Zairyo-to-Kankyo
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57 巻, 9 号
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展望
解説
論文
  • 松川 安樹, 宮下 守, 朝倉 祝治
    2008 年 57 巻 9 号 p. 392-399
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/03/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,冷却水など建築設備配管として多用されている亜鉛めっき鋼管の腐食挙動を明らかにするために行った.実験では,40℃の水道水,純水,および各種アニオンを含む水溶液に純亜鉛を浸漬し,腐食速度,腐食電位,および腐食状態から,亜鉛の腐食挙動に対する各種アニオンの影響を評価した.
    実験の結果は,以下の通り要約される.HCO3は亜鉛の腐食反応を抑制する.これは,亜鉛表面に生成する腐食生成物 (Zn4CO3(OH)6·H2O) がアノード反応を抑制するためである.一方,SO42-, Cl,およびNO3は亜鉛の腐食を加速する.水道水に含まれる各種アニオンの濃度範囲 (<1 mmol L-1) における腐食の促進度の順位は,SO42->Cl>NO3の順である.SO42-とClが亜鉛の腐食を加速する要因は,表面に生成した保護皮膜の破壊による.NO3については,その酸化性がカソード反応を促進することによるものと推測する.
    純水中の亜鉛の腐食速度は,つくば市水中のそれよりも必ずしも小さくない.これは,つくば水中に含まれる各種塩類により亜鉛表面に保護的な皮膜が形成されることが原因と考える.本報を基に,水道水の腐食性を論じることができる.
  • Sachiko Hiromoto, Joerg Ziegler, Akiko Yamamoto
    2008 年 57 巻 9 号 p. 400-408
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/03/20
    ジャーナル フリー
    様々な電極材料表面で培養している細胞の応答に,電極に印加した電位が及ぼす影響について検討した.TiおよびPt電極表面にマウス線維芽細胞L929を播種し,ポテンショスタットにより電極をアノードもしくはカソード分極し,24時間後の細胞形態および細胞被覆率を比較した.アノード電位である800および950 mV (Ag/AgCl) では,TiおよびPt表面とも正常な形態を保っている細胞は観察されなかった.カソード電位である-350 mVでは,Ti表面では細胞は正常に伸展していたが,Pt表面では一部に凝集したり丸くなっている細胞がみられた.-1000 mVでは,Ti表面での細胞は丸くなっていた.一方,Pt表面では細胞はみられず,白い析出物で覆われていた.アノード電位での細胞形態の変化や被覆率の減少は,カソード電位におけるよりも大きかった.Ti表面での細胞の形態変化は,Pt表面におけるよりもいくらか小さかった.これは,Ti表面は酸化物皮膜で覆われているために,細胞にかかる電場がPt表面におけるよりも小さいためであると考えられる.以上の結果より,印加した電位が細胞応答に及ぼす影響は,電場の向きと電極材料の種類に依存することがわかった.
    本研究は,金属材料の電位が表面に存在する細胞の挙動に影響を及ぼすことを明らかにした初めての論文である.さらに様々な電位や電極が細胞挙動に及ぼす影響を検討することで,生体適合性表面や細胞に何らかの刺激を与える表面の設計の基礎的な知見を得ることができる.
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