材料と環境
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59 巻, 7 号
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展望
解説
  • ― 高分解能 SEM 観察に適した試料表面前処理方法 ―
    清水 健一
    2010 年59 巻7 号 p. 245-250
    発行日: 2010/07/15
    公開日: 2011/01/29
    ジャーナル フリー
    超低加速・高分解能FE-SEMを腐食研究に有効に活用するためには,清浄で,平滑で,しかも損傷のない表面を持つ試料が必要である.そうでなければ腐食に伴うわずかな表面の形状,組成,および組織の変化を高分解能で明確に観察できないからである.ここでは最新のFE-SEMに見合った新たな試料表面の処理法について紹介する.この方法の鍵となるのは機械研磨により鏡面仕上げした表面に残る汚染や薄い損傷層を高周波グロー放電スパッタリングにより迅速に,しかも新たに表面を汚染したり,新たな損傷層を形成したり,さらに新たな変質層などを形成することなく除去することである.これは導電性および非導電性試料の表面をエネルギーが非常に低いArイオン (<50 eV) で迅速にスパッタできる高周波グロー放電スパッタリングのユニークなスパッタ特性を機械研磨した試料表面の最終仕上げに利用する全く新規な手法である.
論文
  • 加藤 辰仁, 佐藤 芳幸, 原 基
    2010 年59 巻7 号 p. 259-264
    発行日: 2010/07/15
    公開日: 2011/01/29
    ジャーナル フリー
    光照射したルチル型TiO2と鉄対のガルバニ挙動とこのガルバニ電池形成下での鉄の腐食減量を,水溶液の水素イオン濃度に対して調べた.膜状のルチル型TiO2は高温酸化により形成され,その後,高温水素ガスで還元された.TiO2皮膜の自然浸漬電位は,光照射により低下した.この低下は,水素還元温度の上昇とともに大きくなった.1173 Kで還元されたTiO2皮膜における光照射に伴う自然浸漬電位の低下は,pH 10以上の溶液中において,溶液pHの上昇とともに大きくなった.この結果,これらの溶液中ではTiO2の自然浸漬電位はFeの自然浸漬電位よりも低くなった.pH10~12の溶液中において光照射したTiO2がFeと接触するとき,Feにおいてカソード電流が流れた.この電流は溶液pHの上昇とともに大きくなった.この理由は,TiO2における光アノード電流が溶液pHの上昇とともに増加することに因ることがわかった.光照射したTiO2とガルバニ電池を形成したFeの腐食減量は,光照射しないTiO2とガルバニ電池を形成した鉄およびガルバニ状態でない鉄の腐食減量に比べ小さくなった.さらに,光照射したTiO2とのガルバニ電池形成下におけるFeの腐食減量は,Feに対するTiO2の面積比の増加とともに減少した.
  • 礒本 良則, 佐藤 知徳
    2010 年59 巻7 号 p. 265-271
    発行日: 2010/07/15
    公開日: 2011/01/29
    ジャーナル フリー
    発電所や化学プラントにおける高温水中の炭素鋼配管の腐食加速機構は,流動条件で生じる化学的,機械的作用による複雑な劣化であるために,必ずしも明らかにされていない.この高温水中の炭素鋼の基礎的な腐食現象を明らかにするために,小さな容器を用いた24時間または長時間の腐食バッチ試験が静止,流動(撹拌)条件下,463 Kまでの温度で行われた.炭素鋼試験片の質量が腐食試験前後,および表面に形成された鉄酸化物の電気的な除去処理後に測定された.それにより,酸化皮膜中の鉄量,溶液中に溶出した鉄量が炭素鋼の全腐食量から区別された.結果として,静止,流動条件下の373~393 Kの温度範囲において試験片の質量減少量が最大になるときに炭素鋼表面からの鉄の溶出は支配的であることが分かった.また,炭素鋼表面にマグネタイト皮膜が形成されているにもかかわらず,全腐食量は試験時間とともに増加し続けた.本試験における流動条件は鉄の溶出を加速する効果をもった.本実験結果に従って,この高温水における炭素鋼の初期腐食機構を提案した.
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