日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
36 巻, 2 号
選択された号の論文の46件中1~46を表示しています
表紙・目次
発表
  • ―小学校6年生のスキージャンプ問題への取り組みの場合―
    大谷 洋貴
    2021 年 36 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
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    数学的プロセスの1つであるアーギュメンテーションは統計学習においても生じるが,それがどのような構造的特徴をもつのかは明らかではない.本稿では,アーギュメンテーション分析の方法を用いて,小学校6年生のスキージャンプ問題への取り組みにおいて生じた統計的アーギュメンテーションの構造を分析した.結果として,その大局的構造は証明活動の場合と同様に源泉構造を有し得る一方で,アーギュメントの連鎖がほとんど見られない,多数の論駁がある,論駁に対する論駁がある,論拠が論駁として使用される,同じデータから異なる結論が支持されている,といった特徴があることを指摘した.また,その局所的構造として,文脈的知識が論拠や論駁として用いられたが,すべてのアーギュメントで用いられてはいなかったこと,その論拠の裏付けが検討されていないこと,論駁の否定作用が弱いこと,といった特徴があることを指摘した.

  • 山本 将大, 福田 博人
    2021 年 36 巻 2 号 p. 7-12
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
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    高度情報化社会による情報の量的側面の爆発的な増加に伴って,質的側面の保証として直観力の育成が今日において求められている.また,平成30年告示の高等学校学習指導要領では,生徒に対してベイズ的な考え方の学習機会は設けられていない.しかし,ベイズ的な考え方は高度情報化社会において重要な意味を持つため,ベイズ的な考え方についても学習する必要がある.そのため,ベイズ的な考え方に関連する代表的な問題である「3囚人問題」の困難性の原因を,数学的直観を視点として明らかにすることを本稿の目的とする.分析方法はまず,先行研究のレビューによって,数学的直観を同定する.その後,同定した数学的直観に基づき,「3囚人問題」における困難性の原因を分析する.分析結果として,市川氏が示すルーレット表現は3囚人問題のベイズ解の直観的納得において有効であるが,3囚人問題を解く際の数学的直観の手助けになることは困難であることが分かった.

  • 滝 奏音, 辻 宏子
    2021 年 36 巻 2 号 p. 13-16
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
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    学校教育ではめあてや問題文の一斉音読を指示する場面が多く見られる.算数の授業も例外ではなく,文章題を解く際に問題の音読をするよう指示する教師が多い.しかし,算数の文章題において音読を行うことの効果について検証している先行研究はない.そこで,本研究ではその実態を明らかにするため,学校教育に携わる方を対象に質問紙調査を実施した.「算数の授業中に,学級全体で問題文を音読することは効果があると思いますか.」の問いに対し,全体の78.6%にあたる教師が「とても効果がある」,「効果がある」を選択しており,肯定的な評価をしている割合が高かった.また,「問題文を音読するよう指示する際は,どのような意図で指示をしますか.」というアンケートをとった結果, 97%の教師が「問題場面を把握させる」という目的で文章題の問題文を音読するよう指示していると回答した.

  • 中尾 真也
    2021 年 36 巻 2 号 p. 17-20
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
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    本稿の目的は,開発した振り返りカード「LEADカード」における「Example」に関する枠組みを構築するための示唆を得ることである.そのために,事例をもとに「LEADカード」の「Example」に記述されている様相を同定すること,及び同定した様相について考察し,枠組みを構築するための示唆を得ることといった2つの研究課題を設定した.本稿では,小学校第5学年「立体の体積」を事例に研究課題の解決を試みた.

    その結果,「Example」に表れる様相として,「ⅰ)授業で扱った問題ではなく,自らが具体例を考えたもの」,「ⅱ)授業で扱った問題や図を使用し,数値を変えたもの」,「ⅲ)授業で扱った問題を数値等を変えずに具体例に示したもの」,「ⅳ)無記入」の4つを同定することができた.そして,「LEADカード」の「Example」に関する枠組みを構築する際,これらの様相を用いることができるという示唆を得た.

  • 雲財 寛, 川崎 弘作
    2021 年 36 巻 2 号 p. 21-26
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
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    本研究の目的は,理科における知的謙虚さ尺度を開発することであった.この目的を達成するために,教師11名を対象とした予備調査と小学生791名を対象とした本調査を実施し,理科における知的謙虚さの因子構造について検討した.その結果,「開放性」「一般化への慎重さ」「知性と自我の独立」という3因子構造からなる,完全版と短縮版の2種類の尺度を開発することができた.今後は,項目反応理論をもとに質問項目の特性についてより詳細に明らかにしていく必要がある.

