西ドイツの重イオン加速器 (GSI) での実験で見つかった陽電子および電子のエネルギー分布における幅の狭いピークは, 今まで知られている理論では説明しにくい新現象として注目を集めている. 特にこのピークを重イオン同士の作る強い電磁場により質量 1.8MeV の新粒子が生成されたと解釈すると, そのエネルギー分布の形をうまく説明する. この様に軽い粒子の候補としては強い相互作用のCP保存を説明するために導入された粒子アクシオン (軸性子) がある. アクシオンの存在を確認しその性質を調べることは, 長らく待たれていた標準モデルを越える素粒子物理の新たな一歩となり, ひいてはヒッグス機構, CP非保存の起源, 力の統一等を知る上で重要な手がかりとなる. 本稿では, 重イオン実験の結果及びその解釈について紹介し, 質量 1.8MeV の新粒子を探索した最近の実験 (及び再解析) について説明する. 結論としては, この重イオン実験のピークをアクシオンと解釈するのは難しい.
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