ひところ, イオン照射による損傷の研究は, その結果の複雑さの故に, 少なくとも我国の格子欠陥分野の研究者にはいささか毛ぎらいされて来た感がある. しかし, イオン注入, 飛程, チャネリング等関連分野の進展から多くのものを取入れて, 重イオン照射損傷一ひいては中性子等を含めた重粒子線照射損傷の様相は最近かなり変ってきた. 応用の面でも, 近年多くの興味を集めているボイドの問題など, 高速増殖炉や核融合炉の開発に関連した重要な問題が重イオン照射の大きな応用分野の一つになっている. 本解説では重イオンによる放射線損傷の歴史的経緯, 現状と問題点について述べる.
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