日本呼吸器外科学会雑誌
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21 巻, 2 号
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原著
  • ─術前術中投与法と術後投与法の比較─
    酒井 光昭, 伊藤 博道, 小貫 琢哉, 小澤 雄一郎, 中村 亮太, 臼井 亮, 山本 達生, 石川 成美, 鬼塚 正孝, 榊原 謙
    2007 年 21 巻 2 号 p. 104-110
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    肺切除術における周術期予防的抗菌薬の代表的投与法には術前術中投与と術後投与がある.術後感染症に対する有用性の違いをレトロスペクティブに比較した.当科で肺葉あるいは区域切除術を施行した72例をJSS群とし,第2世代セフェム系あるいはペニシリン系抗菌薬を術後3-4日投与した.同術式施行82例をCDC群とし,執刀30分前にセファゾリン1g,手術が3時間を超える毎に1gずつ追加し,術後は投与しなかった.平均投与総量はJSS群9.3g,CDC群2.9gであった.術後感染症発症率はJSS群12.5%,CDC群13.4%で有意差はなかった.SSIは発生せず,多くが肺炎であった.CDC群のみに手術部位以外を原因とするsepsisを2例認めた.感染症例の臨床像と起因菌,非感染症例の末梢血白血球数とCRPの経時変化に差を認めなかった.両群の術後感染症予防効果は同等であるが,慢性疾患を有する高齢者には術後投与の有用性が期待できる.
  • —吸収性ポリグリコール酸シートと自己血を用いたブラ切除断端被覆の工夫
    市成 秀樹, 峯 一彦, 種子田 優司, 河野 文彰, 柴田 紘一郎
    2007 年 21 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    自然気胸に対する胸腔鏡下手術後の再発を防止する目的で吸収性ポリグリコール酸シート(PGAシート)と自己血を用いた方法を導入した.本法の有用性を胸腔鏡下にブラ切除のみ行う方法(従来法)と比較検討した.1995年3月より2001年10月までに施行した従来法26例と2001年11月から2005年12月までに行った本法32例を比較検討した.従来法は胸腔鏡下に自動縫合器によるブラ切除のみを行った.本法は従来法に追加してステープルラインに沿って数針吸収糸を通し,その糸を使用し,PGAシートを肺に縫合固定,ブラ切除部を中心にシートで被覆する形とした.さらに自己血約20-40mlをシート上に散布した.従来法の再発率は11.5%,本法は0%であった.本法はフィブリン糊などの血液製剤を使用しないことからも,患者にとって安全で有益な方法と考えられた.
  • 中村 徹, 豊田 太
    2007 年 21 巻 2 号 p. 115-117
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    手術時のSSI(Surgical Site Infection)予防目的での抗生剤投与は,その使用方法に施設間で格差があるが,近年はCDC(Center for Disease Control)ガイドラインに準じた投与法が普及しつつある.当科でも2004年以降同ガイドラインの手法を採用しており,その妥当性を検討した.対象は当科で肺葉切除を施行した症例のうち,抗生剤投与を術当日のみに限定した群(A群101例)と,historical controlとして二日以上投与した群(B群98例)で,SSIの頻度につきretrospectiveに検討した.SSI発症は全てsuperficial SSIで,A群で1例(1%),B群で2例(2%)と有意差は無かった.肺葉切除術症例におけるSSI予防のための抗生剤投与は,術当日限定で十分の可能性がある.
