多種多様な和柑橘(国産柑橘)の香気特徴と,その特徴を構成する香気成分を把握するため,官能評価と香気成分分析を実施,網羅的な評価を行った.官能評価の結果,香気特徴が温州みかんに近い品種群,オレンジに近い品種群,グレープフルーツに近い品種群,その他の特徴を持つ品種群に大別された.官能評価結果と香気成分分析の結果を統合して解析することで,各品種の香気特徴を構成する重要香気成分を把握した.さらに消費者が「和」を強く感じる品種を調べ,「和らしさ」につながる香気特徴,香気成分を考察した.
賦香タイプの消臭素材が含まれるホームフレグランス市場は年々増加し,世界市場規模の観点からも135億7千万米ドル(2024年)から175億4千万米ドル(2029年)に成長すると言われている1).また,日本における訪日外国人数は増加の一途を辿っている現状2)から,「和のかおり」をテーマにした賦香製品の開発は企業の事業活動に留まらず,「かおりと記憶の関係」を利用した日本文化の発信や経済活性にも寄与すると考えられた.そこで我々は,日本固有種であるクロモジ3)および文化的側面において日本固有といえるクスノキに着目し,超高静水圧技術によって抽出した芳香水を利用した消臭素材の開発を行ったので報告する.
日本の森林に自生するクロモジやオオバクロモジには,精油成分の中心となるテルペン類や,フラボノイドをはじめとしたフェノール類が多く含まれている.それら構成成分の組成は多様性が高いことが知られているが,葉と枝や季節変動といった同一個体内での違いや,個体間における違いなど,クロモジ類の特徴的な成分組成の謎を解き明かすための知見は少ない.本稿では,筆者らが紐解いてきた個体レベルでのクロモジ抽出成分の分析結果を中心に既往の研究報告と比較しながら,クロモジとオオバクロモジに含まれる抽出成分の化学的特徴について概説する.
悪臭防止法による規制で用いられている臭気指数は,人間の嗅覚による臭気の測定結果から算定される.この臭気指数の誤差を抑え精度を向上させるため,複数のパネルによる測定や複数回の測定の結果をもとにその値が計算されている.本研究ではパネル選定が臭気指数に与える影響について確率論的手法(CDE法)を用いて定量的に分析する.ここでは偶然の的中を考慮しパネルの嗅力分布が対数正規分布であり,個人内変動は起こらないという状況を仮定し,パネルの人数の変更や一定以上の嗅力を持つパネルに制限した場合について臭気指数を試算した.得られた試算結果から,臭気指数の測定においてパネル数の増加,複数機関による測定,嗅力の低いパネルの除外は,臭気指数のばらつきの低減に効果があると言える.
本研究では,アユ冷水病の早期発見技術の開発に向け,冷水病に感染したアユに特徴的なにおい物質特定の可能性を評価すると共に,今後取り組むべき課題の提示を目的とした.水槽施設で飼育したアユ稚魚を対象として冷水病菌への感染試験を実施し,感染による死魚を嗅覚官能評価および化学分析に供試した.嗅覚官能評価の結果,感染区には“ヨーグルト様,漬物様,生ごみ様”という特徴的なにおいが感知された.におい嗅ぎガスクロマトグラフ(GC-O)分析に供試したところ,感染区で2ヵ所の特徴的なにおい活性が特定され,それぞれ“ヨーグルト様”および“漬物様/生ごみ様”というにおいであった.GC-MSノンターゲット分析および文献調査の結果,アセトインとジメチルトリスルフィドは指標におい物質として,エタノールは指標VOCsとしてアノテーションされた.一方で,感染試験後の分析には生魚を用いること,それら生魚が冷水病に感染していることを確認する技術の確立が課題となった.
悪臭防止法に定められている臭気指数の測定法や近年提案されている改良法について,エクセル関数を用いて,パネル間のばらつき,パネル内のばらつき,および偶然正解を発生させ,繰り返し計算を行うことにより精度を検討した.現在の環境測定の方法はばらつきが大きく,改良法はばらつきが低減され,また,まぐれ当たりの確率が下がる分,測定値が小さくなる.
中華人民共和国における臭気の測定方法の一つとして,1993年に日本とほぼ同じ内容の三点比較式臭袋法が採用されている.
この三点比較式臭袋法については,2022年に見直しがあり2023年1月15日より新たな方法が施行された.
本稿は,見直された内容を中心に新たな方法について解説する.
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