Zairyo-to-Kankyo
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61 巻, 4 号
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展望
解説
  • —不動態化した鉄上の超薄二次元重合膜被覆による不動態皮膜破壊と鉄腐食の防止—
    荒牧 國次
    2012 年 61 巻 4 号 p. 136-143
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    不動態化Fe電極上に吸着したカルボン酸イオン自己組織化膜の二次元重合体皮膜をアルキルトリエトキシシランで化学修飾して作製する.0.1 M NaCl,0.1 M Na2SO4およびClを無添加,添加した0.1 M KClO4中における不動態皮膜破壊はこの重合体皮膜の被覆と0.1 M NaNO3中における補修処理によって著しく防止される.不動態皮膜が破壊されない限り,これらの溶液中におけるFe電極の完全な腐食防止が重合体皮膜の被覆と補修処理によって行われる.
速報論文−第58回材料と環境討論会−
  • 水谷 晃, 酒井 潤一
    2012 年 61 巻 4 号 p. 152-154
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,高温高圧純水環境下におけるAlloy 182/低合金鋼境界部でのき裂停留メカニズムを明らかにすることを目的とした.試験片はAlloy 182を低合金鋼に肉盛溶接したものを使用した.試験温度288℃,圧力8.0 MPa,入口側導電率10 μS/m以下,溶存酸素濃度8 ppmのオートクレーブ中で行ったCBB試験の結果より,Alloy 182側で発生・進展し溶融線まで達したき裂はすべて低合金鋼側で球状の酸化物を形成し,LAS上でのき裂伝播は認められなかった.CBB試験後,Alloy 182厚さと酸化物の大きさの関係を分類したところ,形成した酸化物の大きさはAlloy 182厚さが厚いほど大きくなった.その原因として,Alloy 182及び低合金鋼の電位差による galvanic 効果が考えられた.
  • 飯味 正樹, 大久保 諭, 行本 正雄, 宮田 由紀夫
    2012 年 61 巻 4 号 p. 155-157
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    油井管に使用される合金鋼の高温かつCO2環境下における腐食に注目し,Cr添加量の異なる試験片を用いて腐食試験を行い,その試験片表面及び断面の腐食生成物の形態分析をSEM及びEDXを用いて行った.合金中のCr増量に伴い,腐食生成物の形態が結晶状から皮膜状に移行した.EDX解析結果より結晶状腐食生成物はFeCO3であり皮膜状腐食生成物ではCrが濃縮していることが明らかとなった.合金中のCr増量により緻密な構造のCr化合物が生成されFeの溶解が抑制され耐食性が向上したと考えられる.
  • 中村 真理子, 齋藤 博之, 藤本 憲宏, 東 康弘, 澤田 孝
    2012 年 61 巻 4 号 p. 158-160
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    チオシアン酸アンモニウム中に定荷重を負荷した高強度鋼を浸漬して水素脆化試験を行った後の状態について検討した.側面では荷重を法線方向とする複数のき裂が発生し,そのひとつが成長して破断に至ると考えられる.
  • 境 昌宏, 長谷部 智久, 美馬 大樹, 西 弘明, 小室 雅人, 岸 徳光
    2012 年 61 巻 4 号 p. 161-165
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    架設から30年以上経過した表面処理仕様耐候性鋼橋梁の腐食を調査するため,外観目視調査,さび・被膜厚測定,イオン透過抵抗測定,偏光顕微鏡による断面観察,EPMA分析を実施した.外観目視調査では78カ所中57カ所が正常と判断された.橋梁桁端部の漏水が生じていた箇所において,うろこ状さびや層状剥離さびが観察される場合があった.さび外観評点が下がるにつれて,さび・被膜厚は厚くなる傾向があった.断面観察およびEPMA分析より,異常さびの底面には濃縮したClが存在し,正常さびの底面には保護性さびと思われる消光層が存在することが判明した.
