明らかになった。
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上松 英介, 大村 詠一, 岸木 敬太
2010 年25 巻2 号 p.
89-94
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
学習指導要領の改訂により,先端科学技術への認識を深めることがこれまでに比べ重視されるようになった。そこで先端科学である超伝導現象におけるゼロ抵抗の観測を学校の理科室程度の環境でもできるような実験方法の開発に取り組んだ。実験にはこれまでよく使用されてきたセラミックのイットリウム系超伝導体ではなく,線材化されたビスマス系超伝導体を用いた。また簡易な温度調節器を作成することで超伝導体の温度調節を容易にした。これらによって,障害となっていた超伝導体の強度の弱さと実験操作の難しさを解消することに成功した。その結果,定性的ではあるが,ゼロ抵抗や超伝導状態から金属の性質を示す状態への転移の様子をはっきりと観測することができた。
加えて,線材化されたビスマス系超伝導体をリング状にすることでマイスナー効果を観測できることも確認し,セラミックのイットリウム系円形超伝導体を用いるよりも単価を安くして観測できることがわかった。
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渡邊(村山) 真紀, 矢治 健太郎, 北本 俊二
2010 年25 巻2 号 p.
95-98
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
立教大学理学部では,2005 年秋より「理数教育連携を通じた CBLS プログラム~豊島区との理数教育連携による専門教育プログラム」を進めている。CBLS とは,Community Based Learning in Science Education の略で「地域に根ざした科学教育」を意味する。本プログラムは,理学部学生が小・中学生を対象とした算数・数学や理科の教育企画を作成し,それを地域の小・中学校で実践するという新しい形の教育プログラムである。この活動を通して学生の主体的学習能力と科学的素養を高めることを目的としている。また一方で,学生が作成した教育企画を通して地域における理数教育に貢献することを目指している。これまで 5 年間の活動とその成果および今後の課題について紹介する。
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高田 有紀美, 佐藤 寛之
2010 年25 巻2 号 p.
99-102
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
これまでの受け身姿勢の学習形態からの脱却を図り,自らの行動を想起し実際に何かを行うというような自己制御的に学習するためには,自らの学習を振り返り(把握し),学習の進捗状況を調整することが必要となる。そこで本研究では,理科授業場面において子ども自身が必要な情報を吟味して検討できるように学習支援の手立てを改善し,粒子概念の形成過程における学習の進捗状況の把握と調整の様態について精査することを試みた。授業実践に先立って実施した意識調査から,調査対象の半数以上の子どもは,授業の中で学習課題やこれまで習ったことを思い出したり,関連付けて考えたりすることを意識していることが明らかとなった。しかし,多くの子どもが自分の勉強のやり方について自信を持っていないことも同時に明らかとなった。
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甲斐 初美
2010 年25 巻2 号 p.
103-106
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
本研究では,中学校における理科授業を構成する重要な要因である「個人的構築場面」と「社会的構築場面」を充実させるための手立てとして,7 つの学習指針を提案し,それを 2 年間の理科授業において実践していくことで,それらの実践と子どもの学習意欲の変遷との関連を分析することとした。その結果,次の2 つの点が指摘された。
(1) 学習指針によって,考えることを強く要求しているため,どのように「考え」,その成果を「記述」すればよいのかについての見通しがつき,実際にそれが行えるようになるまでに,理科を得意であると感じる子どもが,一時的に減少すると考えられる。換言すれば,このような指導には,時間を要するということがいえる。
(2)2 年間の継続的な授業実践によって, 学習指針に示すような理科学習に対する教師の価値意識が,子ども自身にも
内在化されていくと考えられる。したがって,学習指針に教師が価値を見出し,その意義を授業実践によって,子どもに表明していくことが重要である。
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―概念の適用範囲に着目して―
川上 泰司, 坂本 憲明, 花村 幸次郎
2010 年25 巻2 号 p.
