ワイヤカット放電加工表面の面性状や表面粗さは,放電痕,ワイヤ電極や工作物の溶融金属再凝固,熱影響部や電解腐食といった加工変質層の形成等による影響を受ける.とくに,溶融金属再凝固は加工表面のスラッジとして表面性状に大きな影響を及ぼすため少ない方が好ましく,市販のワイヤカット放電加工機を推奨された条件で使う限りでは問題にならない程度の付着しか生じない.しかし,被加工物の形状によってはこの条件を逸脱した加工を実施する必要が生じ,実際に加工表面において溶融金属の再凝固を観察することになる.そこで本研究では,SUS304薄板のファ-ストカット加工に対して,あえて推奨条件を逸脱した環境で加工を実施し,溶融金属再凝固を再現すると同時に,加工中の放電加工電圧の変化を計測し,加工後には生成された加工表面に対して凹凸プロファイル測定とX線回折によるスラッジの元素推定を行った.さらに,切断を途中で中止する加工も実施し,形成された溝の形状観察結果を先の結果と合わせることにより再凝固のプロセスを検討した.これら結果から,通常付着と過剰付着を定義し,過剰付着が生じるメカニズムについて明らかにした.
マイクロ結晶ダイヤモンドは高硬度,高耐摩耗性などの優れた特徴をもつが表面粗さが大きい問題がある.一方,ナノ結晶ダイヤモンド(NCD)膜は表面粗さが小さい利点をもつが非ダイヤモンド成分を多く含むため耐摩耗性の低下が問題となっている.本研究ではCH4濃度変調によりダイヤモンドおよび非ダイヤモンド核生成と非ダイヤモンドのエッチングを制御した新たなダイヤモンドの成長制御法を提案した.その結果,CH4濃度変調を用いて得られたNCD膜はRa 0.026 μmと平滑であり, CH4濃度10%により作製したNCD膜の最大硬度46 GPaと比較して最大73 GPaと硬度は上昇し,膜質の向上も確認された.このことからCH4濃度変調プラズマを用いることでダイヤモンドの核生成と成長を制御することが可能であることがわかった