  • 八代 仁, 畠山 裕起也, 稲部 英則, 関口 恭一, 菱沼 崇, 伊藤 雅彦, 大中 紀之
    2012 年 61 巻 4 号 p. 166-170
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    吸収式冷凍機では構造材を腐食させないように,吸収液すなわち濃厚LiBr水溶液中のインヒビター濃度,とりわけモリブデン酸塩濃度を適切に管理することが必要である.従来行われている化学分析に基づく濃度管理法に代わる方法として,本研究では吸収液中のモリブデン酸塩濃度を電気化学的にその場評価する方法が検討された.グラッシーカーボン電極上においてモリブデン酸イオンが還元され,その濃度に依存するカソード電流が得られた.カソード分極において酸化モリブデン(IV)が析出し,その量は引き続きアノード分極を行うことで評価できる.本研究で例示したいくつかの電気化学的手法を用いることによって,グラッシーカーボン電極上でのモリブデン化学種の酸化還元挙動に基づいて,実際の吸収式冷凍機中のモリブデン酸塩濃度をその場管理できると考えられる.
  • 榊原 洋平, 中山 元, 平野 隆
    2012 年 61 巻 4 号 p. 171-176
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    Alloy182/低合金鋼(LAS)界面における応力腐食き裂の挙動を調査するため,板厚が10 mmの試験片を用いた中型CBB試験を高温酸素富化環境にて行った.純水環境(ループ入口で0.1 μS/cm以下)にて平滑試験片を用いた場合,Alloy182側で発生した応力腐食き裂の先端ではLAS側において球状酸化物の形成のみ見られ,き裂状のままでの進展は観察されなかった.一方,0.3 μS/cm に調整したNa2SO4添加環境ではAlloy182側より発生した応力腐食き裂はLAS側に巨視き裂として進展していた.このときAlloy182側である試験片表面ではき裂は板幅方向に貫通しており,き裂が界面に到達した際に高い力学条件が得られたため巨視き裂としてLAS側に進展したと推測した.ノッチ付試験片では純水環境において,き裂状のままLAS側に侵入するケースが認められた.また,球状酸化物も見られた.以上の観察に基づいてLAS側へのき裂侵入深さならびに球状酸化物径をAlloy182側の深さで整理すると,Alloy182側の深さが大きくなるにつれ,LAS側での侵入深さ,酸化物径が大きくなる傾向があった.また,き裂形態に及ぼす付与ひずみの影響,試験片採取方向の影響を調査したが,いずれも大きな影響を及ぼさなかった.
  • 榊原 洋平, 板橋 遊, 高梨 正祐, 中山 元, 平野 隆, 藤井 朋之, 島村 佳伸, 東郷 敬一郎
    2012 年 61 巻 4 号 p. 177-181
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    高温水中におけるAlloy182/低合金鋼(LAS)クラッド試験片の中型CBB試験後の観察結果から,各き裂のAlloy182/LAS界面に到達したときの力学条件とLAS側への侵入深さ,き裂先端の腐食形態との相関を調査した.力学条件の整理については,弾塑性力学解析より得られるJ値から換算されるKJ値を用いた.純水中での試験結果においては,KJ値とLAS側への侵入深さは良い相関を示した.また,Na2SO4添加環境と純水中での試験結果を併せてKJ値で整理したところ,KJ値が75 MPa√m以上で,かつ,環境が厳しいNa2SO4添加環境においてLAS側への持続的なき裂進展が認められた.LAS側への持続的な進展は,種々のKJ値下におけるLASのき裂進展速度とその酸化速度との相対的な関係で決まると考えた.すなわち,き裂進展速度が酸化速度を上回ったときにLAS側での持続的進展が起こりうる.
論文
  • 浜村 武広, 久保内 昌敏, 青木 才子, 吉田 治, 江島 光彦, 酒井 哲也
    2012 年 61 巻 4 号 p. 182-187
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    アセタールコポリマー (Co−POM)の硝酸(HNO3)水溶液下における腐食機構とそのモデル化について検討を行った.劣化度合は,質量および分子量変化によって評価した.硝酸水溶液における質量変化は,潜伏期間後に直線的に減少した.SEC測定結果から,HNO3水溶液によるCo-POMに対する腐食は表面近傍を主体に進展し,内部は初期状態を維持していたことから,その腐食形態は腐食層形成型と一致した.加水分解反応によるCo-POMの腐食速度式は,試料表面の分子量低下から得た反応速度定数を用いて算出した.次に,質量変化(湿潤−乾湿試料)を用いて,HNO3水溶液のCo−POM内への拡散係数を求め,これによって得られる試料内の経時的な濃度分布変化と先の腐食速度式を組み合わせることにより,Co−POMの腐食速度を数値解析により求めた.解析結果と実験結果はおおむね良好な一致を示し,この手法で速度論的なモデル化を行うことが可能であることを示した.
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