107-110
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
本研究では,中学校の理科授業の中で用いられる「花」の概念に着目し,その適用範囲を定めるために有効な授業方略を,中学生を対象とする調査を実施しながら実践的に検討することを目的とする。授業実践と各種調査によって以下の結果が得られた。
(1) 生徒の実態として,マツの花は「花」として認識しにくい傾向があることがわかった。
(2) 「花」単元において構想した授業方略が,マツの花の理解の向上に一定の効果を示した。
(3) 境界事例としてドクダミを提示する際には,タンポポの先行知識が補助的に作用することがわかった。
(4) 調査問題で示した場面において,一貫して演繹的な見方を示した割合は限られていた。
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西野 秀昭
2010 年25 巻2 号 p.
111-116
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
ヤマトヒメミミズ Enchytraeus japonensis は,有性生殖に加え,「破片分離」による数体節からなる断片から完全な個体を再生するユニークな無性生殖によっても増殖することができる.中学校理科「生物の成長とふえかた」の単元において,有性生殖は身近でもあり,学習における類例には事欠かない.しかし無性生殖は,単細胞生物の細胞分裂などの類例しかなく,有性生殖は多細胞生物で行い,無性生殖は単細胞生物で行うような印象となってしまう.生殖の方法は,生物種と同様に多様であり,子孫の残し方の工夫は,生命尊重の概念や生命への畏敬の念にもつながる学習の対象となるものと考えられる.本研究では,破片分離という珍しい無性生殖法に着目し,ヤマトヒメミミズの破片分離の人為的誘導を中学校でも実施できるよう検討した.また,ヤマトヒメミミズの破片分離を導く別の簡易な方法として,培地の寒天を市販の食用寒天に置き換える方法を見いだした.この方法では,市販品を用いることで,経費も安価で済み,生徒各人が自分の寒天培地上でヤマトヒメミミズを培養するだけで破片分離による無性生殖を導くことができる.「生物の成長とふえかた」単元への導入に際し,本研究で示す観察・実験は寒天培地にヤマトヒメミミズを移して観察するのみで容易であり,実験の成功体験もほぼ確実であることから,中学校理科授業での効果が期待される.
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~中学校理科教員への生物領域実験講習を通して~
坂本 祐輔, 正元 和盛
2010 年25 巻2 号 p.
117-120
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
理科中心教員養成のパーツ開発としてだ液のはたらき実験(DH実験)とDNA抽出実験の補助を行った。DH実験では事前準備と講習の補助をすることで実験方法と講習の全体像をつかみ,DNA抽出実験では実験方法の検討と準備,講習の実験の手順やポイントを実演しながら示した。講習補助を通して,実験の技能や知識,また,準備など講習の実務に関することを修得できる。
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-熊本県人吉市大畑地先を例として-
内田 暁雄, 三宅 由洋, 田口 清行, 村本 雄一郎, 田中 均
2010 年25 巻2 号 p.
121-124
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
プレートテクトニクスの教材は,教科書や資料集では地震や火山活動,造山活動等の単元の図・表・写真等で学習することが多いようである。本論では,子ども達が野外観察をしたときにプレートテクトニクスを実感させる教材としてメランジェを取り上げる。メランジェとは一般に“地図に描ける大きさで地層としての連続性がなく,細粒の破断した基質の中に色々な大きさや種類からなる礫・岩塊を含むような構造をもった地質体”として定義されている。熊本県人吉市大畑地先には,陸源物質からなる破断した砂岩,砂岩頁岩互層の中に海洋地殻を構成していた枕状溶岩(玄武岩),遠洋性堆積物である赤色~白色チャート,赤色珪質泥岩等が一つの露頭で観察することができる。すなわち,形成場所や形成時代が異なるさまざまな岩相が一つの露頭で観察される理由を考えさせ,理解させることが子ども達にプレートテクトニクスを実感させることに繋がる教材と考えている。
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山中 美季, 飯野 直子
2010 年25 巻2 号 p.
125-128
発行日: 2010年
公開日: 2018/04/07
研究報告書・技術報告書
フリー
人間の活動が様々な自然環境の変化と関わっていることを理解させるためには,身近な自然環境を調査させることが有効である。そこで本研究では熊本の衛星画像を利用して生徒たちに熊本の植生と温度の関係を調べさせる教材を制作し,授業実践を行った。
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