核燃料再処理プロセスのうち,燃料溶解槽条件におけるジルコニウムの応力腐食割れ(SCC)感受性を検討した.使用済み核燃料溶解液を模擬したコールド模擬液を用いて,高電位条件ならびに沸騰伝熱条件における定荷重試験を行った.ジルコニウムのSCCは電位依存性が極めて強く,1.55 V(vs.SSE)で破断時間が著しく低下した.この電位条件ではファセット状のへき開状破面が全面に観察された.1.50 V以下の電位条件では,擬へき開状の破面が試験片表面近傍のみに発生したが,著しい破断時間の低下は生じなかった.沸騰伝熱条件においては,破断時間の低下が生じた.しかし,その破断時間の低下は,伝熱による温度上昇を考慮したオイル中の破断時間とほぼ同じであった.二次/三次クリープの遷移時間(
tss)/破断時間(
tf)比を用いたSCC感受性指標から沸騰コールド模擬液中のジルコニウムのSCC感受性は,1.55 Vで非常に大きいが,沸騰伝熱条件にてSCC感受性が高まることはなかった.コールド溶解槽模擬液中におけるジルコニウムのSCC挙動は,主にジルコニウムのクリープ特性に依存した.
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