  • ―中学校理科「電流とその利用」の単元における継続指導を例に―
    佐久間 直也, 中村 大輝
    2021 年 36 巻 2 号 p. 27-30
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    科学的探究において仮説は重要な役割を持つにもかかわらず,これまで理科の授業では仮説の立て方の指導がほとんど行われてこなかった.そこで筆者らは、複数事象の比較を通した仮説設定の段階的指導法を開発し効果検証を行ってきた(佐久間・中村,2021).本発表では,これまでの実践における課題の改善と新たな学級や単元における実践に取り組み,提案する指導法が一貫した効果を持つかを検討した.具体的には,中学校第2学年「電流とその利用」において継続的な実践を行い,授業時の仮説設定の質を評価した.その結果,提案する指導法は従来の指導法と比べて仮説設定の質の向上に相対的に高い効果があることが示された.その一方で,授業後のアンケートでは仮説設定が難しいと感じていた生徒も依然として多く見られたことから,今後は仮説設定の題材の工夫と継続的な指導によって苦手意識を軽減できるよう取り組む必要がある.

  • 宮内 しほな, 猪本 修
    2021 年 36 巻 2 号 p. 31-34
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    著者らは小学6年理科の単元「ものが燃えるしくみ」において,ろうそく火炎の特徴や空気の流れを実験的に可視化することに着目した教材づくりを試みた.従来,ものが燃えるときには炎に対して充分な空気の流れがあり,その空気の流れが酸素や二酸化炭素などの基質や生成物質を輸送することが説明されてきた.しかしそれらの多くは視覚的に捉えることができないため,直感的に理解にすることが難しい.そこで著者らは,燃焼中の空気の流れに着目し,シャドウグラフの手法を用いて流れの様子を可視化することとした.さらに,空気の流れを限定した実験系において,開口部の大きさに応じてろうそく火炎が不安定または振動することを見いだした.これらの現象は,火炎における自励振動と分岐と考えられ,実験的に詳細に調べた.これらの実験教材は,小学校の理科の授業においてものが燃える条件と空気の流れ方の関係を理解しやすくすることが期待できる.

  • 髙橋 海渡, 原田 勇希
    2021 年 36 巻 2 号 p. 35-40
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,興味をポジティブな感情(強度)と価値の認知(深さ)で捉える枠組みが提案されている.これまでの小学生を対象とした大規模調査では,理科学習,観察・実験への興味の強度を測定しているが,興味の深さを測定していないため,小学生の興味の構造が明らかになっているとは言えない.先行研究では,理科全般に対する興味について,強度と深さの両次元で捉えた調査は行われているが,観察・実験場面に特化した興味について,強度と深さの両次元で捉えた研究はない.そこで本研究では小学生の観察・実験に対する興味の構造を明らかにし,興味を測定できる心理尺度を開発することを目的とした.結果より,小学生の観察・実験に対する興味は,ポジティブな感情と価値の認知が直交する2つの次元で捉えられることが分かった。また,多変数との相関パターンの検討により,作成した心理尺度の妥当性が担保された。

  • 江草 遼平, 竹中 真希子
    2021 年 36 巻 2 号 p. 41-44
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,幼児教育における実践のためのSTEAM教材を開発することを目的とし,造形あそびをベースとした「まちづくり」教材の設計を行なっている.本稿では、幼稚園教諭免許状及び保育士資格取得のための教職課程を受講する短期大学生を参加者とし,この実践における参加者の活動及び改善点について探るためのパイロットスタディについて報告を行う.パイロットスタディでは,計3回の実践を通して,「まち」にあって欲しいものの検討と設計図作成,比較やアイデアの交流を含めた制作活動,マップへの配置と意見交換が行われた。参加者が作成したふりかえりシートの分析結果から,参加者が領域横断的な活動に従事した様子が示唆された。また、参加者から教材に関して良いと思われる点や実装に向けた改善意見を得た。

  • ―女子が男子の正答率を上回る問題と比較して―
    鸙野 彩花, 中山 迅
    2021 年 36 巻 2 号 p. 45-48
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    TIMSS2015及びTIMSS2019の中学2年生向けの出題に対して,男子の平均正答率が高い出題を選び,その傾向を明らかにした.出題分野別にみると,物理分野において男子の正答率が高い傾向があり,特に力学の出題において正答率が高く,宇宙や環境問題に関する内容での正答率も高い傾向にあった.問題形式では,選択式の出題で男子の正答率が女子を上回った.これに対して,女子は分野では生物と化学,出題形式では記述式が得意であるというそれぞれの特徴が明らかになった.今後,男子の学習を阻害することなく女子の理科への興味や理科学習への意欲を高めるための方策を検討するための資料とすることが期待される.

  • 竹中 優騎, 三島 圭一朗, 御園 真史
    2021 年 36 巻 2 号 p. 49-52
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,学習への関与を捉える概念として,エンゲージメントやラーニングエクスペリエンス(LX)が注目されている.本研究では,中本・御園(2020)が開発した「数学の学習に対するLXを測定するための質問紙」を中学校1年生に対し実施し,先行研究と同一の方法で,質問紙調査を行った.この結果,LXレベルの分布は,高校生の理数クラスを対象にした先行研究よりも広がり,本研究で使用した「数学に対するLXレベルを測定する質問紙」は,生徒の数学に対するラーニングエクスペリエンスが多様であることを捉えることができている質問紙であると考察された.