  • 渡辺 健寛, 古泉 貴久, 小池 輝元, 広野 達彦
    2007 年 21 巻 2 号 p. 118-122
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    一般に気胸に対する手術は全身麻酔下に行われる.しかし,臨床の場では全身麻酔のリスクが高い症例にしばしば遭遇する.当科ではそのような症例に局所麻酔下に胸腔鏡手術を行ってきたので報告する.対象は1996年4月から2005年3月までに局所麻酔下に胸腔鏡手術を行った難治性気胸12例.男性11例,女性1例,平均年齢71歳であった.術前評価で全身麻酔のリスクが高いと考えられた症例は11例で,1例は全身麻酔拒否の症例であった.手術時間は平均50分.術中合併症は無かったが,術後合併症として肺炎と膿胸を併発した1例を失った.手術目的を達成した症例は9例で,いずれも術中にブラを確認できた症例であった.手術適応を十分に検討し,術前評価を十分に行えば,全身麻酔のリスクが高い難治性気胸症例に対する局所麻酔下胸腔鏡手術は有用であり,検討に値する手技と考えられた.
症例
  • 倉橋 康典, 平井 隆, 岡本 卓, 山中 晃
    2007 年 21 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    高分解能CT(HRCT)ですりガラス陰影(ground-glass opacity; 以下GGO)を呈する異型腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia; 以下AAH)や細気管支肺胞上皮癌(bronchioloalveolar carcinoma; 以下BAC)は肺腺癌の周囲に多発することが知られている.今回我々は多発性のGGOを示した3例を経験したので報告する.多発GGOはその数,性状,部位など症例ごとにばらつきがあるため,統一した治療方針の確立は困難であり,症例に応じた手術・経過観察の方法を個々に検討していく必要がある.術後残存するGGOに対してはHRCTによる注意深い観察が必要で,大きさ・性状・濃度に変化を認めた場合には,再手術や放射線療法,化学療法を含めた治療を考慮する必要がある.
  • 森川 洋匡, 大久 保憲一, 小林 正嗣, 早津 栄一, 上野 陽一郎
    2007 年 21 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性.19歳時結核性胸膜炎の既往あり.61歳時に右胸部異常陰影を指摘され,前医にて経過観察されていた.陰影が徐々に増大し,6ヵ月前から労作時呼吸困難を自覚するようになった.病変は最大径19cmで右胸腔内より縦隔を圧迫するように存在していた.病変内部の経皮生検では陳旧性の凝血塊を認めた.総合的な判断よりChronic expanding hematomaと診断し血腫摘出手術を施行した.血腫を被膜の外側で剥離し,炎症性癒着の強固な中下葉および横隔膜を合併切除した.横隔膜はポリプロピレンメッシュを用いて再建した.術後経過良好で労作時呼吸困難は軽減し,呼吸機能は術前より改善した.
  • 大成 亮次, 宮田 義浩, 渡邉 雄介, 御厨 美洋, 日山 享士, 西亀 正之
    2007 年 21 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.2週間前から持続する心窩部痛を主訴に救急外来を受診した.診察中に突然呼吸困難を訴えショック状態となった.胸腹部CTで左胸腔内に絞扼性イレウスと気胸を認めた.縦隔が著明に右方へ偏移し,右肺の拡張障害を認めたため緊急手術を行った.胃から下行結腸にいたる消化管,大網と脾が胸腹裂孔をとおって左胸腔に滑脱していた.術中所見から先天性Bochdalek孔ヘルニアと診断した.虫垂に起因する虫垂間膜内の炎症性腫瘤が結腸と強固に癒着していた.左肺は上下葉とも形成不全のため手拳大であった.回盲部切除,脾摘除ならびに壊死した広範囲の小腸部分切除を施行した.開腹して滑脱臓器を還納したのちヘルニア孔を二重にマットレス縫合して閉鎖した.滑脱臓器が多く呼吸循環動態が不安定な緊急症例では,開胸と開腹を併用して迅速かつ安全な手術操作を行う必要がある.
