本研究は次の 2 つを目的として行った。1 つは生活科と理科の教科書の内容の関連性を明らかにすることである。もう 1 つは,生活科の学習における児童の記述内容を記録カードから抽出した後,理科の学習の基盤となる気付き(科学性の芽生え)を類型化し,生活科と理科の接続の観点から考察することである。 生活科の教科書の分析は,まず自然に関わる体験活動に関する単元と自分自身の成長に関する単元とに大別した。次に自然に関わる体験活動について 3 年生以降の理科の学習内容に関連する内容を抽出するとともに,生活科と理科との関係性を検討した。記録カードの分析については,すべての対象児童の記述からキーワードを抽出し,科学性のある記述とその他の記述に分類した。 その結果,以下のことが明らかになった。(1)生活科の自然に関わる体験活動は,「季節の変化と生活」「自然やものを使った遊び」「動植物の飼育・栽培」の 3 つに分類できた。これらの単元は,科学性の芽生えの視点をもつことにより,3 年生以降の理科の学習の基盤として位置づけられた。(2)科学的な記述は,「自然に関わる体験活動を通した原体験的な事実への気付き」「比較」「因果への気付き」「活動への意欲」の 4 つに類型化できた。各類型の気付きは,教員が適切に評価し,指導に生かすことで理科の学習の基盤となることが示唆された。
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