  • 山田 もも, 辻 宏子
    2021 年 36 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,算数科・数学科の授業におけるデジタル教科書の活用の現状と課題を明らかにするために,アンケート調査を実施した.デジタル教科書の活用が児童生徒の学習に効果的であると考える点について,数の概念や計算の仕組み,図形,数量の変化などを視覚的・動的に捉えることができることや,児童が自ら操作することで個別最適な学びが実現されることにより,児童生徒の理解が深まる点をあげる教員が多かった.また,デジタル教科書の具体的な活用の方法について,問題把握や問題解決の場面において問題や資料を提示する際に活用する方法や,児童の考え方を発表したり共有したりする際に活用する方法をあげる教員が多かった.一方で,紙の教科書の扱いやすさや,児童の「書く力」や「ノートにまとめる力」の重視から,多くの教員が紙の教科書や従来のノートやワークシートの使用を引き続き行う必要があると考えているという傾向が見られた.

  • 上田 凜太郎, 今井 壱彦
    2021 年 36 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿の目的は,AspectsとGrundvorstellungenを視点に複素数の定義活動を再考することである.研究の成果は以下の三点である.第一に,Greefrath(2016)をレビューし,概念定義においてAspectsと数学的概念のGVsに着目する意義を明らかにした.従来の概念定義-概念イメージの枠組みでは,学習者が特殊な概念イメージを一般化することによって誤った概念定義を導き出す実態が指摘されており,概念イメージ‐GVsと概念定義‐Aspectsへと枠組みを拡張することによって,上記の実態へアプローチする可能性があることがわかった.第二に,現行の我が国の高等学校数学教科書における複素数の定義の扱いを分析した結果,二次方程式の解を求めるという文脈化された定義と,脱文脈化された定義として記述されていることがわかった.第三に,複素数の定義活動におけるAspectsとGVsを同定し,その対応関係を明らかにした.複素数の概念のAspectsとして,「二次方程式の解」のAspectと「iに関する加減乗除で閉じた集合」のAspectを同定した.また,複素数の概念のGVsとして,4つのGVを同定し,Aspectとの対応を明らかにした.

  • Comparison between socio-critical modeling and word problem solving
    Yusuke UEGATANI, Ippo ISHIBASHI, Yuichiro HATTORI
    2021 年 36 巻 2 号 p. 65-70
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    This study aims to identify a potential factor in students’ narrow perspectives when engaging with trans-scientific issues. The main structure of this study is divided into the following two parts. First, based on existing empirical data, we reviewed the theoretical issue of conceptualizing critical thinking within mathematics education research and proposed a new conceptualization as equitable treatment of multiple perspectives from a superordinate ethical perspective. Second, from this perspective, we retrospectively analyzed whether students disrespected a probabilistic perspective in solving and a traditional word problem with conditional probability. Consequently, we found that students tended to take a probabilistic perspective in solving the traditional word problem. It is suggested that excessive information in word problems narrows their perspective rather than the authenticity of the problems.

  • 支援する者/される者の非対称性に焦点を当てて
    舟橋 友香
    2021 年 36 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿の目的は,授業における数学的知識の定着を意図した場面で,一人では解決に至らない学習者が,他の学習者の支援を求めて生起した相互行為に焦点を当て,二者間に成立している関係及びその関係に付随する要点を明らかにすることである.そのために,中学校第2学年の数学科授業で観察された2名の生徒による8分6秒にわたる相互行為の過程を分割し,焦点化されていた数学的対象を特定した上で,移行の契機や具体的な文脈における当事者の知覚の解釈を行なった.

    分析の結果,数学的対象を提示した数やそれらの移行の契機から,支援される側の学習者にも相互行為の対象を定める裁量が与えられていることがわかった.二者間には,支援する者から支援される者への一方向的な関係ではなく,相互に情報を拾い合い,影響を与え合う関係が成立していること,そのような関係において支援される者に与えられた自由度が重要であったこと,そして相互行為の結果双方にとって互恵的な営みが生成されていることを指摘した.

  • 下村 岳人
    2021 年 36 巻 2 号 p. 77-80
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    算数科に限らずICT機器を用いた学習風景が一般的な画となりつつある現在の教室において,教室で仲間と学ぶことの教育的意義や育成すべき力の具体的かつ明瞭な提案が求められている.そのような状況に鑑み本研究では,教室で展開される算数科の授業を認識主体による数学的知識を構成する営みという立場に立ち,数学的知識の構成に求められる相互作用の一側面を数学的交渉という概念で捉え,認識主体の数学的知識の構成に影響を与える客体との数学的交渉の特徴について検討を行った.具体的には,研究アプローチとしてはデザイン実験を採用し,小学校第3学年を対象にプレテスト,ポストテスト,実験授業を実施するとともに,発話行為論を理論的視座とすることからの分析及び考察を行った.分析結果からは,数学的交渉の特徴の一つとして間接的な数学的交渉であっても数学的知識の構成に影響を与えうることが示唆された点が,本研究の成果である.