  • 森野 茂行, 田川 努, 中村 昭博, 山崎 直哉, 松本 桂太郎, 橋爪 聡, 宮崎 拓郎, 林 徳眞吉, 芦澤 和人, 永安 武
    2007 年 21 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    肺に穿破した縦隔成熟型奇形腫の2症例を経験し,その病因,臨床像について文献的考察を加え報告する.症例1は19歳女性.前胸部痛で来院,胸部CTで径3cmの前縦隔腫瘍を指摘され成熟型奇形腫の診断で手術を行った.手術所見では腫瘍は右肺上葉と強固に癒着しており,上葉部分切除および心膜合併切除を伴う腫瘍切除術を行った.組織学的には腫瘍は豊富な膵組織を有する成熟型奇形腫で,肺実質内に穿破していた.症例2は35歳女性.右胸部痛と血痰で来院,胸部X線で右中肺野に腫瘤影を指摘され,胸部CT,MRIで前縦隔奇形腫が疑われた.術中所見では腫瘍は右肺に穿破しており中葉切除を伴う腫瘍切除術を施行した.組織学的診断で成熟型奇形腫の肺内穿破と診断した.本疾患は多彩な臨床症状を呈し,確定診断に苦慮することも多いが今回MRIが有用であった.
  • 鹿田 康紀, 横山 秀樹
    2007 年 21 巻 2 号 p. 144-148
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    67才女性.2004年1月,他院にて右乳癌に対し胸筋温存乳房切除術施行.経過観察中の2005年9月,CEA13.3ng/mlと上昇を認め,12月には40.6ng/mlまで上昇を認めた.胸部CTにて右肺下葉に気管支拡張を伴う浸潤影を認め,FDG-PETにて同部位の高集積を認めた.全身精査の結果,肺以外の病変は認めず,原発性肺癌の疑いにて当科紹介入院となった.BAL,Brushing,TBLBではいずれも悪性所見,および特異的な炎症所見は得られなかった.診断的治療目的に2005年12月12日,右肺下葉切除術を施行した.病理組織診断の結果は器質化肺炎であった.切除後の2006年2月にはCEAは8.9ng/mlまで低下した.CEAは炎症性疾患で上昇することも希ではなく,癌病巣の検索と同時に炎症性疾患の有無を調べる必要があると思われた.
  • 大内 政嗣, 井上 修平, 花岡 淳, 五十嵐 知之, 藤野 昇三, 澤井 聡, 手塚 則明, 尾崎 良智
    2007 年 21 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.胸部X線で左肺異常陰影を指摘され入院となった.入院時CTで左S8に径1cmの腫瘤陰影と左S5に浸潤影を認めた.左S8およびS5の腫瘤に対して胸腔鏡下生検を行った.S8の腫瘤は肺内リンパ節,S5の腫瘤は肺mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫と診断された.肺MALTリンパ腫は画像上,多彩な像を示し,確定診断の困難な疾患である.肺MALTリンパ腫および肺内リンパ節ともに,その発生および増大には慢性的な吸入性抗原刺激が関連していると考えられ,本症例でもその関与が考えられた.肺内リンパ節と考えられる病変に加えて浸潤影が存在する症例においては,肺MALTリンパ腫の存在も念頭におき厳重な経過観察を行い,陰影の変化があれば胸腔鏡下生検を施行するなどの対応が必要であると思われる.
  • 細野 祥之, 河野 匡, 文 敏景, 蒔本 好史, 濱本 篤, 吉屋 智晴, 稲沢 慶太郎
    2007 年 21 巻 2 号 p. 155-159
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.検診の胸部単純X線写真で上縦隔に異常陰影を指摘され,さらに胸部CTで前~中縦隔に径6cm大の腫瘤を認めたため当院紹介入院.診断治療目的に胸腔鏡下手術を施行した.腫瘍は上大静脈を圧排していたが可動性良好で浸潤はなく,胸腔鏡下に手術を続行して腫瘍を摘出した.病理学的に紡錘形細胞の増生を認め,免疫組織染色にてCD34が陽性であることより孤立性線維性腫瘍;Solitary Fibrous Tumor(以下SFT)と診断した.通常SFTの多くは臓側胸膜から発生し,縦隔に発生する事は稀であるが,縦隔腫瘍における鑑別診断の1つに挙げる必要がある.今回我々は,上大静脈を圧迫する縦隔由来SFTを胸腔鏡下に切除し,経過良好であった症例を経験した.同様の症例に対し胸腔鏡下手術も選択肢の1つになり得ると考えられた.
