著者は,40年以上にわたり,計測システムおよび測定結果の評価法の開発を通して,金属材料の腐食防食に関する研究に従事してきた.また,コロージョンセミナー企画委員会委員長や「腐食コスト調査委員会」委員長などの重要役職を務め,腐食研究の重要性について広く発信してきた.著者のこれまでの研究とその普及活動を振り返り,今後の課題について述べた.
プローブ電極を埋め込んだコンクリート実構造物においてアドミッタンス解析からコンクリート内鉄筋腐食環境について評価した.不働態皮膜形成により皮膜抵抗が大きい状況でも,アドミッタンスプロットでは半円の軌跡がみられ,低周波数極限から皮膜抵抗を求めることができた.東海道新幹線高架橋のコンクリート実構造物にプローブ電極を埋め込み,アドミッタンス解析を用いてコンクリート内鉄筋の腐食性について検討した.
飽和Ca(OH)2溶液への供給酸素(分)圧(O2圧)の増加により,亜鉛の耐食性を向上させるカルシウムハイドロキシジンケート(Ca(Zn(OH)3)2・2H2O,CHZ)の形成が加速され,ち密なCHZ層が形成された.供給O2圧の増加に伴ってCHZ形成の律速過程である酸素還元反応が促進された.飽和Ca(OH)2溶液への供給O2圧が高いほど,より短期間で亜鉛の耐食性が向上した.これは絶縁性を示すCHZの加速形成により亜鉛の露出面積がより早く減少したためである.