昨年11月に還暦を迎え, この3月に東大物性研究所を停年退官した. 固体物理の研究に入ってから今日迄, 思えば, 随分永い歳月であった. この間, 固体物理学は大きく進展し, 今日に至っている. この大きな進展の流れの中にあって自分が一体何をやって来たかを考えるとき, 甚だ心細い思いがする. 永い歳月を今日迄有効に生きてきたとは到底思えない. あち, こち到る処に無駄が目立つ稀薄な人生である. 人に語ってお役に立ちそうな材料は何も見当たらない. 以下は単なる想い出ばなしとしてお読み願いたい.
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