銀の腐食挙動を解説するシリーズの第2報として,腐食環境下での電子機器用途で見られる腐食機構と故障モードについて紹介した.電子機器の用途に伴う固有の電気バイアスは,吸湿や結露により誘電体の表面絶縁抵抗が低下した場合に電解腐食やエレクトロケミカルマイグレーションを引き起こす可能性がある.また,ごく薄い変色皮膜が形成された場合でも,電気・電子的性能,そして光学的性能の低下の原因となることがある.また,ガルバニック腐食,腐食生成物のクリープやウィスカ形成についても記述した.
塗膜のインピーダンスは環境試験により変化する.これには,塗膜中の水分量,高分子構造,塗膜への浸入元素が影響すると考えられるが,明確な関係を表すことができなかった.これらの変化を理解するために,アドミタンスの変化の調査と,D-SIMSとAFM-IR分析を環境試験後の塗膜について行った.その結果,アドミタンスのスペクトルは塗膜中の水分や浸入元素の状態を反映している可能性が示唆された.