本研究では,気液交番環境における炭素鋼の腐食速度に及ぼす気中酸素濃度の影響を低酸素濃度の範囲で調査し,腐食試験前後の試験片の質量変化や炭素鋼表面に形成した鉄さび層の観察から気中酸素濃度により異なる炭素鋼の腐食速度や腐食機構を明らかにすることを目的とした.試験結果より,腐食速度は気中酸素濃度が増大するに伴って増加するが腐食速度の勾配は徐々に減少すること,最大侵食深さは気中酸素濃度が1%の場合を除いて気中酸素濃度が増加するに伴って増大するが気中酸素濃度が1%の最大侵食深さは5%の場合よりも大きいことを見出した.気中酸素濃度が1%の場合でのみ最大侵食深さが特異的に増大した理由は,炭素鋼に局部的な腐食が生じたためであることが断面観察から確認された.
自動的に非金属介在物を観察・分析する機能を有する走査型電子顕微鏡により,ステンレス鋼表面の全ての非金属介在物を事前に分析し,その後,試験片にピットを発生させた表面を再観察した.それにより,ピットの発生・成長に及ぼす介在物の種別やサイズの影響を定量的に評価した.その結果,成長性ピットは,介在物の長径が大きいほど発生確率が高くなったが,介在物種類の影響は見られなかった.一方,再不働態化性ピットに関しては,介在物種類の影響も見られた.