材料と環境
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57 巻, 2 号
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展望
解説
  • 橋本 保, 佐藤 眞直, 山下 正人
    2008 年57 巻2 号 p. 59-65
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    大型放射光は高輝度,高指向性,高エネルギー,エネルギー可変などの特徴を有する.近年SPring-8においてはsteelの腐食研究にも威力を発揮することが認められステンレスの不働態皮膜や鉄鋼さびの構造解析研究など次第に実験数が増えてきている.本報告ではXAFS, XRD, GIXSおよびHX-PES等の種々の測定法の特徴と腐食分野での応用例を解説する.
  • 鈴木 茂
    2008 年57 巻2 号 p. 66-69
    発行日: 2008/02/15
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    鉄さびの形成機構に関する最近の研究について概説した.グリーンラスト(GR)は鉄基合金の中間的な腐食生成物として時々観察されるが,それらは空気酸化によりゲーサイトやレピドクロサイトなどのオキシ水酸化鉄に変態しやすい.これは,GR が二価の鉄イオンを含んでおり,水溶液中で三価の鉄イオンに変化するためである.ここでは,これらの GR の構造や変態の特徴について述べた.
  • 原 修一
    2008 年57 巻2 号 p. 70-75
    発行日: 2008/02/15
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    耐候性鋼橋梁に生成した,大きなふくれと多層をなす,いわゆる層状剥離さびと呼ばれる厚いさび層の局所的組成分布をSPring-8の放射光による X 線回折を用いて行った解析事例を紹介した.このさび層の層平均組成はマグネタイトのようなスピネル型酸化鉄が主体であり,30~40 mass%を占めた.これに対して,局所,例えば外層,層間,内層においては,共通してスピネル型酸化鉄の組成割合は高くなく,むしろβ-FeOOHの比率が高かった.このことから,このさび層はスピネル型酸化鉄の組成比が高い層,低い層の積層した多層構造(SPRaP-cell)をもつことを示唆した.この事例が示すように,放射光によるX線回折をさび層の組成分布解析に用いることは有効であると考えられる.
  • 西原 克浩, 松本 雅充, 木本 雅也, 工藤 赳夫, 内田 仁, 春山 雄一, 神田 一浩, 松井 真二
    2008 年57 巻2 号 p. 76-80
    発行日: 2008/02/15
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    溶融Zn-0.2%Al,Zn-5%AlおよびZn-55%Alめっき上に形成される自然酸化膜,およびめっき面にNaCl粒子が存在する大気中湿潤環境下において形成される腐食生成物の構造について,放射光 (150 eV) 及びAl-Kα線 (1487 eV) を励起光源とする光電子分光法によって調査した.励起光源として150 eVの放射光を用いた光電子分光法においては,Al2p,Zn3d,Cl3p及びO2p電子の検出深さは,約1 nm以下であり,1487 eVを用いた場合の3分の1以下となる.
    その結果,自然酸化膜における表層の最大成分はZnめっきへのAl添加量に関係なく,Al酸化物であることがわかった.また,腐食生成物の表層1 nmにおける最大成分は表層4 nmにおける最大成分とは異なることがわかった.腐食生成物は,主にZn酸化物,Zn塩化物,Al酸化物およびAl塩化物によって形成され,これらの構成比率は,ZnめっきへのAl添加量や表面からの深さによって変化する.
論文
  • 高宮 枝里, 中島 博志, 細谷 清, 高橋 歩, 板垣 昌幸
    2008 年57 巻2 号 p. 89-95
    発行日: 2008/02/15
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    マハラノビス距離を用いて,亜鉛めっき鋼管が使用されている水質事例から漏水事故が発生した事例の水質を判別した.水質には,冷温水事例 (腐食トラブル有り20件,腐食トラブル無し109件) および冷却水事例 (腐食トラブル有り12件,腐食トラブル無し173件) を使用した.冷温水の判別では,腐食トラブル事例20件のうち誤判定が1件となり,良好に判別できた.冷却水の判別では,腐食トラブル12件のうち誤判定が3件となった.冷却水ではさまざまな種類の薬注が施されていることから,計算に使用した水質項目以外の影響が大きく,マハラノビス距離による判定精度が低下していると考えられる.
  • 南谷 林太郎
    2008 年57 巻2 号 p. 96-101
    発行日: 2008/02/15
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    電子部品材料として用いられる銀はゴムから放出される硫黄ガスにより腐食する.その腐食損傷を評価するために,本研究ではゴムから放出される硫黄ガス濃度を推定する方法を確立した.まず箱形容器を用いた腐食試験により,ゴム共存環境での銀の腐食挙動が単体硫黄共存環境と類似した腐食挙動であることを示した.さらに銀表面に形成された腐食生成物は Ag2S のみであり,銀の腐食生成物の厚さが直線則に従い増大することを示した.また箱形容器環境での銀の腐食速度を決定する要因は,主として硫黄ガスによる銀の腐食反応であり,それに加えて硫黄ガスの拡散であることを示した.したがって銀の腐食速度を硫黄ガスの拡散と反応を考慮した腐食解析により算出できる.この腐食解析の逆問題として,あらかじめゴム共存試験で得られた銀の腐食速度から,ゴムから放出される硫黄ガス濃度を推定した.ゴムからの放出硫黄ガス濃度を境界条件とした腐食解析を用いれば,ゴムが共存する電子装置内での銀の腐食速度を推定できる.これにより電子装置の効率的な防食対策を検証して,装置の耐食性を向上させることが可能となる.
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