油井環境の模擬凝縮水中におけるMo含有ステンレス鋼の耐食性と酸化物皮膜を電気化学測定やX線光電子分光法によって調査した.電気化学測定の結果から,模擬凝縮水中においてMoを添加することにより酸化物皮膜の欠陥が少なくなりステンレス鋼の耐食性が向上することがわかった.X線光電子分光法の結果から,Moを添加することにより最外層にMoの酸化物皮膜が形成され,皮膜の厚さは薄くなることがわかった.
本検討では保護皮膜効果が優れているgordaite(NaZn4(SO4)(OH)6Cl・6H2O)を意図的に多く析出させることで有機ジンクリッチペイント(有機ZRP)の耐食性向上を図った.
亜鉛の腐食においてSO42-を追加供給すればgordaiteの生成割合が増えると考えられるため,複合サイクル試験に用いる試験溶液に硫酸カルシウムを添加して純亜鉛板を腐食させた結果,腐食生成物におけるgordaiteの生成割合が増すこと,および純亜鉛板の腐食速度が低下することが確認された.
次に硫酸カルシウムを添加した有機ZRPを塗装した試料を作製し,複合サイクル試験および宮古島海岸での暴露試験を実施した結果,無添加の試料と比較して,硫酸カルシウムを添加した試料は,耐食性が顕著に向上することが確認された.
8年間屋外で使用したポリプロピレン製架空ケーブルクロージャの永久ヒンジ部の劣化について,詳細な微小解析を行った.クロージャの開閉に伴う繰り返し応力を受け,かつ紫外線に暴露されるヒンジ部のみが激しく劣化し,クラックが発生し一部が破断に至った.ヒンジ部を繰り返し深く折り曲げるだけではクラックが発生しないことを確認し,紫外線劣化との相乗作用によりクラックが進行したと推定された.クラックの先端にはクレーズ構造が形成され,クラック進行のルートになっていた.このクラック進行の様態は,紫外線照射と繰り返し折り曲げを複合した模擬試験により確認された.
アンモニア水溶液中における銅管の酸化溶出挙動について,リンがおよぼす影響を電気化学測定により調べた.その結果,最初に1価の[Cu(NH3)2]+イオンへの酸化溶出が発生し,その後2価の[Cu(NH3)4]2+イオンへの酸化溶出に移行すること,リンが後者の反応の電荷移動抵抗を低下させることがわかった.リンは銅の粒界に偏析し,その付近で銅が優先的に溶出していた.粒界に偏析するリンが粒界型応力腐食割れの一因と推定された.
材料と環境Vol.72, No.3, p.76-84 に掲載した論文「「Microscopic Analysis of Degraded Living Hinges of Polypropylene Aerial Cable Closure」2ページ目の促進劣化試験の条件(放射照度)について下記の通り単位から「k」が抜けてしまっておりました.」以下に訂正いたします.
誤)0.35 W m-2
正)0.35 kW m-2