  • ―批判的思考力の育成を目指して―
    内藤 真人
    2021 年 36 巻 2 号 p. 81-84
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    内藤・日野(2020)では,社会的価値観を表出しながら日常生活と算数のつながりを意識している姿が見られたが,そこにどのような批判的思考力が働いているのかは分析できなかった.本稿では,図形の領域を題材にした社会的価値観を持ちながら考えることを取り入れた算数の授業において,どのような場面でどのような批判的思考力が働いている姿が見られるのかについて分析した.その結果,批判的思考力を働かせている姿として,導入の価値観の表出の場面では,(1)経験からなぜとび箱は台形なのかを社会的価値観を表出しながら考える姿.とび箱の歴史を振り返る場面では,(2)自覚的に問いを明確にしている姿,(3)図形を比較し,既習を生かして共通点を見つけている姿.とび箱の形を再考する場面では,(4)自覚的に問いを明確にしている姿,(5)導入での自分の考え(社会的価値観)を吟味し,数学的モデルを伴いながらより良い考えにした姿,(6)数学的モデルや社会的価値観に対して吟味している姿が見られた.

  • 河村 祐太郎, 福田 博人
    2021 年 36 巻 2 号 p. 85-88
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    これまでに蓄積されてきた算数と数学の接続研究は,「ある領域における」算数から数学への移行に関する考察であり,「全領域における」算数から数学への移行に関するそれではない.そこで本稿では,算数それ自体と数学それ自体の差異の同定を目的とする.数学は言語であるが故に,算数から数学へ変容は記号の変容と言っても過言ではない.それ故に,目的の達成のために記号論を視座とする.メタ言語である図的表記,表・グラフ,数式は,自己表出性の有する図的表記と表・グラフ,そして対象指示性を有する数式へと分類される.この点に基づき,小学校6年生と中学校1年生の教科書を分析した.その結果として,自己表出性と対象指示性の2分法の観点からはそれらの差異をほとんど確認できなかった一方で,メタ言語間の関連付けの観点からは問題解決を考える際にメタ言語の使用として単数から複数への変化がみられた.最終的に記号論的差異は,メタ言語間の関連付けの度合いが高まっていることであると結論付けた.

  • 田中 詩温, 辻 宏子
    2021 年 36 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,幼児期の傾いた図形に対しての認識の難しさに着目し,その図形認識の育成に効果的な絵本を作成することを目的とする.そのために,まず図形認識の育成に有効な知育玩具の検討を行った.さらに,先行研究におけるの図形指導プログラムや小学校算数科との関連を照査することで,幼小接続期を対象として行うことの必要性を示した.これらを踏まえて,今後作成する,傾いた図形認識を育むためのパズル絵本の構想を創出する.

  • ―教科横断的な視点に着目して―
    五十嵐 敏文, 大谷 洋貴
    2021 年 36 巻 2 号 p. 95-98
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
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    初等理科教育においては,自然の事物・現象についての問題を科学的に解決するために必要な資質・能力の育成が重要な目標である.この重要な目標を達成するためには,学校現場において科学的問題解決型授業を実践することが必要であり,そのためには教師になる前の大学生に問題解決能力を習得させることが重要であると考えた.そこで本研究では,教職希望学生の問題解決能力における課題を明らかとすることを目的としたアンケート調査を実施した.この調査結果をふまえて,問題解決能力の習得に関わる課題について言及する.

  • ―大学生を対象とした予備的評価―
    小林 駿平, 出口 明子
    2021 年 36 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,理科の学習におけるSTEAM教育を使用した授業実践として,そこでの中核的内容知識,理科の見方・考え方,教科横断の度合い,探究と創造の往還といった観点から新たな授業デザインを提案して,大学生を対象とした予備的な評価を行った.質問紙調査の結果,受講生らは問題解決や創造の活動を意識して取り組めており,授業後に問題解決や創造の活動を行うことへの自信度を向上させていたことがわかった.

  • 松峯 笑子, 舟生 日出男, 鈴木 栄幸, 久保田 善彦
    2021 年 36 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    我々の身の回りは科学に関連する情報で溢れているが,全ての科学情報が正しいとは限らない.より良い意思決定のためには,科学ニュースを正確に読み取る科学メディアリテラシーが必要であるが,未だ注目されていない.それを受けて筆者らは,「科学メディアリテラシーを俯瞰するチェックリスト」を活用した教育実践をデザインし,少人数を対象として試験的に実施した.そこで挙がった改善点から,今回より多くの学生を対象として,チェックリストが科学ニュースの評価に与える影響を確かめた.実践の結果,チェックリストが,科学ニュースを評価する際の批判的視点を持つ指標となり,科学ニュースの評価に影響を与えることが分かった.また,科学やメディアの認識が低く,事例を肯定的に捉える学生がチェックリストを使用したタイミングで批判的視点を持っていたことから,科学ニュースを正確に読み取るために必要な認識の補助的な役割を果たしていると考えられる.

