超薄(厚さnmオーダー)二次元重合体皮膜をpH 8.49のホウ酸塩緩衝溶液中で作製した不動態皮膜上に吸着した16-ヒドロキシヘキサデカン酸イオンHO(CH2)15CO2-自己組織化膜を1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン(C2H5O)3Si(CH2)2Si(OC2H5)3とオクタデシルトリエトキシシランC18H37Si(OC2H5)3と反応させて作製した.二次元重合膜で覆った電極を0.1 M NaNO3中で処理し不動態皮膜を補修した.この複合皮膜の不動態皮膜破壊までの時間tbdは非常に長く,1000 h以上が期待され,その防止率P(%)は非常に高く99.9%以上であった.不動態皮膜破壊に対する完全な防止と非常に高い値は将来のSDGsにとって究極の保護被膜研究となりうる.
β線が腐食に及ぼす影響を解析するために,90Sr含むHClの滴下がSUS 316Lステンレス鋼の腐食電位に及ぼす影響を調査した.人工海水中で腐食電位を測定しながら,90Srを含むHClを人工海水に滴下した.溶液の滴下は2回に分けて行い,滴下した溶液の放射能がそれぞれ0.15 MBqおよび1.5 MBqとなるように調整した.その結果,90Srを含むHClの滴下によって,SUS316Lステンレス鋼の電位は上昇することが分かった.
鋼棒における水素脆化の危険性を評価するために,表面近傍の水素濃度を知ることは重要である.電気化学的水素透過法は鋼材の表面水素濃度を測定する方法で,その供試体形状は板状が対象であり,鋼棒(棒材)へ適用はできない.一方で鋼棒表面には製造過程で生じる酸化鉄や加工ひずみなどが存在しており,水素透過性に影響を与えうるため,鋼棒自身を評価する必要がある.今回,鋼棒に対する電気化学的水素透過法,及び得られたデータを解析するためのシミュレーション法を開発したため報告する.
3Dプリンタを用いて作製した装置で炭素鋼の大気腐食に及ぼす液膜厚さの影響を調査した.新たに作製した装置により,液膜厚さを正確に保持することが可能となった.異なる厚さの液膜で酸素の拡散限界電流(jlim)とアノード電流(janode)を測定した.液膜が薄くなると,jlimは増加し,janodeは減少した.jlimと拡散距離の関係から酸素の拡散係数を3.20×10-5 cm2 s-1と算出した.この結果を用いて,溶存酸素の拡散に影響を与え始める臨界厚さは0.87 mmと求められた.