日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
36 巻, 6 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
表紙・目次
発表
  • 隅田 学, 原田 勝行, 西宮 裕美子
    2022 年 36 巻 6 号 p. 1-4
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,コロナ禍において,愛媛大学とヒューマンホールディングス株式会社並びにヒューマンスターチャイルド株式会社が連携し,インドネシアのデイケア・学習センターの幼年児を対象に,大学生がオンラインでSTEAM教育実践を行った事例報告である.「野菜(Vegetables)」をテーマに,2001年3月1日から5日までの5日間,毎日約40分,現地の教員によるサポートを得ながら,子どもたちにオンライン(Zoom)にて保育を実践した.野菜のシルエットクイズや観察,歌,折り紙創作などのオンライン保育活動を通して,幼児期のSTEAM教育の可能性が示唆された.同時に,オンラインでの英語コミュニケーションの難しさや,モニター前での活動による制約の課題もわかった.事後アンケートの結果から,参加した大学生の参加度に関する自己評価は高く,90%以上の回答者が今後またこのような海外の幼稚園などでの保育実践の機会があれば参加したいと回答した.

  • 遠藤 ももこ, 竹中 真希子
    2022 年 36 巻 6 号 p. 5-8
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    筆者らは,高等学校美術Ⅰのデザイン分野において,建築家とコラボレーションしたサスティナブル建築を題材とした授業を開発した.本研究では,授業後に生徒に実施したアンケートから,授業に参画した建築家の存在は生徒らにどのように捉えられていたのか,また,授業の過程ではどのような領域横断行動があったのか,題材としたサスティナブル建築について生徒の見方が変わったのかについて検討した.結果からは,生徒らは建築家が深く関わった活動に興味深さを感じていたことがわかった.数学,理科を始めとした他教科の学びを活用して課題を解決していることを認識できている生徒は7割り程度であった.また,ほぼすべての生徒が授業後に建築物に対する視点や感じ方が広がったと思っていることがわかった.

  • ミニ科学博物館の展示制作を通して
    江草 遼平, 木村 優里, 辻 宏子
    2022 年 36 巻 6 号 p. 9-12
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,人文系学部・学科に所属する学習者らを参加者としたモノづくりを中心とした実践を構築し,そのデザインメソッドの有効性について評価することである.STEAM教育の推進が叫ばれる現状において,人文系学部・学科におけるSTEAM教育の実現が課題の1つである.理数系科目に苦手意識を強く持つ傾向にある人文系学部・学科等におけるSTEAM教育のためのコースデザインの開発として,Learning by Designの枠組みに沿った実践のデザインを行い,SDGsの目標7「エネルギーをみんなに,そしてクリーンに」をテーマとして採用し,小学校児童を対象とするミニ博物館の展示製作を中心としたプロジェクト型の実践を行った.実践の結果,学生に想定された探究的活動と創造的活動の往還が見られた.

  • 北澤 武
    2022 年 36 巻 6 号 p. 13-16
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,年間を通じて児童1人1台端末を活用したSTEAM教育に取り組む都内小学校を対象に,この研究授業の評価や,研究協議会の在り方について検討した内容について報告する.具体的には,第一に,教員を対象とした事前事後の質問紙調査を実施し,教員のICT活用指導力について分析を行うことを試みる.第二に,電子ホワイトボード(Jamboard)を活用し,毎回の研究授業で「どの学習場面が,本時のめあての達成に影響を与えていたか」「本授業のどこがSTEAM教育であったか」の問いについて意見を共有し,デザイン研究アプローチに基づいて,デザイン原則を導くことを試みる.第三に,研究協議会後の振り返りとして,「研究授業と研究協議会を通じて,明日からの実践に向けて改善点やヒントになったこと」「講師や他の教員が発言したことを聞いて.自分とどのような相違点があったか」の問いを設定し,教員からの回答を試みる.

