材料と環境
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59 巻, 8 号
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展望
解説
  • 廣本 祥子
    2010 年59 巻8 号 p. 278-284
    発行日: 2010/08/15
    公開日: 2011/02/08
    ジャーナル フリー
    生体用金属材料の腐食は,溶出金属イオンが生体為害性を示したり,材料の摩耗や疲労の進展を促進したりするため,精密な評価が求められる.腐食試験には,生理食塩水や各種の疑似体液および培養液が用いられている.しかし,生体用金属材料のin vitroの腐食試験結果と動物埋入試験などによるin vivoの結果は必ずしも一致していない.in vitroin vivoの結果の相違を埋めるには,生体内での金属材料と生体組織の相互作用に関する知見が必要である.そこで,著者らは細胞培養下で生体用金属材料の腐食挙動を検討し,細胞が存在することによる腐食因子の解明を行ってきた.本解説では,生体内で金属材料が接する環境について述べるとともに,著者らが行った細胞培養下での分極試験やpH測定の結果などを紹介する.これまでに,細胞が存在すると細胞自身と細胞外マトリックスによって物質拡散が抑制され,すき間腐食に類似した環境になることを明らかにした.また,金属材料の生体適合性に関する知見を得るために行った,基材の分極が細胞挙動に及ぼす影響についても紹介する.
論文
  • 栗原 朋之, 三宅 隆介, 大島 義生, 中原 正大
    2010 年59 巻8 号 p. 291-297
    発行日: 2010/08/15
    公開日: 2011/02/08
    ジャーナル フリー
    保温材,保冷材下の外面腐食は石油精製,石油化学プラントにおける炭素鋼,低合金鋼製設備の高経年化現象の一つであるが,発生の特徴や発生可能性の評価は現状不明確である.本検討では外面腐食速度の支配要因の明確化,発生可能性推定方法の明確化を目的に,実際の化学プラントにおける,外面腐食検査結果を調査,解析した.検討の結果,外面腐食速度の分布は二重指数分布に従うこと,設備の種類,温度,構造によって外面腐食速度が異なり,特に,塔の強め輪のような水の滞留しやすい部位での腐食が大きいことが明らかとなった.今回調査した外面腐食検討結果を基に,外面腐食の発生可能性をより精度高く推定する方法を策定した.
  • 伊藤 公夫, 内山 拓, 飯野 隆夫, 森 浩二, 若井 暁, 鶴丸 博人, 三木 理, 原山 重明
    2010 年59 巻8 号 p. 298-304
    発行日: 2010/08/15
    公開日: 2011/02/08
    ジャーナル フリー
    鉄を電子供与体として培養可能な嫌気性微生物の集積培養物を用いて鉄腐食性について調べた.九州地区の原油タンクの底板に残留した水由来の嫌気性微生物の集積培養物は,鉄を激しく腐食した.しかし,東北地区の油井排水,及び江戸川河口の底泥由来の嫌気性微生物の集積培養物は鉄をほとんど腐食しなかった.東北地区の油井排水,及び江戸川河口の底泥由来の嫌気微生物の集積培養物で鉄を腐食させた場合には,黒色の硫化鉄の被膜が表面に検出された.したがって,これら東北地区の油井排水,及び,江戸川河口の底泥由来の嫌気性微生物の集積培養物による鉄の腐食は,おもに硫酸塩還元菌(SRB)によるものと考えられた.しかし,九州地区の原油タンクの底板に残留した水由来の嫌気性微生物の集積培養物による鉄の腐食では,SRBによる腐食に特徴的な硫化鉄の被膜は検出されなかった.九州地区の原油タンクの底板に残留した水由来の嫌気性微生物の集積培養物による鉄の腐食生成物の主要な成分として,炭酸鉄(FeCO3)が検出された.したがって,九州地区の原油タンクの底板に残留した水由来の嫌気性微生物の集積培養物による鉄の腐食は,従来よく知られているようなSRBによる腐食ではないことが考えられた.九州地区の原油タンクの底板に残留した水由来の集積培養物で腐食させた炭素鋼SS400試験片の,Arガスで嫌気性にした人工海水中での自然電位は,無菌の系で腐食させた試験片や,東北地区の油井排水,及び江戸川河口の底泥由来の嫌気性微生物の集積培養物で腐食させた試験片の自然電位と比較して,120から140 mVほど貴な電位であった.したがって,九州地区の原油タンクの底板に残留した水由来の嫌気性微生物の集積培養物による鉄の腐食では,腐食生成物と地鉄の間でガルバニックセルを形成することで,腐食が促進されている可能性が考えられる.
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