  • 高寺 忠俊, 猪本 修
    2021 年 36 巻 2 号 p. 109-112
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    音の伝わり方と聴こえ方は, 中学校・高校における生物分野と物理分野にまたがる複合的な学習事項である。音源定位の仕組みは基本的な音の性質と感覚器官のはたらきにより理解する。本研究では,音源定位について左右の耳の時間差と音の大きさの関係を明らかにするために,左右の大きさの割合を変えて音源の位置が正確に特定できるかについて調べた。その結果, 左右の強度比が70%を下回ると高い精度での位置特定が出来ることが分かった。この左右の強度の違いは頭部による回折などによって現実には生じるものと考えられる。一方で,左右の音に強度の違いがなく時間差だけを設定した場合は定位の精度が良くなかった。以上のように音源定位は音の性質が深くかかわっており,中学校・高校での音や感覚受容を学ぶ上で適切な教材であると考えられる。

  • 牧澤 遼, 加納 圭
    2021 年 36 巻 2 号 p. 113-116
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
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    企業の提供するSTEAM教育プログラムに対して質問紙調査を導入することで今後のプログラム改善を促すことを試みた.企業がCSR活動の一環として実施する次世代育成事業は,学校教育においても実施・活用されることが期待されている.しかし,学校教育との連携においては評価方法や企業側による学校のニーズの把握不足等が指摘されており,普及していないのが現状である.そこで本稿では企業の提供するSTEAM教育プログラムの参加者に対して質問紙調査を実施し,その結果を提示した上で企業の担当者に対しても提供するプログラムに関する質問紙調査を実施した.結果,これまでの企業側への意識調査と比較すると担当者が学習プログラムに対して課題意識を持ち,今後の改善を示唆する結果が得られた.

  • 木村 優里, 関野 実里
    2021 年 36 巻 2 号 p. 117-120
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
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    本研究では,幼児期の科学教育における科学絵本の役割や活用の可能性を検討するための基礎として,領域「環境」のねらいや内容との関わりという側面から科学絵本の分類を試み,その実態調査した.調査対象は『かがくのとも』(過去5年分)とした.領域「環境」の内容の12項目に基づきチェックリスト(21項目)を作成し分析した.その結果,「自然などの身近な事象に関心をもつ(58%)」「身近な動植物に親しみをもって接する(53%)」「自分なりに比べたり,関連付けたりしながら考えたり,試したりして工夫して遊ぶ(51%)」「自然の大きさ,美しさ,不思議さに気付く(46%)」といった項目に該当する冊数が上位となった.つまり,領域「環境」のなかでも,とりわけ「(1) 身近な環境に親しみ,自然と触れ合う中で様々な事象に興味や関心をもつ」というねらいを達成するための活動や,発見を楽しんだり,考えたりする活動に関する内容を取り扱っていることが示された.

  • 今井 壱彦, 上田 凜太郎
    2021 年 36 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
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    本稿の目的は,AspectsとGrundvorstellungen(以下,GVs)を視点とした関数y= ax2の定義活動を再考することである.成果は,次の2点である.1点目は,定義活動において,AspectsとGVsを視点とすることの有用性を示したことである.Aspectsに注目することで,概念定義をより詳細に追跡することが可能となる.GVsに注目することで,概念イメージを数学内だけの内容を対象とせず,数学以外の内容をも対象とすることが可能となる.2点目は,関数y= ax2 の定義活動の際の,3つのAspects,4つのGVsを特定し,示唆されることを2点挙げたことである.その示唆から数学以外の内容に関するGVsの取扱いは,今後数学授業の際に意識していかなければならないことが明らかとなった.今後の課題は,GVsの記述的側面を踏まえていくことである.

  • 池田 真菜, 辻 宏子
    2021 年 36 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
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    本研究は,文章題の解決における「図の活用のつまずき」に注目し,今後の指導の在り方を検討することを目的とする.これに対し本稿では,小学校教員免許を取得しようとする学生を対象とし,文章題解決において「児童に期待する図の活用」及び「学生本人が考える図の活用」について質問紙調査を実施した.その結果,教員免許取得を目指す大学生が児童に期待する図が9種類挙げられた.それらの図を示した意図や良さを分析したところ,「数直線図」がそれぞれの図の良さを全て持ち合わせていると考える.また,アンケート調査により,大半の大学生が児童に図を活用してほしいと考えており,その理由を分類したところ,「数直線図」が最も図を活用する意図に合っていることが分かった.一方で,「数直線図」以外の図にも良さがあり,必ずしも「数直線図」が最も扱いやすいと感じるわけではないことが示唆された.よって,児童に図を活用した文章題指導を行う際は,取り扱う図の良さを把握し,意図に合わせて児童に「数直線図」の活用方法を伝える必要があると考える.