  • ラッシラ エルッキ T.
    2022 年 36 巻 6 号 p. 17-20
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    In this research, I examine the meaning of cross-cultural and comparative projects and research for STEAM education as an approach in Japanese (science) education. This examination is based on the author’s experiences, and both prior and on-going research focusing on gifted education and science education from a comparative perspective. Comparative and cross-cultural research is approached through four perspectives: 1) teacher competence and professional development, 2) importance of localization, 3) educational goals and material realities, 4) having several points of comparison. Though challenging to design and execute well, the cross-cultural approaches can contribute to knowledge development, increased understanding of the “home system”, policies and practices in several ways.

  • ―UNESCO-SEAMEO-STEM教育センターのオンライン“Power Up”プロジェクトの事例―
    大隅 紀和
    2022 年 36 巻 6 号 p. 21-24
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿に関連して、大阪からオンラインによるタイ国教師向けSTEM教育研修事業“Power Up”プロジェクトは、すでに報告したことがある(*1)(*2)。このプロジェクトは、バンコクに拠点を置くユネスコのSEAMEO (South East Asia Minister of Education) のSTEM教育センターが実施したもので、本稿では、あらためて経過と背景、およびタイ国の科学教育事情の一端を報告し、今後のSTEM教育と現職教師の研修プログラムのあり方を検討する参考事例として報告する。はじめて本事例を目にする人のために、一部の繰り返し部分があることを断っておきたい。

    このプロジェクトの基本テーマとした「電気」(electricity)は、タイでは小中学校・高校で多くの先生が苦手としていて、実験観察は厄介扱いされる傾向がある。加えて、このプロジェクトはリモートで、実験活動を主体にした実施を目指しただけに、きわめて挑戦的な取り組みとなった。

    本稿では、5日間のワークショップの3日目の終了時に実施した参加者72名のプロジェクトに対する評価結果のごく一部を中間的に報告する。プロジェクトのトータルの評価作業は、ホストであるバンコクのプロジェクト・チームが取り組んでいて、その詳細は後日のことになると思われる。

    本稿が日本国内の科学教育研究者、STEM教育に関心を持つ人たち、特に海外でも活躍しょうとする若い世代に参考になればさいわいである。なお記述内容はSEAMEOのSTEM教育センター公式のものではなく、筆者の個人の見解に基づくことを断っておきたい。

  • 松本 えみな, 福岡 直樹, 藤川 希美, 森田 裕介
    2022 年 36 巻 6 号 p. 25-28
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,インフォーマルな学びとフォーマルな学びを緩やかに統合したSTEAM教育の実践を目指し,小学校に併設された学童クラブにおいてSTEAMワークショップを実践した.探究活動と創造活動の観点から児童の発話を分析した結果,児童の発話分析から,探究や創造を協働的に行いながら活動していた様子が明らかになった.インフォーマルな学びの場は,時間や教科学習の枠組みを自由に設定できることから,学校教育と緩やかに連携しながら,効果的なSTEAM教育を実践可能であることが示唆された.

  • 田代 穂香, 瀬戸崎 典夫, 藤本 登, 森田 裕介
    2022 年 36 巻 6 号 p. 29-32
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,田代ら(2021)が開発した全天球型発電所探索アプリに「太陽光発電所」,「風力発電所」といった新たな素材を追加した.また,Webブラウザ上で実行できる仕様にすることで,使用OSにとらわれない利用を可能とし,汎用性の高い教材に改善した.さらに,改善した全天球型発電所探索アプリを用いたSTEAM教育における活用の可能性と本アプリの改善すべき点について,小学校教員を対象とした主観評価をもとに検討した.その結果,本アプリの各教科での活用の余地や,地理的感覚の醸成といった土地の特徴を学習する授業などに用いられる可能性が示唆された.一方,改善点に関して,「電力量のデータ」,「働く人の思いや考え」の追加などが挙げられ,本アプリに情報を追加することで,実際のデータを踏まえた数学的な学びに繋がり得る可能性や,当事者意識を持った学習を促す可能性が示唆された.

