高湿度環境や海洋環境における炭素繊維補強された鋼構造物では,ガルバニック腐食が発生しやすくなる.本研究では,炭素繊維と普通鋼の接触によるガルバニック腐食に影響を及ぼす主要因である,一方向性炭素繊維(CF)の電気化学的特性,異種材料間の接触状態,および環境温度について検討した.その結果,炭素繊維と炭素繊維束は,繊維方向に対して均質な抵抗器と見なせることを明らかにした.ただし,炭素繊維が金属粗面に接触する場合には,異種材料間の導電経路が最適化され,接触面積が増大することで,表面抵抗が著しく低下する.また,アレニウス方程式に基づき,高温環境における腐食促進作用を説明するための簡略化モデルを構築し,温度変化がガルバニック腐食に及ぼす影響は,普通鋼の腐食に比して顕著であることを明らかにした.