  • ―「説明書をつくる」活動を具体的方略として―
    下村 勝平
    2021 年 36 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,算数科における説明に関する学習指導の一方略を提案し,その効果や課題を実証的に示すことを目的に,中学での証明の学習を踏まえた説明の能力育成として,小学6年が行う表記による説明に焦点を当てた.その具体的な方策として,学習において「説明書をつくる」活動を取り入れることによる効果検証を試みた.子どものワークシートの分析を通じて,本稿の方略によって,代数の計算処理に含まれる説明を顕在化させること,説明で述べるべき数学的内容を明確化させること,範例による説明の機会を与えることなどの効果を示した.しかし,本稿では,ワークシートの内容を分析したにとどまっており,子どもの示した内容は授業による効果も含まれているはずである.今後,授業においてどのように「説明書をつくる」活動が用いられるべきか,どのような教師の支援によって効果が発揮されるのかなどを精緻に捉えることが必要であると考えている.

  • 御園 真史, 近藤 孝樹, 横山 喬一, 中村 謙斗, 稲葉 利江子, 渡辺 雄貴
    2021 年 36 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,ナッジの原理を援用して自己調整を促すことを目的に開発されたNoTASシステムを活用し,数学の「文字式を用いた説明」(証明)を読む活動において,自分で意味が分からない思ったところにマーカーを引くといったアノテーション活動の中で収集されたアノテーションの箇所や時刻等の学習ログをもとに,証明理解のどこに困難があるのか検討した.この結果,自分にとって自然でない変形であっても,それが何のために行われているかを見通して理解すべき部分や,最初に仮定したことを利用して命題が真であることを主張していくといった証明の論理構造を把握する点に困難があることが示唆された.

  • 長沼 祥太郎
    2021 年 36 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,調査項目ごとにどれだけ「理科離れ」に分類される層が異なるのかを明らかにすることを目的とする.この目的のため,長沼(2020)の概念整理を参考にした.検討に際しては,回答の変動を評価するために相関係数を算出し,特徴的なものをサンキーダイアグラムで可視化した.高校生201名(男性47名,女性154名)が調査に参加した.その結果,①単純集計の結果から,項目ごとに理科離れと特定される層の割合が大きく異なること,②相関分析の結果,「科学・技術・研究」「理数系教科」「実験・観察・工作」「理系の進路」という分類を横断した項目間で,回答の変動が大きかったこと,③「理数系教科」という分類の中では,「生物」と「物理」で回答に大きな変動が見られたことが明らかになった.また,特徴的な変動を示した2例に関してサンキーダイアグラムで可視化した.本研究の結果から,調査に使用される項目によっては,理科離れとして特定される層が大きく異なる場合があり,理科の授業においても様々な場面において,理科離れしている生徒層は変化している可能性があることが示唆された.

  • ―炭酸水素ナトリウムの分別晶析―
    松岡 雅忠, 澁谷 銀河
    2021 年 36 巻 2 号 p. 147-150
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムは,日常生活において重要な位置を占めるとともに,中学校,高等学校の理科(化学)実験でしばしば利用される.炭酸ナトリウムの工業的製法であるアンモニアソーダ法(ソルベー法)は,高等学校化学の「無機物質の性質」の単元で扱われており,生徒実験を志向した教材開発も進められている.その多くは濃アンモニア水やドライアイス(もしくは二酸化炭素のガスカートリッジ)を使用する演示実験であり,生徒実験を行わせることはハードルが高い.

    今回筆者らは,塩化ナトリウム水溶液に炭酸水素アンモニウムを加えると,溶解度の小さい炭酸水素ナトリウムが析出する現象(分別晶析)に注目し,炭酸水素ナトリウムを経て炭酸ナトリウムへと導く実験教材の開発を行った.生徒実験に適した溶液・試薬の濃度を模索するとともに,分別晶析および,炭酸ナトリウムの二段滴定や炭酸塩の性質の調査を含む実験プログラムを開発した.

  • ―マルチレベルモデルを用いて―
    亀山 晃和
    2021 年 36 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,観察・実験に対する心理的安全性の理解を深めるため,マルチレベルモデルを適用した分析を行った.その結果,以下の4点が明らかとなった.第一に,観察・実験に対する心理的安全性は,複数のレベルからなる心理変数である.第二に,観察・実験に対する心理的安全性の分散のうち生徒レベルの分散が半分を占め,実験グループレベルの分散はわずかである.第三に,多くの観察・実験グループでは,グループ内で相対的に心理的安全性が高い生徒が多数存在するが,一部の生徒は他のメンバーに比べ心理的安全性が低い状況である.第四に,観察・実験グループの心理的安全性が高いほど,グループ内で相対的に心理的安全性が高い生徒が多くなり,その一方で,グループ内で相対的に心理的安全性が低い生徒とその他のメンバーの心理的安全性の差は大きくなる傾向がある.

