本研究の目的は,新しく開発した磁性腐食プローブを用いてコンクリート内の腐食性環境を非破壊的に評価することである.プローブは銅棒上に鉄をめっきして調製され,さらに残留磁化を安定化させるために423 Kで30分間熱処理された.プローブの残留磁化は超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いて計測され,その腐食とともに減少した.飽和Ca(OH)
2溶液中における磁性腐食プローブの電気化学的挙動も評価された.めっき直後のプローブは大きな活性溶解電流密度を示し,残留磁化も大きかった.これを熱処理すると活性溶解電流密度は小さくなり,残留磁化も減少した.一方,プローブの不動態保持電流密度は熱処理後も鉄棒と比較すると大きいままだった.このことは,腐食環境に対する本プローブの感度が鉄筋よりも高いことを意味する.このように,開発したプローブを用いることによって,鉄筋の腐食に先んじてコンクリートの環境劣化を磁気的に捉えることができると期待される.
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