固体表面で吸着原子はランダムなホッピングにより活発に動きまわることができる. この原子に外力を加えその運動を操ることができるであろうか. これが可能ならば, 表面における構造, 薄膜形成, 化学反応などの制御設計に新しい道が開ける. これに関して, 最近, 半導体への直流通電によって, その表面上の原子は電流方向または反対の方向へ輸送される現象が見いだされた. これによって表面原子の運動を外力によって制御する端緒が開かれたといえよう. ここでは, Si表面上のAgとAuを例にしてこの現象を紹介する. 質量輸送に伴い固有の表面層が形成されるのがみられる. この現象に関する研究はいま揺籃期にあり, 定性的な実験結果が得られているだけで, 理論はまだ確立されていない. それだけに今後の発展が期待できる新分野である.
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