においセンシングは,環境災害や公害,産業活動などの諸問題解決のための手段の一つとして期待されている.そのため,においセンシングデバイスの開発やにおいセンシング技術が必要不可欠であり研究開発が活発に行われている.その結果,においに関するデータが取得できるようになったが,においセンシングデバイスから得られるデータには揺らぎがあるため,その解釈や応用については検討の余地が多く残っている.そこで本稿では,においのデータ取得から分析,推定までの一連の流れをシステムとして定義・実装し,「においデータ」の解釈ついて醤油のにおいを対象とし,検討を行ったので紹介する.
今年のにおいかおり環境学会にて,ポータブルで10素子程度の汎用においセンサは,理論上存在できないということを発表したが,最大の問題は,測定雰囲気に存在するVOCsの妨害の影響である.これ以外にも,水蒸気影響,感度不足,センサ感度の経時変化の問題によりAIを含む学習系の信号処理が利用できないこと等が挙げられる.ここでは,弊社のにおい識別装置が,これらの問題に対してポータブルではないが,どのように対応しているかの工夫の詳細を記載した.
発酵処理を施した完全混合飼料(発酵TMR)は肉牛向けの新しい飼料としての普及が期待されているが,好気的変敗による品質の劣化が問題となっている.本研究では発酵TMRの品質評価手法の新規開発を目的として,変敗程度の指標となる“指標におい物質”の特定を目的とした.発酵TMR試料に変敗処理を施し,その前後における各種分析の結果を比較した.分析の結果,常法(VBN/T-NおよびVスコア)においては明確な好気的変敗の兆候は検出されなかった.一方で,嗅覚官能評価およびにおい嗅ぎガスクロマトグラフ(GC-O)分析の結果,変敗処理前後で明確な“におい”の変化が感知された.それらにおい物質をGC-MS分析に供試したところ,変敗処理に伴って放散量の減少する物質が31種,増加する物質が5種アノテーションされた.これら試料を超小型ガスクロマトグラフ分析に供試したところ,クロマトグラム間に明確な差がみられ,簡易判別手法として利用可能であることが示された.
本研究は一時的なコーヒーの香り呈示が注意力に与える影響を検証した.コーヒーの香りを呈示した群と,お湯を呈示した群で,各々の香り呈示後の注意力測定課題の成績を比較した結果,コーヒーの香りは持続的注意力のうち,認知的負荷が少なく反射的な反応が求められる注意力のみ有意に低下させた.ただし,コーヒー豆の種類,注意力測定方法,香り呈示時間等で効果が異なる可能性があり,今後も検討が必要だと考えられた.
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