  • 木村 優里, 辻 宏子, 森田 裕介
    2022 年 36 巻 6 号 p. 33-36
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,統計に関わる算数科での学びを基盤とし,その学習を実社会の問題の発見・解決に活用していく教科横断的なSTEAM教育の授業を考案し,その際の児童の実態を明らかにすることである.そこで,小学校算数科の統計的な内容,とりわけ,「D データの活用」の「②統計データの特徴を読み取り判断すること」に着目した.そして,実社会の問題として自動車の安全性を取り上げ,その問題解決のために,交通事故に関する統計データを読み取り,活用して,課題設定及び解決する授業を考案した.統計データの読み取りと活用に関する児童の実態を調査した結果,児童が設定した課題の約半数が統計データに基づいていたことが示された.

  • 田中 若葉, 大谷 忠
    2022 年 36 巻 6 号 p. 37-40
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,総合的な学習の時間等においてSTEAM教育の推進が求められている現状下において,総合的な学習の時間の授業を有効に実践している小学校にてSTEAM教育の視点を取り入れた探究と創造の往還による授業実践を試みた.その授業実践を通して,STEAM教育の視点から,既往の総合的な学習の時間における課題を抽出するとともに,より探究学習を推進できる授業実践を検討した.その結果,総合的な学習の時間において示されている既往の学習過程に新たに創造活動を取り入れた指導計画を実施することができた.また,授業実践後における児童の意欲に関する分析結果から,従来の環境保護学習に対する探究活動をより発展させる学習として,STEAMのAやEの拡散的及び収束的な創造活動の視点を取り入れることにより,従来の探究活動への意欲を促進させる効果が認められた.一方で,授業実践後におけるSTEAMのSやMに対する児童の学習意欲に関しては,調べたことや実験したこと等の探究したことを製作等の創造活動へと活用しようとする側面においては課題が抽出された.

  • アメリカ初等科学教育のCOVID-19に関する単元を事例として
    荒谷 航平, 丹沢 哲郎, 郡司 賀透
    2022 年 36 巻 6 号 p. 41-44
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,新型コロナウイルス感染症に関する第3-5学年用の単元「自分自身や家族,そして,コミュニティを大切にするために,どのような決断をすればよいか?」(Open Sci Edu, 2021)の特色を明らかにすることである.この単元の目標,構成,学習内容,評価,そして指導上の配慮事項について分析した結果,次の2点が特色として指摘された.1点目は,本単元の範囲が児童,家族,そして児童とその家族が属するコミュニティにまで及んでいることである.2点目は,新型コロナウイルス感染症に関わる様々な経験や感情に配慮しながらも,科学を軸として,科学と社会や個人との関係についての内容が取り扱われていることである.

  • 竹中 真希子, 遠藤 ももこ
    2022 年 36 巻 6 号 p. 45-50
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,教育の一つの潮流として推進されてきているSTEAM教育について,これからの人材育成に向けた教育政策の動向から整理するとともに,日本の学術雑誌でこれまでにSTEAM教育について記された論文を概観し,STEAM教育を進めていく上での手がかりを探った.STEM/STEAM教育を概括した4本の論文から,STEM教育やSTEAM教育については,内容領域と教育の方法の二側面から語られていることがわかった.ただし,それらは非常に密接に関わっているため混同しやすい.ArtとArtsで捉えが複数あるSTEAM の“A”については,内容領域として捉えるものと思考の方法として捉えるものがあることがわかった.

  • STEAM教育の実践の意義
    渡辺 信, 青木 孝子
    2022 年 36 巻 6 号 p. 51-54
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    紙工作は美術、サッカーは体育と分類し、その個々の活動の中にはScience(科学)は存在しないと考えている。学問の分化は人類の思考過程をも分化してしまう。「サッカーボールの中に秘められた数学を探す」から出発した教材は、具体的に作ることから始めて実際に手の中にサッカーボール置くことから始まった。知識を前提とした教育活動はTechnology導入によって大きく変化している。現在のような分化した効率の良い学問取得方法では新しいアイディアは生みだすことはできない。サッカーボールを作る感性とその中に存在する知識としての理性を考え、「感性と理性」の共存した学問の教育を考えた。STEAM教育が目指すことは一人の個人としての全体的思考の必要性と、物事を多角的に見ることによって、新しいものの創造にかかわる学習活動の重要性を指摘する。正しい横断的な思考とは何かを、数学教育を前提として、Technology社会にふさわしい教育活動の在り方を問う。

