大気腐食環境における鉄鋼材料の腐食評価には,一般的に試験片の暴露試験が行われてきた.しかし,本手法では環境変化による腐食量の詳細な変化を評価することはできない.
この課題には,腐食減肉による電気抵抗の増加を連続的に測定して,腐食量に換算する電気抵抗法が最適と考えられる.本手法を用いて,精度の高い計測を行うために,局所的な電気抵抗が大きくなり全体の抵抗を支配してしまう腐食凹部の影響を小さくすること,そして,センサの乾湿を評価対象物と同じにすることが可能なセンサを構造が重要であることを見出した.
模擬油井環境における分散性の異なるイミダゾリン誘導体の炭素鋼の抑制効果を電気化学的方法とX線光電子分光法により調査した.動電位分極測定の結果から,用いたイミダゾリン誘導体はアノード反応とカソード反応を抑制することが明らかとなった.X線光電子分光法の結果からどちらのイミダゾリン誘導体も鋼上に吸着することが示唆された.得られた結果からイミダゾリン誘導体の腐食抑制機構を提案した.
RBM(リスク基準保全手法)により設備のリスク評価を実施する際,腐食や設備の専門家が損傷機構予測を行ってきた.しかし,膨大な腐食環境に対し完全な評価は難しく,専門家人口の減少が予想される.そこで予測精度の向上を目的として,2種類のパイソンコードによるAIシステム(RBS(ルールベースシステム)及び決定木解析)により金属材料の劣化機構を予測するシステムを開発した.工場・装置・材料・化学環境等の少ない情報から金属材料の172個の損傷機構を予見し,化学成分を得てRBMを効率良く実施管理する方法を提案する.課題として予測精度を減じる文字情報が多すぎることである.
バイオマス燃料中に含まれる塩分が,鋼材の高温腐食に及ぼす影響を調査するため,SO2雰囲気下においてCl2ガス濃度及び付着塩分比率を変化させた試験を実施した.Cl2ガス添加環境において,灰中の塩分比率が50%を超えると鋼材の腐食量は急激に増加した.この原因は,溶融塩中に気相からのCl2ガスの溶解と鋼材からの鉄イオンが溶解することで,高い腐食性を持つ塩化鉄が生成したためと考えられる.