  • 佐野 功, 南 寛行, 原 信介, 古川 克郎, 及川 将弘, 野中 隆
    2007 年 21 巻 2 号 p. 160-164
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は40歳女性.検診にて胸部異常陰影を指摘され当院内科を受診した.胸部CT上,右S4に径2cm大の腫瘤影がみとめられたが,術前診断にいたらず手術目的で当科紹介となった.術中迅速診断にて悪性腫瘍の診断であり右中葉切除を行った.術後病理にて肺絨毛癌と診断され,病期はpT1N0M0 stage IAであった.術後1週間目の血清HCGとβ-HCGは高値であったが術後3週目には正常化した.また婦人科にて子宮および付属器の検索を行ったが異常なく,術後4週目より補助化学療法としてMethotrexate+Actinomycin D+Cyclophosphamideを2コース行った.現在まで術後7年,無再発生存中である.
  • 西井 鉄平, 利野 靖, 荒井 宏雅, 千葉 明彦, 大城 久, 高梨 吉則
    2007 年 21 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    検診を契機に発見された淡明細胞腺癌の1例を経験したので報告する.症例は76歳,男性で,胸部CT上,左肺S3末梢に単発性の腫瘤性病変を認めた.経気管支肺生検等で確定診断に至らず,左肺部分切除術を施行した.術中迅速凍結組織診断で腺癌が疑われたため,左肺上葉切除術及び縦隔リンパ節郭清に術式を変更した.術前術後の全身の画像診断にて他臓器に腫瘍性病変を認めなかったため,臨床的に原発性肺腫瘍を考えた.術後の病理学的検索で,病変の90%以上を淡明細胞が占め,ごくわずかに乳頭状構造を呈することが分かった.免疫組織化学的にはケラチン陽性,EMA陽性,Thyroid transcription factor-1陽性,Surfactant apoprotein A陽性,HMB45陰性を示し,肺原発の淡明細胞腺癌の診断を得た.術後22ヵ月間経過しているが,再発はなく,健康である.
  • 三崎 伯幸, 住友 伸一, 松岡 勝成, 中島 大輔, 中島 成泰, 前田 亮
    2007 年 21 巻 2 号 p. 170-173
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    4歳の女性.突然の左頸部の疼痛,腫脹を主訴に来院し,頸部エコーにて左総頸静脈の血流鬱滞,拡張を認めた.胸部CTで上前縦隔に腫瘤性病変,周囲の軟部組織の肥厚および両側の胸水貯留を認め,胸部MRIで左腕頭静脈に血栓を認めた.悪性縦隔腫瘍を疑い胸腔鏡下生検を行ったが確定診断に至らなかった.胸骨正中切開下に手術を施行した.左腕頭静脈の上大静脈への血流を一時遮断して,腫瘍を摘出し,続いて左腕頭静脈を切開して赤色血栓を摘出した.腫瘍周囲に著しい炎症を伴っており縦隔炎を併発したものと考えられた.病理学的に成熟奇形腫と診断された.検索しえた限りでは腫瘍穿破による縦隔炎および血栓性静脈炎を合併した成熟奇形腫の報告はない.
  • 徳永 俊照, 内海 朝喜, 井上 匡美, 塩野 裕之, 南 正人, 奥村 明之進
    2007 年 21 巻 2 号 p. 174-177
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性.人間ドックの胸部CTにて前縦隔腫瘍を指摘され入院となった.術前診断では,胸腺腫または胸腺嚢胞を疑い,手術を施行した.手術は胸腔鏡補助下に腫瘍を摘出した.病理診断は胸腺内発生の気管支原性嚢胞であった.気管支原性嚢胞が前縦隔胸腺内に発生することは稀であり報告する.