  • 松本 昌也, 清水 克彦
    2021 年 36 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    これからの数学教育では, 数学を既成のものとみなすのではなく, 新たな概念,原理や法則を創造していくような活動が求められている.また数学を作っていく活動を通して, 創造性の育成や問題解決力の育成をしていく必要がある.このような数学を作っていく活動の1つとして実験数学がある.本研究では実験数学を「数学的対象に対して, 帰納的にデータを集め,観測することで, 規則性を推測し, さらにその推測が一般的に成り立つのかを(必要に応じてコンピュータを用いて)批判的に調べる活動」と定義し,実験数学を用いた数学的活動として,クローズドな実験数学活動とオープンな実験数学活動に着目した.本稿では, クローズドな実験数学活動とオープンな実験数学活動の特徴の明確化とそれぞれの教材例を開発し, 実験数学を取り入れた授業を提案する.

  • 下村 早紀
    2021 年 36 巻 2 号 p. 163-166
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,問題解決型の授業におけるまとめのあり方についての新たな解釈を試みるとともに,そのまとめの生成過程を詳細に捉えていくことを試みた.まとめは,Stiglerらも注目をした,日本の独自性がうかがえる教授概念ではあるが,そのあり方については課題も指摘されてきている.そこで,岩崎ら(2009)や井口ら(2012)の論考を手立てとすることから,まとめのあり方に関する新たな解釈について議論した.そして,子どもの知識構成の過程をまとめの生成と捉えることから,初源的まとめ,局所的まとめ,大局的まとめの三つのまとめを提案した.さらに本稿では,小学校第三学年の,正三角形である理由を説明することを主たるねらいとした実験授業を計画,実施し,子どもの知識の構成過程ともいうべき局所的まとめの生成過程の様相を捉えることを試みた.調査結果の分析からは,他者との相互作用を経て局所的まとめが生成される様子が確認された.

  • 新井 拓夢, 舟橋 友香
    2021 年 36 巻 2 号 p. 167-172
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿の目的は, 統計的探究プロセスのPPDACサイクルを基盤とし, 複数のPPDACサイクルを内包するケーススタディ型の教材を開発することである. 具体的には, 奈良市東市地区を事例に, 避難所設置に関する教材を開発した. 本教材は, 問題解決の過程で統計データの処理のみならず, 円の性質やボロノイ図を用いた幾何学化を必要とする特徴をもつ. 問題解決の過程には, 複数のPPDACサイクルが内包されており, 協働的な問題解決によって効率的に最適解を探究する構造となっている. 本稿では特定の地域に基づく展開を想定したが, 焦点化した地域の固有性と他地域に応用した際の転用の可能性について整理することが, 今後の課題である.

  • 渡辺 信, 青木 孝子
    2021 年 36 巻 2 号 p. 173-176
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    コロナ感染症は授業形態の学びの方法に大きな変化を及ぼした。Onlineでの授業をせざるを得ないという外側からの力によって、今まで考えてもいなかった授業の形を経験した。対面授業はいつまでも変化しないと思われていたことが、Online授業を経験したことによって変化せざるを得ない状況になった。Hybrid授業に変化すると同時に、多くの改革が生じるのではないかと考えられる。特に、この経験から学生に起こった変化から教育が変わる予兆が現れた。学校教育はどこに行くのかを考える。今後対面に戻っても、我々は多くの変化を受け入れなくてはならないのではなかろうか。

  • 杉山 雅俊, 江草 遼平, 手塚 千尋, 辻 宏子
    2021 年 36 巻 2 号 p. 177-180
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,STEM/ STEAM教育に関連する教科の学習指導要領解説を比較分析し,日本型STEM/STEAM教育の構築に向けた示唆を得ることであった.この目的に迫るために,算数,理科,生活,図画工作の解説の第2章の記述を対象として,対応分析及び「問題」と「創造」が出現した段落数の算出を行った.対応分析の結果,「問題」と「解決」が算数と理科に特徴的な語であること,「創造」が図画工作に特徴的な語であることが見出された.また,「問題」と「創造」が出現した段落数と割合を算出した結果,「問題」については,理科が33段落(44.0%),算数が71段落(20.1%)であり,生活と図画工作には見られなかった.「創造」については,図画工作が23段落(18.0%),生活が5段落(5.0%),算数が4段落(1.1%)であり,理科には見られなかった.これらの結果を総括し,今後の課題を明示した.

  • 上谷 悠大, 辻 宏子
    2021 年 36 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,小学校段階からの継続的な論理的思考力の育成を目的とするゲーム型学習教材「コネマス」を開発し,コネマスをプレイすることで期待される論理的思考の様相を明らかにすることを目的とする.(1)コネクトする際の判断で期待される論理的思考,(2)ツークツワンクのコントロールで期待される論理的思考,の2点に焦点を当てて考察を行った.その結果,(1)コネクトする際の判断には「情報の関係性について,洞察する」などの論理的思考がはたらくこと,(2)ツークツワンクのコントロールをするためには,「仮説を立てて検証する」などの論理的思考がはたらくこと,が期待される,の2点が考察された.本研究の課題として,小学校児童がプレイした際の論理的思考について明らかにするために,小学児童を対象とし検証・考察することが求められる.