  • ―ワークショップ「SCN宮城」での現職教員との交流を通して―
    笠井 香代子, 窪田 篤人, 菅原 佑介, 猿渡 英之, 渡辺 尚
    2022 年 36 巻 6 号 p. 55-58
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    2021年3月より,教員養成課程の学生を対象とした「生涯学び続ける教員(イノベーティブ・ティーチャー)」育成システムとして,化学実験を中心としたワークショップ「SCN宮城」や,東北地域の教員を主な対象とした「教師のための化学教育講座」に宮城教育大学の学生が継続的に参加し,「学び続ける教員像」をすでに確立している先輩教員と交流するプログラムを実施した.「SCN宮城」は主に宮城教育大学の化学実験室を会場として2022年4月までに10回開催され,計41名の学生が参加した.「教師のための化学教育講座」は2021年8月の2日間に実施され,9名の学生が参加した.参加者アンケートや進路調査より,本プログラムが「生涯学び続ける教員」の育成に寄与できたことが伺えた.

  • 野口 大介
    2022 年 36 巻 6 号 p. 59-64
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    大学における分析化学実験では,配位数6のカルシウムイオンCa2+にエチレンジアミン四酢酸イオン(EDTAアニオン)が六座配位子としてキレートした錯体の化学構造が示されることが多い.しかし,そうした構造であることの根拠となる学術論文は引用されておらず,文献によっては異なる構造が示されている.そこで,本研究ではアルカリ土類金属イオンをキレート配位したEDTA錯体の結晶構造を報告した研究論文を文献調査によって体系化した.その結果,12種類の結晶構造のいずれもが配位数6の中心金属イオンにEDTAアニオンが六座配位子として配位した錯体ではなく,配位数が6より大きいものや,六配位座数未満のEDTAアニオン配位錯体が多いと判明した.また,溶存状態におけるCa-EDTA錯体であっても,必ずしも配位数6のCa2+にEDTAアニオンが六座配位子として配位しているとは限らないことを示す分光学的研究も見受けられた.従って,アルカリ土類金属-EDTAキレートの配位構造として誤解を招きかねない説明をすることは,なるべく避けるべきだろう.

  • ―学力テスト実施結果に基づく分析―
    横田 康長, 赤松 直, 蒲生 啓司
    2022 年 36 巻 6 号 p. 65-68
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    高知県の中学生が新学習指導要領に基づき学習を進める中で,学習のどこでつまずいているのか,つまずきの原因は何なのか,どのような授業展開を加えることにより学習内容がわかりやすくなるのかを明らかにするために,全国学力・学習状況調査,高知県学力定着状況調査(高知県版学力テスト), 高知県立高校入試の結果を利用してつまずきを分析した.その結果,正答率が40 %以下か、無答率が10 %以上のもので、領域ごとにつまずきの原因になっていると思われる内容をピックアップできた.また、各学力テストの報告書で繰り返し示されていた課題を整理し項目ごとに集計することで授業の形式に関わる課題を5点見けることができた.また、各学力テストの正答率が特に低い(10%未満)問題の特徴を調べていくと,学習内容で誤解が多いか,理解が不十分であり重点的に取り組まなければならない内容を5つにまとめることができた.

  • ~大学生を対象とした一次調査~
    林 敏浩
    2022 年 36 巻 6 号 p. 69-72
    発行日: 2022/06/04
    公開日: 2022/06/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,オンライン小説(Web小説)として,ファンタジー世界(異世界)を対象とする作品が多く発表されている.特に,異世界モノの漫画や小説が書店にあふれており,同ジャンルのアニメ番組が多く放映されており,現在の若者を中心とする文化の一角になっている.本研究では,ファンタジー世界に登場する魔法の原理や仕組みを説明することを課題として,現実の物理法則だけでの説明や少ない仮説の導入での説明を試行錯誤する教育実践の設計を試行する.そのため,本研究の初期フェーズとして,このようなメディアに日常的に触れている若者世代(大学生)がファンタジー世界の魔法現象に関してどのようにその原理を理解しているか調査を行っている.本稿では魔法現象の科学的解釈に関する質問紙調査による一次調査結果について報告する.

奥付
feedback
Top