コストパフォーマンスに優れ,工業化に適したアルミニウム材料防食用自己修復性塗膜開発を目指し,材料表面に形成したポーラス皮膜細孔を塗膜修復剤のコンテナとして利用した新しい機構による塗膜への自己修復性付与を行なった.このような塗膜においては塗膜に欠陥が形成したさいに皮膜も同時に破壊されることでここから塗膜修復剤が欠陥部に流出し,これが空気中の水分と反応することで,なんの処置をしなくても欠陥部が修復されると期待される.本研究において作成した自己修復性塗膜は欠陥形成時にもこのような機構により欠陥底部に修復構造が自動的に形成され,これにより高い耐食性が維持されることが明らかとなった.
塩化物イオンを含む水膜下でtype304ステンレス鋼の不働態皮膜の成長挙動および局部腐食の発生・進行に及ぼす反応系での酸素濃度の影響を電気化学インピーダンス法により検討した.酸素濃度が増大するほど,不働態皮膜は厚く皮膜抵抗は小さくなった.不働態皮膜破壊後の局部腐食進行時には,酸素濃度の増大に伴い酸素還元反応が促進されるため,母材の溶解が再不働態化よりも優位となり,局部腐食の進行は促進された.