軽水炉(沸騰水型原子炉および加圧水型原子炉)の安全性・信頼性確保のために,冷却水を適切な水質に管理し,構造材料の腐食や放射性腐食生成物の生成を抑制することは重要である.そのために,電気化学測定法を用いた水質のモニタリングが必要となっている.本稿では,BWRへの腐食電位測定の適用について主に取り上げ,軽水炉の水質と電気化学測定の必要性について解説する.
(公社)腐食防食学会では1995年以降「住宅環境における溶融めっき鋼板と塗装鋼板の腐食」をキーワードにして分科会活動(現在の分科会の名称:住宅環境における腐食分科会)を続けてきた.その中で,ラボ試験や実際の住宅内暴露試験において一定量の海塩を予め付着させて腐食を進行させる塩付着試験を行い,溶融めっき鋼板ならびに塗装鋼板の腐食量の違いを腐食減量の精密な測定と表面分析から検討した.本稿は住宅用構造躯体で使用されるこれら鋼板の寿命評価法について解説した.
溶融めっき鋼板においてはラボ試験や模擬容器暴露試験と住宅内暴露試験では腐食量の経時変化に相違が認められるものの,海塩付着量(Cl-)で住宅内における各種溶融めっき鋼板の寿命が予測しうる可能性が示された.塗装鋼板においては従来用いられていた塗膜膨れに加えて赤錆幅も住宅内環境における塗膜下の腐食状況を評価しうる指標となること,さらに赤錆幅と塗膜下の最大腐食深さは正の相関を示すことが示唆された.
A5083の耐食性に与える水溶液中のFe3+の影響を調査するために種々の水溶液中での電気化学試験と浸漬試験後の表面観察を行った.Cl-やSO42-といったアニオン種によらず,Fe3+を添加した水溶液中では添加がない水溶液よりも浸漬電位が卑化した.アノード/カソード分極曲線および表面観察結果から,A5083表面にFe3+が与える影響としてFe3+の還元がカソード反応として晶出物上に集中することが示唆された.晶出物上のカソード反応に釣り合うように晶出物周囲のアノード反応が大きくなり,晶出物周囲の溶解や電位の卑化が生じたと考えられる.