最近の誘電體に關する研究は, 主として強誘電體に注意が向けられてゐる。強誘電體としては, 従來ロッシェル鹽と KH_2PO_4 が知られてゐるのみであつたが近年チタン酸バリウム其他一群のチタン酸鹽の強誘電性が發見され, 特にチタン酸バリウムについては最初は磁器の形をなした多結晶試料によつて, 後には微小な單結晶を生成して之によつて, 種々の誘電的, 壓電的性質が測定され, 誘電率が 110℃近くで鋭い極大を示すこと, 充分大きい交番電壓では飽和履歴曲線を畫くこと, 110℃で比熱のλ異常が見られそれ以上では等軸晶系をそれ以下では c 軸の方向に少し延びた正方晶系を爲すこと等大體一致した結果を得てゐる。KH_2PO_4に關しては Slater の理論があり, 水素結合の考へから一應強誘電性の出現が矛盾なく説明せられてゐるが, ロッシェル鹽については, 未だ決定的な原子論的理論がなく, 又, 下の Curie 點についての實驗にも乏しいので, 之等の實驗的及び理論的研究も行なはれてゐる。最近の強誘電體に關する之等研究の中, 主として米國の文献に現はれたものを簡單に紹介することにする。