「月の見え方」など,天体現象を理解するには,視点移動能力など空間認識能力の発達は欠かせない。筆者らは,これまでに,「月の見え方」についての理解を促すため,AR 技術を利用して教材を開発している。この AR 教材は,学習者が平面図を手がかりにして「月の見え方」を理解するために開発したものであり,タブレット端末のカメラで平面図を撮影すると,その平面図の画像上に3D モデルが重畳表示されるものである。中学生を対象とした授業実践により,その教育効果は明らかになっている。本研究では,学習者が AR 教材を利用することで,「月の見え方」に関する空間認識をどのように変容させるのか調査した。その結果,AR 教材を利用することで視点移動は比較的容易に理解し定着するが,「球形・左右概念」は,概念を組み合わせて使うことや,視点移動の不十分さから難易度が高い課題であることが明らかになった。