高温高濃度 LiBr-LiNO
3-KCl-LiOH混合吸収液中におけるSUS304,SUS316L,およびSUS430鋼の腐食挙動を温度の関数として検討した.酸化皮膜は,XRD,XPSおよび化学分析を用いて解析した.SUS304,SUS316LおよびSUS430は,463 Kまでの温度範囲では不動態化し,しかも孔食などの局部腐食は観察されない.383 Kでは極薄い不動態皮膜は生成しているもののそれ以外の酸化皮膜は生成しないが,温度上昇とともに厚い酸化皮膜が生成する.インヒビターとしてLi
2MoO
4を添加した場合,SUS304およびSUS430では溶出量は変化しないが,酸化皮膜量が増加した.SUS316Lでは添加の影響は見られなかった.いずれの鋼種においても酸化皮膜の最外層の主成分は,γ-Fe
2O
3であると考えられる.混合吸収液中におけるステンレス鋼の高耐食性を,γ-Fe
2O
3の皮膜補修効果の点から考察した.
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