  • ─本邦報告例15例を加えて─
    懸川 誠一, 上吉原 光宏, 大谷 嘉己, 川島 修, 清水 公裕, 森下 靖雄
    2007 年 21 巻 2 号 p. 178-182
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,女性で,右頚部の発赤と腫脹,疼痛,発熱を主訴に来院した.画像上,気管の右側に接してニボーを伴う多房性の嚢胞があり,感染を合併した頚部嚢胞性疾患と診断した.ドレナージは行わず,抗生剤により一旦は軽快退院した.その後,同部の感染による入院治療を繰り返したため,右半襟状切開により嚢胞摘出術を施行した.病理組織学的に嚢胞内に線毛円柱上皮を認め,頚部発生の気管支原性嚢胞と診断した.術後,一過性の右反回神経麻痺による嗄声を訴えたが,頚部膿瘍の再発はない.本邦報告例15例と自験例を合わせて検討したところ,(1)発見動機は有症状例が多い,(2)感染時には経皮的にドレナージが可能,(3)頚部(襟状)切開のアプローチで摘出可能,といった縦隔発生症例にはみられない臨床的な特徴があり,多房性嚢胞は自験例のみであった.
  • 坂倉 範昭, 奥田 勝裕, 岡阪 敏樹, 森 正一, 波戸岡 俊三, 篠田 雅幸, 光冨 徹哉
    2007 年 21 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    38歳女性.8歳の時,中間気管支幹内の定型カルチノイドで右中下葉切除術を受けた.30年経って血痰が生じ,中間幹断端近傍に径40mmの腫瘤と気管分岐部リンパ節腫脹をみとめ,残存肺全摘(残存右上葉切除)とリンパ節郭清を施行した.術後病理診断は定型カルチノイドのリンパ節再発と転移であった.本症例は,定型カルチノイドでも手術時のリンパ節郭清と長期の経過観察が必要なことを示唆している.
  • 岡川 武日児, 内田 達男, 陶山 元一
    2007 年 21 巻 2 号 p. 188-192
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は20歳男性.血痰,左胸部痛を主訴に近医を受診した.胸部X線写真および胸部CT上,空洞を伴う結節影で娘結節などを認めず,肺化膿症と診断した.喀痰培養を行うも起因菌は同定できなかった.抗生剤治療を続けるも空洞が拡大するため,外科的治療を考慮し,まず全身麻酔下に経皮肺ドレナージを行った.空洞が薄壁化し,軽度縮小したため,一旦退院とした.しかし,空洞内にニボーを認めたため,根治目的にて左上区域切除を行った.気管支瘻などの合併なく術後経過は良好であった.
  • 井貝 仁, 垂水 晋太郎, 橋本 新一郎, 張 性洙, 中野 淳, 奥田 昌也, 後藤 正司, 中島 尊, 劉 大革, 石川 真也, 山本 ...
    2007 年 21 巻 2 号 p. 193-196
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.検診の胸部レントゲンで異常陰影を指摘されたため,近医を受診.胸部CTで右肺S6に径2cm大の辺縁不整な空洞を伴った結節影が認められ,また,FDG-PETで同部位に一致して異常集積像を認めた.原発性肺癌もしくは同じくFDG-PETで異常集積を認め発見された乳癌の肺転移を疑い,診断・治療目的で開胸下肺部分切除術を施行し,術中迅速病理で肺犬糸状虫症と診断された.肺犬糸状虫症では胸部CT所見が肺癌と類似し,またFDG-PETで異常集積像を示すことがあるため,悪性疾患との鑑別が困難となる場合がある.胸部異常陰影の鑑別疾患の1つとして本症の存在を念頭に置くことが重要と考えられた.
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