磁性と半導体は共にそれぞれ物性物理における最も重要な分野の一つで, それぞれに典型的な物質の研究から出発してその分野を拡げて来たが, 最近はその境界領域に属する新しい分野である磁性半導体の研究が急速に進展して来た. ここでは磁性と半導体的特徴がお互いに密接な関連をもって作用し, 幾多の新しい現象を引き起こす. たとえば伝導の現象において, 磁気的性質の変化が, 典型的な半導体伝導であるホッピング伝導から金属的伝導への遷移を引き起こす. また逆に何等かの意味での伝導電子の性質の変化が, 磁気相互作用に大きな変化を与えて, 磁気的性質に異常変化を与える. 同様なことが磁気光効果の異常としても現われる. 以下ではこれらについての現状のごく大雑把な概観を, 特にs-f相互作用と伝導の相関を中心として述べると共に, これら磁性半導体を理解する上での基本的考え方についても多少ふれる.
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