  • 柴田 吉規, 御園 真史
    2021 年 36 巻 2 号 p. 187-192
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,図形に関する命題が成り立つことの証明を考える場面において,生徒同士が,共同編集機能を用いて,証明を協働的に完成させる活動を行う授業を実践し,その授業の効果や課題を考察することを目的とし,公立中学校2年生2クラスに対して授業実践を行った.この結果,循環論法と解釈できるような追記もみられたが,論理の適切さに課題が残るものの,証明の読み手に論理の飛躍を感じさせないような追記を行おうとしている生徒の姿がみられた.

  • 動詞を観点として
    池田 浩輔, 福田 博人
    2021 年 36 巻 2 号 p. 193-198
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    令和4年度から,高等学校では新しい教育課程へと年次移行となる.その中でも,新しい教育課程では,理数科などが存在する特色のある学校などの主として専門学科において開設されていた教科「理数科」が,今回の改訂により普通科などの各学科に共通する教科として登場した.教科「数学科」,「理科」の学習指導要領に基づくと,教科「理数科」の「すべての特徴は数学科か理科の特徴である」といった仮説が立てられてしまう.そこで本稿では,仮説が偽であること,すなわち数学科ならびに理科とは異なるような教科「理数科」ならではの特徴が存在することを示すことを目的とする.実際,教科「理数科」の学習指導要領を分析した結果,特徴として,「数学と理科を組み合わせ,課題を設定し,物事を多面的に捉え,その課題に向き合い,解決する力を高める」ことと「課題を設定し,自分の考えをまとめ,発表を行う」,「課題を設定する」ということが「理数科」ならではの特徴であることが分かった.

  • 山田 明日可
    2021 年 36 巻 2 号 p. 199-202
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿の目的は,主体の有する価値観が変容した要因についての分析及び考察を通して学習指導への示唆 を得ることである.本研究では,ユネスコの報告書で示された 5 つの観点を価値観の観点項目と定め,質問紙を 作成しプレテスト,ポストテストを実施した.調査結果の分析からは,抽出した児童IR が,式が少ないため容易 に演算できるといった“作業上の簡潔さ”に価値をおいた後,どんな形の立体でも底面積×高さが分かれば簡単 に体積を求めることができるといった一般性を含む簡潔性である“思考上の簡潔性”に価値をおく様子が確認さ れた.そして,ポストテストでは【簡潔である】といった価値観へと変容する様子も確認された.以上の分析結 果を踏まえた学習指導への示唆としては,主体の【簡潔である】といった価値観への変容には“作業上の簡潔性” と“思考上の簡潔性”への価値づけの関連が重要である点を指摘した.

  • 石原 大地
    2021 年 36 巻 2 号 p. 203-208
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,ラカトシュの可謬主義の見地から,数学の発展を弁証法的に解釈することの意義と課題について考察した.また,算数・数学教育において弁証法的発展を志向した授業を構想することが如何なる教育的意義を持ちうるか,前述の議論を踏まえながら検討した.そこでは,今日の算数・数学教育で重視される「数学的な考え方」の一側面や,教育課題についても触れながら,教育的意義として,先行研究で指摘されているものに加えて,⑴ 子どもの統合的な考察を促す,⑵ 教師の数学観の変容の二点を指摘した.また,具体的な学習場面についての検討から,弁証法的発展を志向した授業の構想が可能であることを示した一方で,弁証法的解釈の限界として弁証法的トリアーデでは捉えられない授業の局所的な側面があることについて指摘した.

  • 石橋 一昴, 塩澤 友樹
    2021 年 36 巻 2 号 p. 209-214
    発行日: 2021/12/19
    公開日: 2022/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    データに潜む複雑な現象を解明するためには,質的変数 (質的データ) 間の関係を分析する必要がある.その場合,それぞれの変数の応答カテゴリーのペアに応じて度数を集計し,結果を表にまとめて表示する二次元表を用いることが効果的である.このような背景から,日本の算数・数学教育においても,二次元表の指導が重要視され始めている.その一方で,全国学力・学習状況調査の結果から,二次元表の理解の困難性が指摘されている.そこで本稿は,学習者の事前の資質に基づいて学習者を支援し,複雑な問題に十分に対処するための知識,スキル,自信の発達に貢献することを目的とする足場設定に着目し,二次元表の理解を支援する足場設定の具体的提案を目的とした.結果として,二次元表に対する学習者の反応のルーブリックに基づいて,生徒をより高次の段階へ導くための足場設定を提案した.また,日本の学校数学における活用場面について考察した.

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