ショッピーニング処理した使用済み核燃料乾式貯蔵用オーステナイトステンレス容器(キャニスターと呼ぶ)の,200℃以下での長期供用中(約80年)における応力緩和を予測することを目的とした.はじめに,304鋼や316鋼の340℃における18,080時間までの応力緩和を紹介する.次に500℃以下の残留引張り応力の緩和データを紹介する.残留応力が初期応力値の80%に低下する時間(80%時間)のアウレニウス・プロット(Arrhenius plot)によって,活性化エネルギーは84~89 kJ/molになることが推定された.定数を10とするLarson Müllerパラメーター(LMP)を計算し,時間-温度線図に,初期残留応力値の60%以上,60%から30%,30%以下になる境界線図を作成した.キャニスターが塩化物外面応力腐食割れ(ESCC)を受ける温度-時間における圧縮残留応力は,初期値の30%以上になる可能性を推定した.時効処理による残留応力の変化は組織や力学特性の変化と関係しているが,これについては別報で紹介する.
ステンレス鋼の大気腐食に関する研究は多数存在するが,腐食挙動と環境因子との相関は必ずしも明確ではなかった.本研究では,日本,ベトナム,インドネシアにおいて暴露試験を行い,それ以上の孔食指数では孔食が発生しない臨界孔食指数C.P.I.があることを明らかとした.C.P.I.はC.P.I.=9.4 log(S)+26.7(ここで,Sは飛来塩分量)で近似が可能であった.これは孔食指数の増加にともない孔食発生により多量の液滴生成が必要となることを示唆している.
無機ジンクリッチペイント(ZRP)含有塗装鋼材の塗膜膨れ機構を調査した.ZRP含有塗装鋼材では,塗膜膨れが発生しない期間が見られた.また,ZRP有無に関わらず,塗膜膨れ形態は腐食の進行に伴い,マクロセル形成によるブリスターからFe腐食生成物の生成・成長による塗膜の押上げに移行した.塗膜の押上げにより塗膜膨れが進行する期間では,ZRPはZn腐食生成物の形成およびFe腐食生成物の微細化によってFe腐食反応を抑制すると考えられる.